諦めらないさ
「レベル3に上がりました。経験値が上昇します。」
俺のステータスボードにそう表示される。そして俺の基礎能力が目に見えて上がってるのがわかる。
俺はユナとギルドの依頼をこなしている。レベル的に不釣あいだか、ユナの好意に甘えて、パーティを組んでいる。
ユナは28レベルで俺は2レベルでチームを組んだ。
そして今3レベルに俺はなった。ゴブリンを倒したのだ。ゴブリンはすばしっこく、攻撃がなかなか当たらずに苦戦した。
ゴブリンのナイフによって切り傷が増える。
まだ戦える。冷静になりつつ剣を振るう。
ユナの調合した回復薬を飲み、切り傷を治す。
ユナはおれの経験値のためだと、静観するのみだ。
ゴブリンにこれほど苦戦するとは思わなかった。
的が小さいとここまで攻撃を当てるのが難しいのかと思う。
ゲームで攻撃が当たらない場面があることをこういうことかと思い出す。
やってやる、必ず倒してやる。
このゴブリンは人里に出てきては人を襲い食料や武器などを奪うれっきとした魔物だ。
俺は魔法を放つ。しかしゴブリンには当たらず地面に当たる。
魔法を放ちすぎてMPが尽きた。もちろんのこと魔法はもう使えず、眠気や倦怠感が全身を襲う。
そんなことを考えている間もゴブリンは俺に襲いかかってくる。
だんだんゴブリンの動きを捉えられるようになってきた。
ゴブリンの知能はあまり高くなく、喋ることはできない。武器を使うが、魔法を使えるゴブリンは少ない。
魔神などの喋れる魔物は少なく、とても強力な敵だ。
ゴブリンも、マジシャンゴブリンはゴブリンの上位種になっており、魔法を扱うようになる。
今回は幸いのことに、普通のゴブリン一体と遭遇した。
ゴブリンは好戦的で俺とユナを認識した途端に襲ってきた。
ゴブリンだけではなく、魔物には人を襲う習性がある。
魔物にはなんらかの指令系統があり、昨年勇者が2人の魔人と無限に湧き出る魔物により殺されてしまった。
魔物による勇者殺しは当たり前のように行われている。
勇者は強力な力で魔王を倒す宿命を負ってるが故に標的にされてしまう。
勇者は伝説の剣を抜いた物に対する称号だ。伝説の剣は勇者が死ぬと剣はテレポートして元の位置の戻る。
勇者はよく死ぬが、勇者が弱いわけではなく、殺しにくる魔人が強いのだ。
勇者の質は決して悪くならない、この世界には正義感の強い奴が多く、伝説の剣を抜きに来る人は後を経たない。
この世界は魔物が世界の半分を支配している。そして日々魔物によって人々が襲われているのだ。
その中で飢饉や魔災害などの被害が後を経たない。そこで勇者はそれらの被害を大幅に抑えることができる力を得る。
俺はゴブリンの速さ、力、能力を徐々に把握していった。
戦えば戦うほど相手を知ることができる。
何事も経験だと気付かされる。
俺には力も経験もないけど、経験は積むことができるし、経験を積めば強くなれる。
経験を積むと強くなるのは、失敗を知ることができるし、時には成功の法則も見つけることができるからだ。
俺の剣先が始めてゴブリンを捉えた。
剣先がゴブリンの左腕に擦り、紫色の血液が流れ落ちる。
ゴブリンの血は俺の赤い血とは違い紫色をしており、俺の返り血と混ざり合いゴブリンの左腕は独特な色になっている。
俺は容赦なく、斬る。それから俺がゴブリンを倒すのに時間はかからなかった。
倒されたらゴブリンはホログラムのように消える。
そして俺に新たな経験値が加算される。
それはまさに戦うことを推奨されているかのようだ。
そして俺は3レベになった。速さと確率が大幅に向上した。これは小さくて速いゴブリンと戦闘した影響だろう。
俺はゴブリンを倒した達成感に満ちていた。
ゴブリンが溜め込んでいた物を近くの村に届けると多くの人が感謝してくれて嬉しくなった。
時には親父の形見だと言って泣いていた青年もいた。
物には誰かのあり方が残る。使い古された剣には剣士としてのあり方が、折れた杖にはその人の終わり方が残っていた。
俺たち人間も魔物と同じようにホログラムとして消えるけど物は残る。
辛い中にも思いがある。それを救いというのだろう。
「やったわね、マルス」
ユナが俺に声をかける。魔人に襲撃されてから1ヶ月が経ち、だいぶ元のユナに戻ったがまだどこか影を感じる。
「ああ、ユナの回復薬がなければとっくにやられてたよ、ありがとう」
「回復薬なんていつでも持ち歩けるから、マルスは1人でも魔物と戦えるようになったんだよ、成長したね」
俺の能力は成長していた。力も速さも魔力も1レベルの時とは何倍も強くなっていた。
たった3レベルだがレベルにはそれだけの価値がある。冒険者が多いのもこれが理由だ。
俺は自分の力に自惚れそうになったが兄者の死を思い出して、己を諭した。
いつからだ、この程度で満足してしまっているのは、いつからだすぐに自惚れるようになってしまったのは。
そんなんじゃないだろ、俺が求めた強さは、圧倒的な強さを求めるべきだろう。