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穴を掘ってみたら、ダンジョンに着いた  作者: コネ:ケミ
第四章 ひとりダンジョン
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 昨日会ったときの会話を思い出す。


『姿格好が異なるのにことばが話せるなんて我々と同じ【知恵】を持っているんですね』


『我々と同じ【知恵】』


 そうか、あのときに言っていた【知恵】とは【スライムの知恵】という意味だったのか。


 同じような知性を持っているというような意味で受け取っていた。同じような知性を持っていたとしても、ことばは通じるはずがない。ことばは見えない大きな体系なので、共通の体系がなければ通じないのだ。


 ことばが通じた喜びでうっかりしていた。


【スライムの知恵】が作用して共通の体系を共有していたからことばが通じたのだ。


 ということは、俺はその【スライムの知恵】をどこで手に入れたんだ?


 そうだ、ミケからだ! ミケから授かったスライムのチカラの中に【スライムの知恵】も入っていたのか……


 しかし、目の前のゴブリン老人は、ゴブリンなのに、どこで【スライムの知恵】を手に入れたんだ?


 それとも、【スライムの知恵】はゴブリン社会では、持っていて当たり前のモノなのか?


 そもそも、【知恵】の前に、なぜ【スライムの】という修飾語をつけるんだ?


 俺は考え事をしてつい、黙ってしまった……………


 すると、老人は申し訳なさそうに話し出した。


「すみません。聞いてはいけないことだったようですね。……あ、いや、心配なさらずとも殺して奪うようなことはしませんので。

 村でも今のところは人口が増えておらず【スライムの知恵】には困ってはいませんし、なにより、むやみに奪うようなことをすれば四親等以内、皆死罪になりますので、そのようなことをするものもいません。ご安心ください。

 ただ、人口が増えている街では【スライムの知恵】は不足していて、かなりの高額で取引されているという噂も耳にしております。姿が異なるあなたがよくお持ちしているなと思った次第で。失礼なことを聞いてしまいました」


 殺して奪う? そんなことがあるかもしれないのか? 街では不足? 街では殺して奪うのか?


 聞いたこともない話ばかりで訳がわかない。


「その、不足している街では殺して奪うようなこともあり得るのですか? 殺してどのように奪うのですか?」

 動揺を悟られないように、出来るだけ落ち着いたフリをして尋ねた。


「街では、以前は死罪をも恐れず、人を雇ってそのようなことをする者がいたと聞いています。

 しかし今は【スライムの知恵】の複製品もありますので、そのようなことはなくなったようです。

 複製品もたいへん高価ではありますが、本物に比べると劣るところもあります。ですから、やはり、より多くを支払ってでも本物のほうをみなさん欲しがるようですが。

【スライムの知恵】は殺さずとも死ぬと遺体の下に小さな銀色の結晶として排出されるので、それを奪えばいいのです。また、その結晶を手で包んで吸収すると【知恵】を身につけることができます。

 あなたはその姿から察するに、やはり異国の人なのですね。【知恵】の扱いをあまりご存じではないようです」


 思考停止状態で、俺はことばを失ってしまった。




【スライムの知恵】、どこかに落としちゃったかもしれない。





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