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シルバーファング戦

俺は2度目のシルバーファング狩りに来た。


 あれから俺は治癒魔術で足を直して守らない、魔法と武術の特訓に励んだ。


 日々の努力の中で勇気を取り戻していった。


「兄者、今日は倒せると思うか」


「知らん、お前の頑張り次第だ」


兄者はハツラツそう言った。


 今の俺には自信があるが、実力がないのかもしれない。だからまた失敗するかもしれない。だが俺には自信があるからまた挑戦するだろう。


 俺は目視で確認したシルバーファングに魔法をぶつけた。

 

 シルバーファングはツノで俺の放った火の玉を弾いた。


 こいつは以前の俺の足を折ったシルバーファングよりも強いかもしれない。


 俺はこいつに勝てないかもしれない。


「おいおい、魔法を弾かれたぐらいで戦意喪失か?」


「ちょっと狼狽えちゃったよ」


 兄者が魔法を弾かれて狼狽えた俺に話しかけた。兄者は俺よりもずっと戦いに慣れていると思った。


「別に今勝てなくてもいい、いつか勝てるようになればそれでいいさ、マルスが何のために戦うのかが問題だ」


 兄者が聞いてきた。何のために戦うのか?果たして俺は何のために戦っているのだろう。兄者の期待に答えるためか。一人前になるためか。異世界生活を謳歌するためか。


 そんなんじゃねーだろ。俺の求めた強さは。俺は強くなるために戦っているだ。どんな魔物とだって戦える強さ。


「兄者、俺は強くなるために戦っているよ」


「じゃ、今勝てなくてもいいさ、負けても強くなれる、落ち着いていこう」


 シルバーファングが突進してきた。


 俺は杖をしまい、剣に持ち替えた。


 俺の剣は長剣でゲームの勇者が持ってそうなぐらい派手ではないが、序盤の勇者は持ってそうな地味な剣だ。


 俺は何年も剣の稽古をしてきた。実践経験はないがきっと役に立つはずだ。


 俺は剣を上手く使いシルバーファングの突進をいなす。


 シルバーファングの牙と剣が接触し、俺は左に弾かれて、シルバーは右に進行方向がずれた。


 シルバーファングは畳み掛けるように牙をこちらの方に振り回してきた。


 そして俺は再び弾かれて転ぶ。


 シルバーファングは徐々に減速して止まった。


 こちらを向く。この命のやり取りこそ生きていると実感できる。


 初めっから最強な奴は少ないだろうし、みんな何らかしらの弱さを持っていると思う。


 人の弱さをみて安心できるかもしれないし、人の弱さが不快に感じることだってあるだろう。


 それでも俺たちは戦うんだ。何らかの目的を達成するために。


 別に戦わなくていいが、戦う方が楽しかったりする。そういうふうに脳にプログラミングされている。


 俺はシルバーファングに魔法をぶつける。


 俺の放った火の玉シルバーファングを炎で覆い尽くした。


 シルバーファングは苦しみ暴れる。


 これが命を刈り取るということだと痛感する。


 そして俺はとどめにシルバーファングの喉元に剣を突き刺した。


 温かい血が滴り落ちてきて、俺が逆の立場だったかもしれないと思う。シルバーファングは力無く倒れた。


 シルバーファングはホログラムになって消え失せた。


 この世界はゲームのように死ぬとホログラムになって消えるようになっている。


 それは人間も同じだ。希少でほとんど手に入らないが一度死んでも復活できるアイテムもある。


「よくやったらマルス」


「ああ兄者、兄者がサポートしてくれなかったらこの結果を得るのにもっと時間がかかってた。ありがとう」


 つまらない中にも面白さを見出すことに意味がある。


「ステータスを確認してみろ、レベルが上がってるはずだ」


 この世界にはステータスなるものをホログラムように好きな空間に表示できる。


 俺のステータスはレベル1からレベル2に上がっていて、基礎能力もそれに乗じて上がっている。


 なぜ魔物を倒すと経験値を得ることができるのかわからないがそういう世界だから仕方がないと思っている。裏では経験値の売買が行われているとかいないとか。


 経験値になる魔物はホログラムのように消えるが、経験値にならない生物は消えずに食用になったりする。


 人を倒したら経験値になるとかというと、経験値になる。これがこの世界で一番残酷な真実だ。いや前世でも戦争があるか。


 だが一般人を倒したところで大した経験値にはならない、シルバーファングの100分の1もないだろう。


 それに強者であれ、寝込みを襲ってもあまり経験値は入らない。


 やはり経験を積まないことには意味がないという至極真っ当なシステムだ。


「今日は俺の奢りだ」


 兄者が肩を組みながら言った。


「それは1回目の挑戦の時の約束だったはずじゃ」


「そう何度も、言うもんじゃねーだろ、初めて勝ったんだから奢るぐらいさせてくれ」


 俺は兄者から美味い飯を奢ってもらった。それは滅多に行かない高級な肉屋だった。


 兄者のレベルは32で、冒険者としては中堅だ。


 レベルとは明確な強さの指標であり、勇気と継続力と運を持ち合わせてることを証明する。


 冒険者には死というものが付きまとう、慎重であればあるほど安全だがレベルは上がりにくく、挑戦的であるほどレベルは上がるが死ぬ確率が上がるのだ。

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