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Sky Way!  作者: 碗古田わん
最速屋《ケレリタス》グランプリ《GP》編

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7.白翼の天使《ホワイトエンジェル》、降臨

 天道は先行車を次々にパスしながら、箱根スカイウェイを突っ走しっていた。

 快調に見えたが、気になる事が一つあった。

 エンジンからする異音が段々お大きくなってきていたのだ。

「ここまで来る間に、かなり無理したからな……」

 普段ならオーバーレブするような失敗(ヘマ)はしない。しかし、自分より大排気量を何台も相手にするため、既に何回もレブリミッターを効かせていた。

「持つのか?」

 そんな事を自問した時、

「ん?」

 天道は後ろから猛烈に迫る灯りを感じた。

 サイドミラーに目を凝らす。

「二代目エキシージ?」

 それは、ロータス・エリーゼのシャシーに、ロータス・エヴォーラ用のエンジン――トヨタ2GR-FE、3.5リッターV型6気筒を搭載した二代目ロータス・エキシージだった。色は白。ナンバーは練馬。

「もう一台いる?」

 さらにその後方には、車種はわからないがもう一つフロントランプが見えた。

「でも、どこから……?」

 ここまで抜いてきた相手の中に二代目エキシージはいなかった。さらに、スタートは自分が一番遅かったはずだ。

 そうしている間にも、二代目エキシージはグイグイと迫って、あっという間にテールトゥノーズになった。

「上等!」

 インを押さえながら天道は、高速コーナーを高速ドリフトで駆け抜けていく。しかし、二代目エキシージは、それにアウトから被せてきた。

本気(マジ)か!?」

 コーナーを最短で回った天道が、辛うじて先にコーナーを抜け出す。遅れず、二代目エキシージもコーナーを立ち上がった。

「速い!」

 天道は唸った。コーナリング速度は明らかに相手の方が上だった。エキシージを軽量化していなければ今頃は先行を許していたかも知れない。

 連続する高速コーナーで、二代目エキシージは積極的にアウトから仕掛けてきた。二台はパラレルドリフトでコーナーを回る。

 そんな二代目エキシージの走りに、天道は妙な既視感(デジャヴ)を覚えた。

「この走り……覚えがある」

 嫌な予感がした。ポケットから携帯電話(ガラケー)を取りだした。電話帳から目的の人物を探し、通話ボタンを押す。

 案の定、二代目エキシージのドライバーが、電話を取る仕草をした。

「姉キ!」

 天道は全力で叫んだ。

「どうしたの?」

 それに対して、二代目エキシージのドライバー、空子が平然と応える。

「その車……いや、それより免許、どうしたんだよ!?」

『この前の契約更新の時に、返してもらったよ』

 盛大に突っ込む天道に、空子は当たり前のように答えた。

 夏の終わりの契約更新時に、空子は免許を返してくれなければ事務所を辞めるとマネージャーを脅したのだ。紗理奈だけ、免許携帯を契約で許してるのはズルイと。

 その間も二台はコーナー毎に競り合っていた。

『それより、紗理奈から聞いたよ?』

 そこで空子の声のトーンが一段低くなった。

『あのフェラーリの()とつき合ってるんだって?』

「!?」

 天道は言葉に詰まった。それで、紗理奈に口止めしてなかった事を思い出した。

『お姉ちゃん、認めないからね!』

 無言の天道に空子は言い放った。

『じゃあ、急ぐから先行くね』

 そして、電話を切った。ちょうど中速コーナーに差し掛かるところだった。

「まっ!」

 て、と動揺する天道のアウトから空子は多角形コーナリングを仕掛けてきた。

「あっ!」

 ブロックする間も与えず、空子のエキシージは天道を抜き去る。天道がコーナーを立ち上がる頃には、既に次のコーナーへのアプローチを開始していた。

「糞っ!」

 それでも、天道はなんとか追いつこうとする。自分も多角形コーナリングを使ってコーナーを回る。

 しかし、立ち上がりで後続車に並ばれた。

「紗理奈姉ぇ!?」

 天道がアヴェンタドールの方をチラッと見ると、紗理奈が苦笑いしていた。

 そのままアヴェンタドールにも抜かれ、空子のエキシージを先頭に三台は箱根スカイウェイを抜けて芦ノ湖スカイウェイに入った。

「このままだと、霞が危ない!」

 天道は焦った。一瞬、霞に警告の電話を入れようとも思ったが、対戦(バトル)中に通話をするなんて芸当は恐らく自分と空子しか出来ないと思って諦めた。だとすれば、自力で止めるしか無い。

「早く、追いつかないと!」


 その頃、霞は真一と激しい対戦(バトル)を繰り広げていた。

 二台は慣性ドリフトを駆使してコーナーを次々にクリアしていく。おかげで霞は前に出る事が出来なかった。このまま膠着状態が続けば、麗華との差が広がる一方だ。

「アレをやるしかな……い」

 なので、霞は決意した。正直、まだ実戦レベルとは言い難いが、この状況を打破するには賭けるしか無い。

 狙い目は、三国峠の展望台だ。

 60Rへのアプローチで、霞はアウトに458を持ち出した。

「無駄だよ」

 同じくアウトからアプローチした真一が、慣性ドリフトに入る。

「!?」

 真一は目を見開いた。458が(コース)をはみ出し、展望台の駐車場に突っ込んだからだ。

「オーバーラン!?」

 だが、458はそそり立つ石碑の手前で直進と旋回(ターンイン)を細かく繰り返しながら、ノーズを続く45Rの出口へと向ける。

「多角形コーナリング!」

 驚く真一の911GT3RSのノーズを掠めて、458は前に出る事に成功した。天道がMC20との対戦(バトル)でやった事を逆の順路(ルート)でやったのだ。

「ふーっ」

 なんとか前に出る事が出来て、霞はホッとした。しかし、安心するのはまだ早い。

「あと、一……台」


 空子を先頭に紗理奈、天道は、先行車をパスしていった。

 そうしていると、芦ノ湖スカイウェイの中盤で、トップグループに追いついた。

「アカリ……?」

 空子のエキシージとアヴェンタドール越しに、A110Rのリアを発見した天道は、驚きの声を上げた。あかりがこんなに前にいるとは思わなかったからだ。

 空子がA110Rに照準を合わせる。

「なに!?」

 後方から猛スピードで迫る空子のエキシージに、あかりは恐怖を覚えた。そして、晶からの助言を思い出した。

 ――白い二代目エキシージは要注意です。

 あかりの身体に緊張が走った。首都高速最速と言われる白翼の天使(ホワイトエンジェル)が、間近に迫っているのだ。

「ドライバーは、確か蓮實先輩……」

 空子とは、天道が荒れていた頃、職員室に謝りに来た時に会話して面識があった。もっとも、つき合っていた事は天道の意向で内緒にしていたのだが。

 そうしてる間にも、A110Rと空子のエキシージはテールトゥノーズになった。

 続くコーナーの入り口で空子のエキシージはアウトに車体を持ち出す。

 あかりは、セオリー通り、インを守った。

 限界ギリギリまで我慢して、ブレーキペダルを叩き踏む。

「嘘!」

 だが、空子のエキシージは減速せずにA110Rの前に出る。

 そこで始めて空子のエキシージはブレーキングを開始した。四輪をロックさせてコーナーへ突っ込む。

「さっきの!?」

 灯りの頭に霞に抜かれた記憶が蘇る。

 しかし、そこからが違った。

 ガードレールギリギリで空子のエキシージは旋回(ターンイン)と直進を細かく繰り返しながら、ノーズをコーナーの出口へ向ける。

 そして、インを回るあかりを尻目に、コーナーを脱出する。

「なにが……」

 軽く去なされて、あかりは呆然とした。

 そこを紗理奈は見逃さなかった。A110Rの注意力が散漫になっている事を察し、続くコーナーでブレーキングドリフトを仕掛ける。

「あっ……」

 ブロックする間さえ与えてくれない。コンパクトにコーナーを回ったアヴェンタドールは、強烈なトラクションであかりに並ぶと、そのまま抜き去った。

「クッ……!」

 立て続けに二台に抜かれて、あかりは自分の不甲斐なさを恥じた。

 だが、それで終わりでは無かった。

 次の右コーナーでブレーキング競争を仕掛けられたからだ。

「蓮實君!?」

 アウトからエキシージに並ばれて、あかりは声を上げた。チラッと横を見ると、天道が指で挨拶していた。

「悪いなアカリ、先を急ぐんだ」

 そのまま天道は、多角形コーナリングでA110Rを抜き去った。

「姉キは……?」

 A110Rの前に出いると、既に空子と紗理奈は美香子を抜き去った後だった。

 遅れまいと、天道も多角形コーナリングを炸裂させて、美香子をあっさりと抜く。

 すると、ちょうど空子が健太郎をパスしているところだった。紗理奈もそれに続いく。

 さらに真一も多角形コーナリングで抜いて、とうとう霞の後ろに迫った。

「だ……れ?」

 知らない車が後方から追い上げてくるのをルームミラーで確認して、霞は戸惑った。

 今し方まで後ろには911GT3RSがいたはずだ。だが、いつの間にか入れ替わっている。

 車体からは何やら負のオーラを感じる

 念のため、霞は次のコーナーを多角形コーナリングで回った。

「!?」

 すると、知らない車も多角形コーナリングで回った。

「タカ君のお姉さ……ん?」

 霞は目を見開いた。こんな事を出来る最速屋(ケレリタス)は、天道の他には空子ぐらいしか知らない。

「見つけた……」

 二代目エキシージのドライバーズルームで、空子は舌舐めずりをした。

 霞とは、ゲームで一度、対戦している。だが、今の走りを見るとその時よりも進化しているようだった。

「タカ君の彼女に相応しいか、試してあげる」

 458とテールトゥノーズになった空子は、続くコーナーでも多角形コーナリングでクリアする。

 もちろん、霞も、だ。

 そのまま連続するコーナー多角形コーナリングを炸裂させながら、二台は次々にクリアしていく。

「はぁ……はぁ……は…ぁ…」

 しかし、霞は極度の緊張で息が上がっていた。練習時の多角形コーナリングの成功率がまだ低かったからだ。ここまで一度も失敗(ミス)してないのは奇跡に近い。

 続くやぎさんコーナーも多角形コーナリングで回って、下りの直線に来る。

「ここ……で」

 霞はパドルシフトの右側を細かく叩いてシフトアップしていく。4.5リッターV型8気筒、F136FBが唸りを上げて、458を一気に加速させる。

 ジリジリと空子のエキシージとの差が開いていく。

 直線の終わりはうねるように下る40Rだ。

 霞はここぞというタイミングでブレーキペダルを叩き踏んだ。四輪をロックさせながらコーナーへと突入する。そこから旋回(ターンイン)に持っていこうとした。

「ウ……ッ!」

 だが、うまく旋回(ターンイン)してくれない。減速が甘かったのだ。

 霞は焦った。

 すると、体感的に一歩遅れて旋回(ターンイン)を始める。慌ててステアリングを戻してまた切った。

 カクカクと458がノーズをコーナーの出口に向ける。しかし、おかげでコーナーを脱出するタイミングが遅れてしまった。

 そこを突いて、空子のエキシージが同じく多角形コーナリングでコーナーをクリアし、並びかける。

「ク……ッ!」

 それを横目で見ながら、霞はトラクションを意識してアクセルペダルを踏み込む。

 結果、馬力差で辛うじて空子のエキシージを抑える事が出来た。

「今のは危なかっ……た……」

 多角形コーナリングを失敗(ミス)してしまい、霞は動揺した。

「このままだと、負けちゃ……う」

 心が挫けそうになる。もうこのまま多角形コーナリングを失敗(ミス)しまくって抜かれてしまうんじゃないかと思えてくる。

「こんな事ぐらい……で!」

 そんな自分を叱咤激励して、霞は次のコーナーも多角形コーナリングで回った。

「フー……ッ」

 今度は上手くいき、霞は安堵の溜息を漏らした。

「やるじゃない」

 それを後ろから見ていた空子は、口元に笑みを浮かべた。多角形コーナリングの難度は空子自身がよく知っている。あのまま崩れるかと思ったが、きちんと立て直してきた。それは称賛に値する。

「でも、それぐらいじゃ認めないから」

 と、そこで携帯電話(スマホ)が鳴った。相手は着信音で直ぐにわかった。紗理奈だ。

「なに?」

 電話を取った空子は、あからさまに不機嫌そうに言った。

「今、忙しいんだけど?」

『スマンが、タイムアップだ』

「もうそんな時間?」

 空子と紗理奈は明日――厳密には今日だが――も朝から仕事があるので、予め参加できる時間を決めていたのだ。

 順路(ルート)は箱根料金所を過ぎたあたりだ。外れるのはちょうど良い。

「今日のところはこれで引いてあげる」

 通話を終えた空子はキッと先行する458を睨みつけた。

「でも、二人の仲を認めたわけじゃ無いからね!」

 そして、捨て台詞を残すと、紗理奈と共に(コース)を外れた。

「助かっ……た?」

 それをルームミラー越しに見た霞は、何が起こったのかわからないが、ホッと胸を撫で下ろした。

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