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「それじゃあ、洞窟の中に入ろうか」
二宮さんにそう声をかけると、二宮さんは小さく頷いた。
じいさんが短刀を持っていけというからには、なにかが出るのだろう。
俺はじいさんのアドバイスに従って神棚のクッキー缶から短刀を取り、先頭に立つ。
素振りはしていない。剣道もしたことがないが、大丈夫だろうか。
一年生の今の実技は柔道。一年後の二年生だったら剣道を学んでいたのに、そう思うと一年早かったのか。
南側の下り坂を歩いて昨日倒した石の扉を過ぎる。後ろから二宮さんがついてくる。
「まっすぐ、マップ上は突き当たりの手前に青い点があるけど、そこまで行ってみよう」
後ろを見ずに俺がそう言うと、うん、と言う声が聞こえる。
暗いはずの洞窟だが視界はそれほど悪くない。満月の夜のようだ。これもミケのチカラか?
何もいなかったはずだが、前方でなにかが急に現れた。湧いて出たといったほうがいいかもしれない。マップ上では青い点の位置だ。
「なにか、いる……」
そう言って、立ち止まる。
二宮さんからの返事はない。
よく見ると、透明できれいな水色のスライムだ。なぜスライムがいる? そもそもスライムって、いていいもの?
きれいなので、許されるのか?
だれかがスライムに転生したのか?
クエスト系の人気ゲームにスライムはいたが。
うーむ、わからない。
スライムは小型犬ほどもあるから、スライムの親分か。相手も動かずにじっとしている。まさか、寝ているのか?
眠れる洞窟のスライム?
ゆっくりとスライムに近づき、警戒して鞘から短刀を抜いて構える。
「なぜかわからないが、スライムがいる」
「えーっ、なんか夢の中と同じかも……」
「…………モンスターと戦う夢でも見たの?」
「あたり。試しに夢と同じか、確かめてみようかな」
どうすればそんな夢が見られるのですか?
二宮さんはそう言うと、俺の後ろから半身を出して、俺の背中を押しながら右手を伸ばしていく。
背中に二宮さんの掌の温かさが伝わってくる……まさかこれも夢?……のわけないか……
そんなことを思っていると、二宮さん手が、もうすぐスライムに届く……
そのとき、思わず俺は身体を左に傾けた。
二宮さんの伸ばした右手から突然爪が伸び、スライムに手というか、爪というか、を突っ込んでなにかを掻き出したのだ。
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