2 ある夜の不思議な出会い
参った。本当に厄介な事となった。
「…早く起きてくれないかな。」
私がそう思うのは、すぐ横で気持ちよさそうに寝ている男に対してだ。夜空を観察し楽しんでいたところ、私の前に突如現れ、私の黒歴史を弄りまくった後に寝たこの男。
「結局なんなんだろうこの人。」
不思議な事に、何度かフードをとって素顔をみようとしたのだが、驚く事にこのフード、全くうごかないのである。フードだけじゃないローブもだ。
触れた瞬間に、鉄の塊のような硬さと性質に変化し、手を離すとまた風に揺れるようになる摩訶不思議な服をこの男は着ていた。
「どこかの貴族かな。」
聞いたことのない性能をしている服を着ているし、こんな所に散歩ということは、竜種のどれかの背中にでも乗ってきたのだろうか。
本人は何も知らず気持ちよさそうに寝ている中、私の想像だけが膨らんでいく。
「それに…これもなにか関係あるのかな。」
まだ気になることはあった。この男が寝てもうすぐ三十分程が経過しようとしているのだが、十分ほど前から予想していた通り、近くの木々に魔獣が集まり始めてきていた。だが、それだけなのだ。
いつもなら、襲いかかってくるのだが、今日は木々からこちらを覗いているだけで、一匹もおそいかかってこない。それどころか、近寄ってさえこないのだ。
「うーーん、考えれば考えるほど、謎の多い不審者だなぁ。」
話してみた感じ、初めは声のせいか、少し暗いのかなという印象だったが、話すうちにどちらかという陽気な人とも感じとれた。
「あーー、こんな事になるなら今日は抜け出すの辞めとけばよかった。朝までには帰らないとなのになぁ。」
夜空を見上げて、私はまた独り言を話す。流石に朝までには目覚めてほしいが、出会ったばかりだというのに、この男ならずっと寝ていてもおかしくないと何故か思ってしまう。
「そうか、何か約束事でもあったか。それは悪いことをした。僕が責任を持って送り届けよう。」
「へ?」
横からそんな言葉が聞こえ、顔を向けると
「すまない。今日はありがとう。」
「あっ…れ?」
彼の手が私の顔の前に、水色の綺麗な魔法陣を挟んでそこにあり
「また…話す機会があれば。」
その言葉が耳に届いた瞬間、私の身体から力が抜け落ち、次の瞬間、視界が真っ暗闇になったのを最後に、何も考えられなくなった。
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