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勇気と混乱

はは、最終投稿が3か月前だってよ……はは。(笑えねぇ)


空が明るくなり朝になる。ノモさんと別れた後、私とアーンは計画について少しだけ話し、目を瞑って仮眠を取っていた。

牢の中にいる獣人の子供たちも目を覚まし始めた。ローナも目を覚まし、周りをキョロキョロしだす。

私と目が合うとこちらによってきて体をピタッとくっつける。まだ寝ぼけているのか、私の腹部に頭を擦り付けている。ローナの細長い耳が首辺りに当たる。


「ローナ、少し聞いて欲しいことがあるんだ」


雫はローナに作戦のことを伝えようと思っていた。ローナから作戦が漏れる可能性があるけど、それでもローナをこれ以上不安にさせることのほうが良くないと考えたからだ。


「…うん、なに?」

「今日、君は処刑される予定だ」

「…ッ」


体が固くなり、腰に抱きついたローナの腕に力が入る。ギュッと抱きしめられ、不安そうに肩を震わしているローナの頭を雫は優しく撫でた。


「大丈夫、君は死なないよ」

「でも」

「あくまでも予定ですよ。私がそんなことさせない。だから、待っていてくれないですか?不安なら泣いていてもいい、私の名前を大きな声で叫んでもいい」

「…本当に待つだけ?」

「はい、それだけです。後は私が少しだけ頑張りますから」


ローナは薄っすらと涙をためたその目で雫を見る。ただ待つと言っても自分が殺されるのを待つのですから不安はものすごいでしょう。その決断をするには誰にだって時間と覚悟がいります。そして、時にはできないこともある。


そして暫く長い沈黙の時間が訪れる。


「ちょっとだけ……勇気が欲しい」


ローナはしがみつきながらそう小さく言葉をこぼす。


「そうですね、私に出来ることはありますか?」

「じっとして、目を閉じてて」


私はローナに言われるままじっとする。そして、首筋にちょっとした痛みを感じた。

目を開けるとローナが自分の首筋に甘噛していることに気がつく。


「ろ、ローナ?」

「ん、目を閉じてて欲しかったのに」


私が声をかけると首筋から顔を話し、どこか恥ずかしそうにする彼女の顔が目の前にくる。恥ずかしそうにしているが、先程までの震えは彼女の体からなくなっていた。

今の行動の意味は私にはわかりませんが、何かが変わったのでしょう。


「私、待つ」

「ありがとう。ローナはいい子だね」


雫が頭を撫でるとローナは恥ずかしそうに俯き、ソワソワしだす。何か他に言いたそうに雫を見つめるが、何も言わない。雫がどうしたんですか?と聞くとローナは先程のように体をくっつけて来るだけだった。その様子をアーンは、他の獣人の子供の相手をしながら微笑ましそうに見ていた。


そして、その時はやってくる。

ドカドカと牢までやってきたのはあの男だった。地下牢の臭いに顔を歪ませながらもあざ笑うかのような目をこちらに向けている。


「その獣人の処刑が決定された。安心したまえ、その醜い体を我が国民に見せつけ、獣人というものがどれほど不快な種族なのかを知らしめる事ができるのだ。つまり、お前は我が国の役に立てるということが、その身に余る光栄なことだとは思わないかね?」

「えぇ、その通りでございましょう。ベデブ様、このような場所に長居しては臭いが移ってしまいます。その獣人の子供を連れて早く行きましょう」

「まぁ、待て。リアンよ。お前が獣人を嫌いだということはわかっておる。しかし、私はこの男の悔しそうな顔をまだ見ていたいのだよ」


ベデブは、折に近づき私の顔を見る。

ニンマリ顔で、その目は自分より下にいる者を見る目であった。感情は侮蔑、嘲謔の類の目であった。

満足したのかベデブは気味の悪い笑みを浮かべながら部下に指示をする。


「獣人の子供を牢からだせ。そして、連れてこい」

「はッ!」

「い、嫌!」

「大人しくしろ!」

「いや!離して!」


ローナは嫌がるフリをして牢から連れ出される。

アーンは、その様子を憤慨の顔で見ており、他の獣人の子供たちの顔は恐怖に染まっていた。

私は、悔しそうに睨みつけ、何も言わない。そして、ちらっとローナを見ると小さく頷く。


「もうここには用は無い。行くぞ」


そう言ってベデブ達は地下牢を後にしようとした。

私は牢の柵に捕まり、いつもとは違う、荒々しい口調で力いっぱい叫ぶ。


「待っていろ!私はお前を許さない!」

「ぐははは!何を許さないのだ?負け犬は見にくく吠えるが良い、明日はお前の処刑だ」


そう言ってベデブたちは今度こそ地下牢から姿を消した。

ふぅ、と息を吐く。そして、数分後、別の誰かがこの地下牢にやってきた。


「お待たせしました。ノモ、御身の前に」

「じゃあ、行こうか。君たちはここで待っててくれる?少ししたら戻って来るよ」

「お姉ちゃんも行っちゃうの?」


獣人の一人が寂しそうに言う。

先程の光景を見せつけられ、子供たちの抱える不安はより大きなものになっていた。


「僕、待つ。だって、お兄ちゃん、いい人だもん。お姉ちゃんのこと治してくれたもん」

「ぼ、僕も」

「私も!」


そんな声を聞くとアーンは子供たちをまとめて抱きしめる。


「大丈夫だよ。必ず戻ってくる。それに、絶対にここから出してあげるから」

「では、私の魔法で二人の気配を消します。…では、私の後ろに」


ノモは、何かを唱えた後に牢の鍵を開ける。

恐らく魔法のような物を唱えたのだろう。しかし、殆ど聞き取れなかった。

疑問に思いながらも、今はそんなことを考えている暇ではないと意識を本題に向ける。


「じゃあ、行きますよ」

「「はい」」


その頃、王都では公開処刑が行われるという話で持ちきりだった。

王城から数分歩いた場所にある大きな広場には断頭台が設置されていた。そこに群がるのは街の冒険者、平民や貴族などの国民である。

暫くすると兵士がやってくる。断頭台に登り、群がる人だかりに対して話し出す。


「我が国の使徒様であるベデブ様の言葉を伝える。これより行われるは、獣人の処刑である!この世界には汚れた存在はいらない。そのような存在は我々の手によって滅しなければならない。穢れた存在は我々に厄災をもたらす!我々は神に創られし存在だ、であればこの世界に平和をもたらすべきは我々の役目!この処刑は神に与えられたお役目と思え!」


民衆の顔は2つに分かれる。

輝かしい未来を信じ、その言葉を信じ、笑顔で手を振るもの。

睨みつけるような顔を伏せ、俯かせているもの。


兵士による演説が終わると騎士の行列が民衆を縦に割る。

ベデブの手には鎖のような物が握られており、その鎖は少女の首に繋がっている。少女の頭には細長い耳が生えており、人間族では無いことは見て理解できた。少女の腕は後ろで拘束され、来ているものはボロボロの布切れのような服であり、足は素足だった。


少女が断頭台に登らされ、ベデブが民衆に対して手を挙げる。すると歓声がより大きくなり、本人は満足そうに笑う。ベデブは、少女の顔を見る。

絶望に染められた顔を見たかったのだろう、しかし、彼は顔を歪める結果になった。

少女の顔は、真っ直ぐにどこかを見つめていた。それは来た道であり、王城の方角であった。何かを待っているのか、何に期待しているのか。ベデブは、分からなかったが瞬時にその答えに辿り着く。


「やつは来ないぞ」

「……」

「あの男は絶対に来ん。何故なら牢の中に居るからな。特別な鍵でも無ければ開かん仕組みになっておる。無理に開けようと思えば魔法が発動する仕掛けだ」

「………」

「くッ!なぜだ!」

「うっ!」


少女の髪を掴み、顔をあげる。

不安など何もないかのような目をしている事にベデブは混乱していた。昨日は、処刑を伝えれば震えていた小娘がどうしてここまで変わったのか。


「ちッ……まぁよい。これより刑を執行する!」


そうベデブが宣言した時だった。この時、この瞬間に歴史は大きく変わる事になった。

断頭台の広場に大きな映像が流れ出す。


映像には玉座に座る小さな女の子がこちらを忌々しく見つめている姿が写っていた。


『我らが神は悲しんでいる。我らが神の使徒様が傷ついていることを。我らは神の子であり、母が苦しむのであればその原因を排除する役目がある。故に我らの神の名を使い宣言する。ゼイラが知らせる。

シャーネリア帝国は我がベアル魔帝国の使徒を攫い、その生命を危険にさらした。これは、神に対する反逆と同士に我が国に対する宣戦布告と捉える。よって、シャーネリア帝国への攻撃を行う。捕虜になるものは抵抗をやめ、街の外へ出て行け。一時間を住民の避難時間と考慮し、その後、攻撃を開始する。

我らが神の痛みを知るがよい、そして貴様らの神に祈るがいい』


そう言うと映像は消えていき、街の中は更に混乱に陥った。


~数分前の事~


王都の西にある森には機を待つ大勢の魔族がいた。彼らはシャーネリア王国に感謝していた。

それは、自身が使える王の役に立てること。自身が崇める神の使いの役に立てること。そして、無礼な振る舞いをした国に裁きを下すことが出来ることに対してだった。


「副隊長!1から20番隊まで異常はありません。いつでも行けます」

「空爆部隊、遠距離魔法部隊の準備は?」

「問題ありません!隊長の命令一つあれば攻撃を開始いたします」

「まずは、あの城の一部を攻撃するだけです」

「まずは宣戦布告を行います。ルールを守らなければ奴らと同じですからね。そして、その1時間後に攻撃を開始します」

「宣戦布告……まだノモ様からの指示はありません」

「では、待機です」


魔族達は今か今かと待ちわびる。兵士の数は1万と少し。国の戦争にしてはかなり少ない数だと言える。

しかし、集められた兵士は全員が上位種であり、覚醒を成した化け物であった。つまり、国の最大戦力なのだ。


「来ました!宣戦布告の指示です」

「伝達魔法の使用を許可します。全員、傾聴!!」

読んでくださりありがとうございます。

次回は流石に早く投稿するつもりでございます。ブクマなどしてお待ち下さい。


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