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近づいた死


ガタガタ………………………ガタッ!


「ん…物凄く体が痛い。馬車はどうやらまだ走っているようですが」


昨日はローナが寝た後に少し目を瞑って体を休めることが出来た。大体2、3時間でしょうか?まぁそれぐらい出来れば十分ですね。お腹が少し膨れて眠くなったのでしょうね…熟睡しています。


「ローナは‥‥まだ寝ているようですね。少し外を覗いてみますか」


ローナを起こさないようにしながら私は外の景色を見るために出入り口から頭を少し出す。すると目の前には大きな壁に囲まれた場所が見え始めていた。今馬車が走っている所にも家が幾つも建っており、昨日まで馬車が走っていた景色とはガラッと変わっていた。


「あれがシャーネリア王国ですかね。明日には着くと言っていましたし間違いないでしょう」


自分の着ている服を少したくし上げて体に刻まれた紋章を見る。私の唯一の頼みの綱なんですよね。

使徒によって苦しめられていますがその使徒であるこの証に頼るなど…皮肉ですね。

初めはこんな証の事などどうでもいいと思っていましたし、使徒である事も正直他人事出来た。

盗賊のリーダーのあの叫びも私に誰かを重ねた訴えですので私には響きませんでした。ですので使徒と言う存在がどういったものなのかは興味が少し湧きましたが、自分がどうするのかなどは考えていませんでした。使徒である責任や権利など…私には関係ないと感じていたのです。


「今はこの世界に生きている。だから私に関係がないわけが無いんですよね。目の当たりにするまで使徒と言う存在の持つ権利と言うモノを甘く見ていました。お飾りの存在なのだろうと高を括っていましたが此処までだとは」


紋章を見ていると少し違和感に気づく。

以前に見た紋章は1対の翼とよくわからないモノが描かれた紋章でした。それをケリーは使徒の証だと言いましたが…今の翼は3対ですね。もしかしてですけど多くなっていませんか?


「何が原因なんでしょうか?それとも使徒の証はこう言った風にコロコロと変わるんですかね?」

「う~ん?…シズク?」

「あ、起こしてしまいましたか。まぁ馬車が揺れているので寝にくいのもありますけど」

「ううん、シズクのお陰で沢山寝れた。少し体が軽い」

「そうですか。それは良かったです。そう言えば痣はどうですか?痛んだりはしませんか?」

「もう大丈夫みたい。シズクって凄い人間?」

「いえいえ、誰でも簡単に出来る処置をしただけですよ」


本で得た知識ですからね。本当に凄いのはそれを初めて見つけた方です。

私はその一端を少し齧った程度ですかね。まぁ、助手君にもこんな事を言ったような気がしますが‥‥あの時は確か嫌味と言われて逆に怒られましたね。


「そろそろ国に着くようです」

「‥‥」

「大丈夫、安心してください」

「でも…私は」

「売られませんよ。他人の命を売るだとか買うだとか本来はそんな事を人間がして言い訳が無いんですから。ですので安心してください」

「うん」


返事はしてもらえましたけどやはり怖いのでしょう。少し震えていますね。

因みに私も怖いです。それは当たり前ですよね‥‥このままでは死ぬって先に宣告されているのですから。死刑が決まった囚人みたいなものです。

ですが私がここで怖がっているのでは余計にローナを怖がらせてしまいます。子供の前では大人はどうしてもカッコイイ存在でありたいものですね。それは立場が違っても変わりません。


「そうですね…では指切りをしましょうか」

「ユビキリ?」

「そうです。私の集落に伝わっている約束を必ず守る意思を示すものです。こうして小指と小指を繋げてですね…」


私はローナの小指と自分のを繋げて子供時代に何度も行って来たある文言を言う。


「指切りげんまん噓ついたらはりせんぼんの~ます…指切った!」

「ユビキッタ?」

「これで約束は絶対に破られません」

「絶対?」

「はい、絶対にです。ローナは奴隷として売られることは絶対にありません」

「分かった。約束…ユビキッタ!」


私はそう言いながら不安を決して悟らせないように隠し通す。


『大丈夫ですよ、初めは仲間なんていなかったんですから…この身一つで異世界に来たんですから大丈夫です』


そう自分を鼓舞することしか今は出来ない。

そうしなければこの不安と言うモノに押しつぶされてしまいそうな程に今の私は追い込まれている。そうしたのは自分ですし、そう言う時に人間はいつも以上の力を発揮したりするんです。


暫く待っていると馬車は門の中に入り、どんどん道を進んで行く。

何処に進んでいるのかと考えたがそんな事は決まっている。王様のいる所、つまり王城に向かっているのだろう。


馬車の中では私はできる限りローナと話すことによって彼女の不安を取り払う。

今までどんな集落で育ち、家族の話や夢などを話した。そうしているうちに馬車のスピードが落ちていくのが分かった。私はローナと距離を置いた場所にすかさず移動し、様子をみる。

完全に馬車が止まるのを確認すると鎧を来た護衛の人が出てこいと私達を呼ぶ。


出てくるとそこにはニヤニヤと笑みを浮かべているあの男と狐顔の男がいた。ここはどうやらもう城の中のようですね。石畳の床に石材で創られた壁など明らかに建築物の中の景色です。


「お前たちを我らが王に合わせる。そしてお前だ…やはりお前は殺すことにした」


そう言って男はローナを指さす。流石にこれは私も予想外の事で一瞬、思考が止まる。ローナもまさか…自分が殺されるとは思っておらずその場にへたり込む。


「グフフ、お前に見せてやる。私の力の一端をな」

「この獣人の子供を殺す必要が何処にあるのですか?獣人を殺しても意味がないですよね?」

「そうだ…だが気が変わった。それにこいつは他の獣人とは違って脆そうだ。使っても直ぐに壊れるだろう。ならば余興として殺すのが一番の使い道だと考えたのだ。どうだ?やはり私は天才だろう」

「クズが…貴方は何処まで命を冒涜すれば気が済むのですか!?」


男に対しての沸々と煮えたぎった怒りが私の許容量を超えた。哀れみや憎しみと言った感情は消え、漏れ出た言葉には純粋な怒りしか含まれていなかった。


「冒涜?違うな。言ったであろう?私は使ってやっているだけだ。人間は神が自らを模して作った究極にして至高の存在。こいつらはそんな我々人間に使われるために創られた存在なのだよ」

「馬鹿げている」

「お前には分からないだろうな。だから見せしめに先ずは私の力でこの道具を壊すことにしたのだ。兵たちよ、この者達を連れていけ!地下牢にいる他の獣人とともに入れておけ!」

「「「はっ!」」」


私達は兵たちに押さえつけられながら城と思わしき場所の中を移動する。

階段を上がり、扉を抜けると真っ直ぐに引かれたカーペット。その脇には高価そうな装飾品の数々。

壺、絵、よくわからない置物や武具など様々な物が置かれている。


そして長い廊下を通り抜け、道を何度も曲がった先にあったのは一際大きな扉だった。

ゆっくりと兵がその扉を開けると奥にいるのは玉座に座っている男だった。その男は私達を少し怯えた様な目で見ている。


「こ、こやつらが罪人なのか?べデブよお主は使徒故に我が国代表なのだ。我が国の領域以外で事を起こすのは遠慮して欲しい」

「それは許してほしい。だが、私も事を起こしたくて起こしたわけではない。この者が余りにも目の余る行為をしただけだ。私の神聖な行為の邪魔をしたのだ。それは神に反逆したも同然の事。私が罰しない訳にはいかないであろう?」

「うむ…その獣人もそうなのか?」

「王よ、獣人は人間に使われる為に生まれて来たのです。私達はその獣人を人間の道具として使う責務があるのです。私は王にそれをわかってもらいたい」

「う、うむ…じゃが」

「べデブ様がこうも優しく説かれているのですよ?まだ何かあるのですか?」

「い、いやそうではないのだ」

「まぁ、理解できない愚者を導くのも私の使命である。それよりもあの獣人を使って少しやりたい事があります。王城の地下牢に何人かの獣人がいますよね?その者達と一緒に私が粛清します。私の力を信用していない者も王の家臣の中には少なくありません。若い者は特に…ですので明日までに集められるだけ家臣をこの城に集めてください」

「…わかった」


何が神聖な行為ですか…やっている事はただのナンパでしたよね?

この王様はどうやら使徒によって操られている可能性がありますね。愚王と言えばそれまでですが目の前の狂人に比べればマシでしょう。


「兵よ、明日に城へと集まるように皆に伝えるのだ」

「「「「はっ!」」」」


慌てて部屋を出て行く兵たちは王様の家臣たちを此処に集めてくるようです。

粛清と言いましたが…使徒の力を使って?使徒にはそんな力があるのでしょうか?それともこの男がそう言っているだけなんでしょうか。

それよりも私は王様に言わなくてはいけない事があるんですよね。


「私は王に伝えたい事がございます」

「貴様ッ!!勝手に口を開くな。王の身が穢れてしまうだろ。おい、布かロープをこの罪人の口に当てておけ」


兵の一人が私に怒鳴り散らすが私はそんな事をお構いなしに話を続けようとする。

だが…。


「王様!私は…ムッ!」

「黙れ!貴様の戯言など誰も聞きたくないのだ。おい!地下牢へ連れて行くぞ。そこの獣人もだ」

後ろから兵によって口を布のようなモノで塞がれて声が出せない。


しまった…最後まで言えなかった。

このままでは不味い!私が使徒である事を言うことが出来ない時のことは考えていない。

大体、話を初めから聞いてもらえ無いとは思っていなかったですね。話始めたらいきなり後ろから布を口に当てられるなんて…。


「早く連れて行くのだ。私は王と二人で話がある。お前たちはこの罪人が逃げないように見張っておけ」

「「「はっ!」」」


私はローナと一緒に兵たちによって運ばれた。

もうあれですね私達は物と同じ様な感じなんでしょうね。肩に担がれて運ばれるのは初体験です。

地下牢までどれくらいかかるのですかね?結構痛いんですけど。

あと一日。私に残されたのは明日だけですか…何とかなりますかね?

読んで下さりありがとうございます。

良ければブクマ、評価をお願いします。次もなるべく早めに投稿しますのでお願いします。

ではまた会いましょう(@^^)/

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