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二宮さんはさっと俺の前に出て、掻き出したものを踏みつける。
スライムは光る粉のようになって消えてしまった。
「……すごいね、なに、今の」
「【猫の手】っていう技。夢の中でミケに教わった」
そう言って爪を見ている。
俺も二宮さんの爪を見る。
マニキュアは塗っていないが、手入れをされたきれいなピンク色の爪だ。
「……その爪、伸びたよね?」
「うん、伸びた。教わったとおりにやったら、本当にできた。驚いた……スライムは核が弱点なの」
「……よく核の位置がわかったね」
「なんとなく、わかるのよ、ミケが教えてくれるのかも」
「……俺を引っ掻かないでね……」
短刀をしまいながら、そうは言ったが、俺の頭は混乱していた。目の前の状況は見ているのでわかるが、頭の中の理解が追いつかない。……爪が伸びたよ……
【猫の手】って名前だったら、猫パンチを想像していたんだけど……
考えずに感じなきゃいけないんですか?
「注意する」
そう言った二宮さんも、放心状態だ。
親分スライムがいた場所には500円硬貨が落ちていた。と思ったら、紋様のある白い石だった。
お金だったらよかったのに。珍しい石なのでとりあえず拾ってポケットの中に入れておく。
突き当たりまで行くと小さな金属製の箱が落ちていた。
「箱が落ちてるけど、開けてみる?」
そう尋ねると、開けよう、開けようと急に元気な声が聞こえた。
化け物が出てくることあるまい。
拾って缶の上をよく見ると、やはりクッキー缶のようだ。
開けてみる。
中身は紙の山だ。上の紙に文字が見える。二宮さんがそれを取り上げて読み上げる。
「太平小学校 第四十三期 卒業生 6年1組はどんな二十歳になっていますか。大人になったみなさんへのメッセージです。ってこれ、タイムカプセル?」
最後はガッカリした声だ。
「そうみたいだね。フタを閉めて元の場所に置いておこうか」
この洞窟の奥にわざわざ置いたのか? すごい小6だな。どうやってここに入った?
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