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穴を掘ってみたら、ダンジョンに着いた  作者: コネ:ケミ
第三章 ダンジョンに着いた
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いいね、ブックマーク、ありがとうございます

 頭のマップで歩いた経路がわかるので、草原を一直線に広場まで戻る。


 ゴブリン老人に別れを告げてから、帰り道、会話の内容を二宮さんに教えた。二宮さんは俺のことばはわかったようだが、老人のことばはまったくわからなかったようだ。


 さすがに二宮さんも、俺の説明にうんうんとうなずくばかりで、信じられないという顔つきをしている。


 先ほどの集落……ゴブリンがことばを話し、理性を持って社会生活をしている、そんなところだとは、夢にも思わなかった……


 地上で人間が文明を築いたように、ここはゴブリンが独自の文明を築いた世界なのか? 


 ここは、ほんとうにダンジョン?


 二人でそんな感想を述べ合ったあと、


「でも、なんでミヤジ君だけゴブリン語がわかって、私はわからないの?」

 二宮さんが当然の疑問をぶつけてくる。


「俺にもその理由はわからないよ。強いていうならばミケからもらったスライムの?チカラかな。それしか思い当たるものがない……」


「スライムのチカラの中にゴブリン語も入っているなんて、なんだか変! それなら、猫のチカラにもゴブリン語が入っていてもよくない? なんだか、納得できないなぁ」

二宮さんは少しプンプンしている。


「俺も変だと思うけど……」


 ふだん学校の勉強、マジメにがんばってるからね、だから神さまがご褒美を下さったのさ、と冗談でも言おうかと思ったが、ケンカになることは明白なので、もちろん言わない。


 広場を囲む林に入ると、スライムが二宮さんに襲いかかる。素早く身体を交わし、爪で仕留める。行きと同じで襲うのは二宮さんばかりだ。


 ウサを晴らしていませんか? 二宮さん……


 俺には、襲ってはこない……やっぱりミケから授かったのはスライムのチカラかな?




 草原が見えてきたので、はい、と俺は手を出す。


 恥ずかしい気持ちはほとんどない。


 ほとんど? ……ちょっとだけ恥ずかしい……


 手を繋がなければ保護膜が通れないからな。プンプン気味だった二宮さんもふつうに手を繋いでくる。ウサが晴れたのかもしれない……


 ここで調子に乗って、手を組み合わせた恋人握りをしてはいけない。

 

 きっと頬に手の跡がつくだろう。


 森と草原の境目にある保護膜を手を繋いで通り抜ける。


 通り抜けたら、お互いに手を離した。当然だ。保護膜を通るためだったのだから。嫌われたわけじゃない……うん……


 保護膜の中の草原では微かな霧の中、数匹のスライムが飛び跳ねている。


 待てよ? 俺が保護膜を通れるのもスライムのチカラなのか?


 教えてくれ! スライムくん!


 こころの声に反応するかのように、一匹のスライムが振り返ってこちらを見てうなずいている……気がする……


 やっぱりスライムのチカラなんだ!?


 自意識過剰なんじゃない? って、二宮さんにからかわれそう……




 転移陣に乗って地上に戻ってから時計を見たら針は動いている。針は四時四十分近くを示している。


 四時四十分??


 二宮さんにまずは報告。


「時計を見たら、針が動いていて、今、四時四十分ぐらいなんだけど」


「四時四十分? 四時ぐらいに洞窟に入っているから、四十分ほどしか経っていないっていうこと? 三時間は経っていると思うんだけど。まさかもっと経っていて、朝の四時半過ぎとか?」


 顔を見合わせたあと、朝の四時半過ぎってないわー、それはないでしょ、と二人で言い合いながら、急いで地上に戻る。


 洞窟を出ると。


 明るい。暑い。


 朝ではない。太陽の向きからみて夕方だ。

 

 おかしい。まさか丸一日経っちゃったとか?


 浦島太郎の話もあるから一日どころじゃないかもしれない。


「これは夕方ね、まさか丸一に経ったとか? 家に帰って確認しましょう」

 落ち着きをなぜか取り戻した二宮さんは階段を登り、さっさと家に向かう。


 俺も短刀をしまって、急いで後を追った。




お読みいただき、ありがとうございます


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