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小さな成長を忘れるな

「お前たちにはオークの討伐をやってもらいたい」


 俺とユナは冒険者ギルドのギルドマスターの依頼によりオークの討伐に出かけた。


 オークは豚のような頭に二足歩行の魔物だ。


 今回はオーク集団で一つの村を占拠したので、その一掃の部隊に俺とユナが選ばれた形だ。


「お前たちは逃走したオークの討伐をお願いする、このミッション二次被害を防ぐ上でとても大切なミッションになる、ユナとマルスよろしく頼む」


 ギルドマスターはこう依頼していた。


 俺たちは主戦場を戦うのではなく、そこから逃げたオークを討伐するのが仕事だ。


 主戦場ありきの戦いになるだろう。オークが何体逃げてくるか、主戦場が人間優位に進むだろうか。もしオークが勝つようなことがあればもはや俺たちの仕事は成り立たなくなる。


 オークは群で支配域を広げてくる。


 オークの縄張り意識は強く、同族でも平気で殺し合う。だかハイオークが現れると同族が群れをなし、人の村や街を襲う。


 ハイオークはオークを使い、策略をめぐされる知能を持つ。


 俺たちはオークに支配された村の付近に到着した。


 俺とユナはギルドマスターの指示により、付近の森で待機することになった。


 それからしばらくして、金属がぶつかり合う音や、爆発音が響くようになった。戦闘が始まったのだ。


 多くの人や豚のような悲鳴が鳴り響く。


 俺は木に登り村を見るが、状況は悲惨そのものだった。


 涙で顔を覆う冒険者、涎を垂らして斧を振り回すオーク、血で血を洗う戦いだ。


 俺たちの出番はまだない、戦意喪失する人はいるがオークは戦闘狂のこどく、腕を失っも戦っている。


 その光景はなんとも恐ろしい光景だった。


 オークはハイオークを囲うように、戦闘を楽しんでいた。ハイオークを守るように戦ってる。


 オーク優勢に見えたが、こちらにも上級冒険者が参加している。


 レベル58のスザクという日本刀のような刀を使う白髪の冒険者だ。


 スザクはオークを次々に斬り倒す。その剣捌きは舞の如く可憐で稲妻の如く強く速い。


「ユナ、ありがとう」


「急になんに対するありがとうよ」


「いろいろだよ、俺のレベル上げを手伝ってあげたり」


「なんで今言うのよ」


「悲惨な惨状で死ぬかもしれないからじゃなくってただ言いたかったんだ、もう言わないよ」


「えっ」


「仲間だから」


ユナはほんのりと顔を赤らめた。


 戦況を俯瞰していた俺はスザクから逃げるようにして森へ逃げる一匹のオークを発見した。


 俺はユナに声をかけ、逃げたオークを追う。


 そして俺とユナはオークと対面する。


 オークは斧を持ち俺たちに襲いかかる。


 俺は剣でそれを受け流す。


 ユナが弓でオークの腕を射抜く。


 オークはすぐに体勢を立て直し、腕に刺さった矢を引き抜く。


 俺はオークに魔法を使う。魔法の火の玉はオークの腕に当たった。


 それから魔法はオークの腕がしばらく燃えてオークは吠えながら暴れた。


 暴れているところに、ユナの矢が脳天に刺さって、オークはホログラムのように消滅した。


 今回はユナも本気で戦っている。こんな死人が出るような状況で、俺のレベル上げを優先する余裕は俺たちにはない。


 オークが新たに2匹現れた。


 きっとこの2匹もスザクから逃げてきたオークだろう。


 木の棍棒を持ったオークが俺に棍棒を振り下ろした。


 俺はそれを間一髪でかわす。


 オークの棍棒は地面を抉る。


 俺はすかさず棍棒を振り下ろしたオークに剣を横に振るった。


 俺の剣はオークの首を切り落とし、棍棒のオークはホログラムのようにして消えた。


 オークがもう一体残っているが、俺はレベル4になった。


 基礎能力の向上をみなぎる力で感じる。


 今回の戦闘経験で、速さ、力が大幅に向上した。


 何度も戦闘を繰り返すことで着実に成長を感じることができる。


 失敗することもあるが最後に成功すれば問題ない。


 俺は魔法を放つ、それはオークの腹を穿ち、オークはホログラムのように消滅した。


 魔法の力も数段強くなった。


 誰かを守る力なのか、魔物を倒す力なのか。思った以上の威力の魔法に恐怖を覚えた。


 だが今自分の力に怖気付くことはできない。


 俺には指一本動かしただけで魔物を倒せてしまうほどの力を得なくてはならない。


 そうでもしないと魔人には勝つことができない。それが60レベルの世界だ、英雄であり、怪物でもある。


 戦う中で兄者との思い出が何度もフラッシュバックする。


 俺は兄者のことを考えると気が散る、だから考えないようになりたい。


 何も考えず戦うことだけに集中したい、でないと敵がよく見えなくなる。


 人間とはなんと弱いのだろうか。俺はなんでこんなに弱いんだろう。


 気づいたら兄者を生き返らせる方法ばっかり考えている。


 俺にはそんな力はないのに。自信のなさ、会いたさ、俺の頭がそれを欲して、渇望している。


 俺は兄者がいなくても強い、俺はもう兄者に会わなくてもいい、そんな簡単なことを思う機転が効かない。


 繰り返される思考の中で、もしも兄者に会えたのならと考える。期待して期待して期待して期待して不安になる。


 主戦場となっている村の様子を伺う。


 俺の目に映り込んできたのは黒いモヤのかかった魔人が白髪のスザクの胸に剣を突き刺した瞬間だった。


 そしてスザクはホログラムのよう消失した。


 魔人はすぐにその場から走り去っていった。


 スザクの消失により、人間はオークに押され始めていた。


 多くの人間に絶望ということがよぎる。


 魔人は走り去って以来姿を見せることはないが、ハイオークとオークは容赦なく人々に襲いかかった。


 俺とユナは主戦場の応援に向かうことにした。


 もう兄者がいないと何もできない俺じゃない。


 俺は一体のオークを切り倒し、ユナが他の一体のオークを射抜き消失させた。


 大丈夫、足手纏いではない。これまでの経験の全てが今の強さになっている。


 こないだの俺ではオークを倒すことはできなかっただろう。


 上には上がいるが、オークを倒せるようになった俺は直実な一歩を実感した。


 ハイオークが俺をめがけ突進してきた。


「勢いのある芽は早めに摘む」


 ハイオークは確かにそう言った。


「ハイオークは喋るのか?」


 俺は驚きながら口走る、喋れる魔物は強いと聞く。


「オマエヲタオス」


 ハイオークの斧を俺は剣でガードしたが、後方に吹っ飛ばされた。


 桁違いの力に、俺の体は木々を薙ぎ倒しながら止まる。


 今にも消えてしまいそうな意識、眠気なのかとても寝たいという欲を感じる。


 今だけは負けるわけにはいかないんだ。


 死ぬんじゃないかという不安を感じる。たかが後方に吹っ飛ばされて、頭から血を流し、今にも途切れそうな意識なのに。


 俺は剣を地面に突き立て、立ち上がる。


「第二ラウンドだ」


「オマエは負ける運命にある」


 ハイオークがそういう。


「やってみぇーとわからねーだろ、この豚野郎が」


 俺は魔法を使った。


 火の玉がハイオークめがけて飛んでいくが、ハイオークの振り下ろした斧によって霧散した。


 オークを穿った魔法があっけなくハイオークには無力だった。


 俺は剣を強く握りハイオークの懐に入り込む。


 それから死闘が繰り広げられた。俺はハイオークの斧を致命傷にならない程度に交わしながら、ハイオークに剣を突き立てた。


 死闘の末俺はハイオークに剣を突き刺すことに成功した。


 ハイオークはホログラムになって消失した。


 全く夢のようだった。


「大丈夫、マルス?」


「これは夢か?」


「夢じゃないわ、マルスがハイオークを倒したのよ」


 俺は指一本動かせず、ユナが俺を庇いながらオークを弓で射抜いているのを眺めてることしかできず、俺は意識を失った。

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