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しばらく林の中を歩くが、二メートルも進まないうちに親分スライムが木の根元付近から飛びかかってくる。
いずれもみんな、二宮さんを目がけてだ。
二宮さんはその度に身体をかわして空中で爪を出してスライムを霧散している。二宮さんが言うとおり、色が少しだけ濃いスライムだ。
二宮さんから少し離れて歩いたほうがいいかもしれない。
「私だけが狙われてるのは、なぜ?」
俺と一緒にいるから、雌スライムが二宮さんを敵視しているんだよ、と冗談を言いたかったが、やめておいた。
「うーん、もしかしたら俺はスライムの友だちだからかも」
めちゃくちゃ熟考して、もっとも無難そうな答えを言ってみた。
「なるほど、スライムの気持ちがなんとなくわかるって言ってたもんね。そうかもしれない」
飛び出すスライムを引っかきながら二宮さんが答える。
核を潰さなくとも本体と核を一定距離離せば、どちらもガラスが弾けるように消えることが途中からわかったので、飛んでいった核は放置である。
二宮さんが納得する答えであったことに、熟慮してよかったと俺はホッとした。
ホッとした反面、自分で言っておきながら不安になる。
相手はスライム……ほんとうに……友だちなのかな? たしかに襲っては来ないけど……
二宮さんさんが10匹ほどスライムを撃退したころで林を抜けた。
短刀は結局、使わなかった……
俺の短刀っていったい……
頭のマップが働いていることにふと、気がついた。保護膜を出たあたりからだろうか、薄く移動したところが線になっていて、林を抜けた今、現在地をはっきりした点で表示している。移動したところがわかるようになっているみたいだ。
「スライム退治で体を動かしてみて、わかったんだけど、空気、重くない?」
それは俺が働いてないから、かもしれない。
でも、会話は多くはないかもしれないけど、そんなに気まずい感じはしないけど……俺たち、二人の雰囲気、そんなによくないのか?
「呼吸が苦しいとかではなくて、酸素が薄いとかではなくて、なんとなくだけど、水の中にいるような感じがしない?」
無言の俺をさらに追い詰める……わけではなかった。
その空気ね。ふつうの空気ね。
激しい動きをしていないし、歩いてるだけだから、わからないよ。
「そうだね。たしかにほんのちょっとだけど、そんな感じがする」
空気が重い……空気が重い……空気が重い……
そう自己暗示をかけようと試みる俺だった。
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