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三匹で10センチほど掘ったところに、スコップを持って近づく。
掘り出された土があたりに散らばり、湿った新鮮な赤土が穴の中であらわになっている。
猫たちは掘るのをやめ、俺を見るとみーんと鳴いた。
いや、俺よりもスコップを見てないか? やっぱり。スコップに三匹で猫パンチをしている。バトンタッチのつもりか。
「よし、任せろ」
俺はそう言って10センチの穴にスコップを入れた。
もともと良い畑だったのか、土は柔らかく、掘るのに邪魔となる小石もない。簡単に掘り進むことができる。一時間ほどで直径二メートル、深さ一メートルほどの穴が出来上がった。いい汗もかいた。
埋蔵金は出てこない。期待はしてないが。
「そろそろ、お茶にしなさい」
声の方を見るとばあさんがいる。後ろには梯子を持ったじいさんもいる。
「ときどき見にきていたが、熱心に掘っていたのう。梯子じゃなきゃ、上がれまい」
そう言って穴に梯子をかけてくれた。
「ありがとうございます。まだ埋蔵金は出てきてません」
「そうみたいじゃのう、まあ、先は長い。茶でも飲みなさい」
服が土で汚れているので居間に上がるのはどうかと思ったが、ウチは農家だったから気にするな、はたけば落ちると言われた。
それじゃあと、お言葉に甘えてお邪魔してお茶とカステラを食べた。ザラメが底にひいてある高そうなやつだ。おいしい。どうやら、俺のために、カステラを買ってきてくれたらしい。
「今日、無理しなくとも、ブルーシートを被せておくのでまた今度来て掘ったらええ」
ばあさんのことばに俺は内心びびる。
また来て掘り進めるのか? なぜだ? 埋蔵金はマジなのか?
「もっと掘っていいんですか」
意図がよくわからず、恐る恐るそう尋ねると、
「まだ猫たちが掘って欲しそうだからのう」
じいさんを見ると、じいさんはさらにことばを続けた。
「あんたが穴から出たあと、猫が続きを掘っておった」
なるほど、猫優先ですね。
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