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Sky Way!  作者: 碗古田わん
海王《ネプチューン》編

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36/53

プロローグ 海王《ネプチューン》

 いくつものエキゾーストノートが、闇夜に響いていた。

 それは、4B11MIVECの排気音(サウンド)だったり、EJ20の排気音(サウンド)だったり、FA20の排気音(サウンド)だったり、RE13Bの排気音(サウンド)だったりした。

 ここ箱根には週末という事もあって、大勢の走り屋(ストリートファイター)が集まっていた。

 東山(ひがしやま)洋志(ひろし)もその中の一人だった。

 東京への出向も終わり、こうして自分の主戦場(ホーム)へ帰ってきたのだ。

 九月も中旬の事だ。

「やっぱり主戦場(ホーム)はいいな」

 箱根湯本から芦ノ湖までを既に三往復して、洋志は改めて主戦場(ホーム)のありがたみを実感していた。

 首都高速での対戦(バトル)はそれはそれでいろいろ収穫もあったし、いい経験になったと思っている。

 だからこそ、感じるのだ。主戦場(ホーム)はいいと。

 知った(コース)で、新しく得た事を試す。前の走りがわかってるから、変化にも気づける。自分の成長を実感できるのだ。

 箱根湯本で一息ついてから、洋志は再び、愛車、マツダ・RX-7で国道を上り始めた。

 (コース)のあちらこちらに走り屋(ストリートファイター)が走っている。なので、平日のように(コース)幅を目一杯使ってのコーナリングは出来ないが、それで充分、走りを楽しむ事が出来た。

 しばらく走っていると後ろからパッシングを受けた。

「正気か?」

 混雑している週末では、対戦(バトル)はしないとういのが、走り屋(ストリートファイター)での暗黙のルールになっていた。

「どこの初心者(素人)だ?」

 ルームミラーで車種を確認する。

「!?」

 洋志は息を飲んだ。

 エアダクトやエアロパーツを廃したサイドライン。ウイングのないリア。低いフロントのエアインテークには、三叉の銛(トライデント)のエンブレム。

 それは紛れもなくマセラティ・MC20だった。

「なんで最速屋(ケレリタス)が、国道(ここ)で……」

 箱根では走り屋(ストリートファイター)最速屋(ケレリタス)は、はっきりと区分けが出来ている。走り屋(ストリートファイター)なら国道、最速屋(ケレリタス)なら芦ノ湖スカイウェイといった具合だ。

 なので、これは明らかに()()()()()だった。

 それにも関わらずMC20は、どけ、とばかりにしつこくパッシングしてくる。

 洋志はルームミラーに目を凝らした。ドライバズシートの他にサイドシートにも人影かがある。どうやら女連れらしい。

 隣の彼女にいいところを見せたくてイキっている。洋志はそう判断した。

 彼女にいない歴=年齢の洋志は、カッとなった。

「なら、乗ってやるよ!」

 短くハーザードを点灯させる。それで対戦(バトル)が始まった。

 曲がりくねった国道を、二台はテールトゥノーズで疾走した。

馬力(パワー)はあっちの方が上か……」

 だが、コーナーはこっちの方が上だとも洋志は思った。

 いつ対向車が来るかわからないので、基本的に片側車線のみを走っている。なので、(コース)幅を一杯に使った時に比べて同じコーナーでもRがキツくなる。

 そこをRX-7はドリフトで駆け抜けていった。対してMC20は、グリップ走行でクリアしている。

「これなら勝てる」

 洋志は確信した。コーナーばかり国道では馬力(パワー)差に任せて直線で抜く、という事がほぼ出来ないからだ。

 大平谷のヘアピンをドリフトで駆け抜け、続く右の低速コーナーも洋志はドリフト状態で突入する。

 すると、MC20はアウトから反対車線――インへとアプローチしてきた。

「なに!?」

 不意を突かれた洋志はどうする事も出来ず、左車線をアウト・アウト・アウトのラインでクリアする。

 それに対してMC20は理想的なアウト・イン・アウトで、コーナーを抜けた。

 立ち上がりでMC20が前に出る。

「無茶しやがる」

 洋志はMC20の無謀さに呆れながら、直ぐにテールへとついた。

 さっきとは逆に順位で、二台はテールトゥノーズになって連続する中速コーナーを走って行く。

「そっちがその気なら……」

 洋志は対向車の()()()()()()に気を遣いながら、反対車線へ飛び出しMC20を抜こうとした。

 だが、MC20はそれに素早く反応してブロックしてくる。

「あぶっ……!」

 半ば強引に前を塞がれて、洋志はアクセルを緩めてなんとか回避した。

「なんてことしやがるだ!」

 洋志は怒りにまかせて叫んだ。

 普通、追い抜きを掛けられた場合、相手がノーズを突っ込めばそこでラインを譲るのが暗黙のルールになっていた。これは競争屋(レーサー)でも最速屋(ケレリタス)でも走り屋(ストリートファイター)でも同じだ。

 だが、MC20はそれを無視して()()()()()のだ。

 冷静さを欠いた洋志は、なんとしてもMC20の前に出るんだと思った。

 狙い目は宮ノ下の交差点。左の直角コーナーだ。

 MC20がブレーキランプを点灯させた。そのタイミングで洋志は反対車線へと飛び出した。

 ブレーキング競争でMC20の前に出る。そこからドリフトへと持ち込んだ。

 RX-7は、アウトからMC20に被せるようにインへとアプローチする。

「勝った!」

 洋志ははっきりと感じた。このまま立ち上がれば前に出られる、そう思った時、

”ドスッ!”

 鈍い音がしてRX-7の車体がアウトへと吹っ飛んだ。

「!?」

 とっさにカウンターを当てる。それでも横滑りは止まらず、RX-7は直進方向の道路へと飛び出す。このままでは旅館の入り口にぶつかってしまう。

「ちっ!」

 慌てた洋志は、サイドブレーキを引いて車体をスピンさせた。

 その横をMC20が意気揚々とコーナーを駆け抜けていく。

「ふーっ……」

 なんとかRX-7を止めた洋志は、深く息をついた。それから急いで車を降りると車の左側に回り、ドアを見た。

 案の定、そこには接触の痕があった。

 MC20はドリフト状態のRX-7のサイドにぶつけてきたのだ。

「なんてことしやがるだ!」

 洋志は憤慨した。

 そこで洋志は、チームメンバーから聞いた話を思い出した。

 曰く、最近、走り屋(ストリートファイター)目標(ターゲット)にして、ラフプレイを仕掛けてくる最速屋(ケレリタス)がいると。

「通り名は確か、海王(ネプチューン)……」

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