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草原から林へと移り変わるところに、広場を保護するためであろう見えない壁のような膜があって、特別なチカラがないと通れないのではないか。その特別なチカラを俺はミケからもらったのだろう、というのが二宮さんの考えだ。
なるほど。そうかもしれない。壁を感じない俺は、二宮さんはパントマイムの名手のように感じるばかりだが、それは、言わない。
「草原と林の境界を通るときは、手をつなごうね」
俺は落ち着いてそう言った。いやらしい気持ちで手をツナグわけではない。これは仕方がないことだ。
保護膜さん、よくわからないけどありがとう!
「うん、そうする」
二宮さんが小さな声でつぶやく。
恥ずかしそうというより、自分にその能力がなくて残念、くやしいといった感じだ。負けず嫌いなのかもしれない。
二人でそんな会話をしながら林に入っていく。
林に入ると、いきなり草むらからスライムが二宮さんに飛びかかってきた。
二宮さんは身軽にそれを避けて、爪を伸ばした手を差し出す。
空中で核をかき払われてしまったスライムはその場に落ちて霧散し、核だけが離れたところに転がっていく。二宮さんが素早く走って核を踏み潰す。
動きが早い!
二宮さんって運動神経いいんだ……いや、猫のチカラなのかもしれない。
それにしても、ヤバイぞ、俺……いいところがない……
俺の短刀も役に立ってない……というか、まだ一度も使ってない。……いや、飛びかかってくるスライムがいるんだから、これから役に立つはず……すぐに使えるようしっかり持っていよう。
俺は短刀を持っている手に力を込める。
「ねえ、さっきのスライム、やっつけちゃったけど、よかった? 飛びかかってくるから、反射的にやっちゃった」
「ありがとう。今のはオーケー。」
「あのスライム、親分スライムと同じ大きさだったけど、色が少し濃くなかった?」
いろ? そこまでわからなかったよ。
「そうだね。少し濃かったかも」
わからなかったんだけど、とりあえず濃かったことにしよう……濃かった、濃かった……
負けず嫌いは、俺のほうかもしれない。
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