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洞窟に戻って動き始めた時計を見ると一時間半ほど経っていた。毎回、持っているだけの刀を置いてプレハブの鍵を閉める。
出かけるときにはいたサバトラも茶トラも姿が見えない。
二宮邸の玄関に行って、声をかけると、ばあさんが出てきた。
「ここに鍵をかけておいて。都合のいいときに使っていいから。それからケーキがあるから上がりなさい」
居間に上がると、いつものようにじいさんはお茶を飲んでいる。
出されたケーキを食べながら、じいさんに今日の報告をする。今日のケーキはチョコレートケーキだ。それといつものお茶である。
高校生の孫がいるんだから、そこは紅茶かコーヒーでしょ? とはもちろん言わない。
話は、【スライムの知恵】から始まって水色教や水色聖典、互助組合でクリアオーブを売った話、マント購入のこと、盛りだくさんである。
するとじいさんは、クリアオーブを売った話になぜか反応して、ほくほく顔で言う。
「向こうの世界では金持ちじゃな」
俺はこっちの世界で金持ちになりたいよ。
「必要なモノをこれから買うことになりますから、出費も多そうです」
「まあ、大変じゃろうが、これからも頼むとするかの。せっかくじゃから、ご先祖様にもこの先の安全を祈願するといい。こっちじゃ」
じいさんはそう言うと、立ち上がって俺を仏壇の前まで連れて行く。ばあさんも一緒になってついてくる。
これは、二宮家の先祖に挨拶をするってことか? そりゃ、そうか……ご先祖様の口伝を俺が手伝っているからな。むしろ挨拶をするのが遅いくらいだったかもしれない。
そのあと、仏壇の前に行く。
仏壇には、位牌の他に、小さな三毛猫のぬいぐるみが置いてある。ミケがこんなところにいるとは……
それから、三人で手を合わせること、20秒ほど……
ご先祖様からのお告げは、なにも、なかった。
「ご先祖様はなにか言っていたかい」
ばあさんが俺に尋ねる。
「いえ、なにもおっしゃってませんでした。俺が、聞くことができなかっただけかもしれませんが」
するとじいさんがニコリとして言う。
「なにも言わないということは、あの世で安心しているということじゃ」
……そうか、ミケはまだ安心していないということか……
よくわからないのだが、先ほどミケから渡されたものがあるような気がする……
チカラではない、匂いとか色とかそういうもの? ことばは悪いが残滓みたいなもの?……世間体にいうなら、遺言のようなもの?
ミケを悼んで、いうなら、マトリクスみたいなもの?
よくわからない……
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