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訳ありハーフエルフ

ケリー視点のお話になります。主人公視点は次回になります。


シズクさんが連れ去られた後…私はどうする事も出来ずただその場で固まっていた。

私のせいで…私が動けなかったからシズクさんが…………死ぬ?


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…私のせいでまた仲間が死ぬ?私の…せいでまた。


その二文字を思い浮かべただけで否定したい言葉が溢れる。思ってしまった…浮かんでしまった光景を消そうと必死になる。それ以外が何も考えられない。


「ケリー!…ねぇ聞いてるの?ケリー!」

「…ッ!はぁ、はぁ」


肩を強く揺さぶられて私の脳はようやくユリスの声を聞き取った。

ですが心臓がドクドクと脈打っている。息切れを起こし、視野が狭まる。


「落ち着いて?別にシズクが死んだわけじゃないんだから」

「ですが…」

「大丈夫。シズクが大丈夫だって言ったんだから今はそれを信じよう?今はエルゼとニアにもこのことを伝えないと。早く宿に行こう」

「…はい」


私はユリスに引っ張られながら宿へと移動する。暗くなったからなのかユリスはもう日傘をさしていない。私は何処か遠くを見ていた。


あの男がまた私の目の前に現れた。シャーネリア王国の使徒…まだ生きていたなんて信じられないし、信じたくない。彼は私の事を覚えてなかったから良かったけど私は覚えている。彼の国が持つ狂気にも劣らないその深い執念を…人間至上の思想を。

動けなかった…手も足も震え、顔すら上げられなかった。もし顔を間近で見られたら?私の事を覚えていたら?想像をしただけで体がピクリとも動かなくなる。

あの時、シズクさんがあの男の手を弾いた時にその姿があの時の自分と重なった。

でも連れ去られたのは私ではなく…彼だ。大切な仲間だ。自分ならどれ程良かっただろうか…仲間がいなくなるよりも自分がいなくなった方が何倍もマシだ。


私達が宿に着き、慌てた様子で部屋の中で待っていた二人にシズクさんが攫われた事を伝える。

ニアとエルゼも私を責める様子はない。ニアは私を慰め、その男に対しての怒りを口に出すだけだ。

エルゼは…多分怒っているのだろうか?触手を動かしているだけなのでよくわからない。


「……大丈夫?」

「ニア、私のせいで…シズクさんが」

「違う、それは間違ってる」

「え?」

「ご主人様は、ケリーを助けようとした。これはケリーのせいじゃない」

「ですが、私がもっとしっかりしていれば」

「違う。きっとご主人様は謝って欲しいと思ってない。それでニアも前に怒られた。謝るんじゃなくてお礼を言いなさいって‥‥だからケリーもそうする」

「そうだよ!幸いにシズクが何処にいるかは分かっているしね。早く助けに行こう?」


全員が私を励ましてくれる。エルゼも私肩を触手で優しく叩いてくれる。

でも…私にはシズクさんを助けに行く資格なんてあるのでしょうか。

仲間を目の前で見捨てた私に…。


グゥ~


誰かのお腹が鳴った。

…私しかいない。こんな状況でもお腹は減る。自分が腹立たしく思えてきます。


「まぁ、そう急ぐ必要も無いと思うよ。シャーネリア王国はここから山を一つ越えた先にある国だからね。馬車で移動するには丸三日はかかると思う。だから今日はご飯を食べて明日出発しよう?」

「ご飯…ご飯食べて強くなってご主人様を助ける。ケリーもいこ?場所知ってる?」

「えぇ、ですが私は…」

「はいはい、我慢はダメだよ?シズクは皆で揃って助けに行くんだからね?一人でも欠けてたらダメだよ。そう言う事だから早く出発するよ!時間は待ってくれないんだからね~」


その日は約束通りにお店に行きノーズさんに起きた事を話した。

出来ればあまり話したくない事ですがノーズさんにはスーレ大陸へと連れていって欲しいと言っている手前、シズクさんがいなくなった理由を説明しないわけには行きませんでした。


「そうか…よりにもよってあのクソ野郎に捕まっちまったか。そいつは災難だったな」

「私達はシズクさんを助けに行きます」

「…やめておけ」

「どうしてですか!?」

「お前は知っているだろう?あの国の異常なまでの狂気を」

「ですが…それはシズクさんを助けに行かないと言う理由にはなりません」

「お前がもしハーフエルフだとバレたらどうするつもりだ?国の全員がお前を殺しに来るぞ?そしてお前の仲間もだ」

「…ッ」

「ニア、強いよ?」

「僕だって一応ちゃんと強いんだかね?ケリーは少し訳ありみたいだけど‥‥エルゼだって並みの魔物よりかは遥かに強い。それに‥‥多分だけどシズクが捕まったのはわざとだよ」


ユリスが突然そんな事を言う。

そんな訳ない。リスクをわざわざ冒す必要なんてどこにもないんですよ?

それに私が見た時は護衛達に押さえつけられていました。


「ノーズさん…今から言うこれは秘密にして欲しいんだ」

「いいだろう。別にお前たちの秘密を俺が知ったところで何も変わらん」

「じゃあ言うけど‥‥シズクは使徒なんだ。だからあの生ゴミと対等な立場にある」

「マジか!?あの弱そうな奴が使徒様だと?‥‥はぁ、そいつは驚いたぜ。だがそれなら尚更疑問だ。何でシズクはわざわざ捕まったんだよ。その場で使徒だって言えばいいじゃねぇか」

「それは分からない。シズクにも事情があるのかもね。僕達以外に使徒だと明かしたくない理由がね。でもそんな事は良いんだよ。今はシズクがあっちの国で使徒だと発覚した場合なんだ」


シズクさんがあっちで使徒だと分かった場合‥‥ッまさか!


「‥‥神闘権」

「そう。神の使徒同士が争った場合に行われる処置として和解をすると言うのもあるけど‥‥あの生ゴミが大人しく和解するとは思えない。それで次の処置‥‥つまり使徒同士の決闘が行われる可能性があるんだ」

「ですが…どうして?」

「さぁ?僕もそこまではわかないよ。でもこうでも考えないと納得いかないんだよ。僕の考えが合っていた場合だと一つ不味い事がある」

「それは?」

「彼の力はテイムだ。テイムモンスターを使役して戦わせる。でもテイムモンスターはここにいる」


ユリスは自分とエルゼやニアをさす。

確かにシズクさんはスライムをテイム出来る希少なテイマーです。

キングワイトまでもテイムしたと言うことは彼の受け皿は更に大きいと言う事‥‥しかし、その他の能力がその分劣ると言うことに直結する。スキルで魔力を使えばショートし、体を動かせば筋肉痛を引き起こす。


「そんなの絶望的じゃないですか!」

「そう実質彼の負けが確定する。だから遅くてもあと四日でシャーネリア王国に行かないといけない」

「ちょっと待て!今テイムモンスターって聞こえたがお前たちまさか…」

「あ…それも秘密と言うことで」

「お前たち‥‥ちと秘密が多くねぇか?てか魔物なのかよ、どっからどう見ても人間だよな?」


ノーズさんはニアを見ながらそう言う。見られているニアは関係ないと言わんばかりに食べ物をバクバクと食べている。変わりませんね…。

にしても、そんな絶望的な状況なのにわざとシズクさんは捕まったんですか?それで待っていてくださいなんて言えましたね!?なんて‥‥なんて無茶苦茶な人なんですか。自分を責めていた気持ちを棚に上げてそう思えてしまう。


「はぁ…早く助けに行きましょう」

「だ、ダメだ!こいつらは兎も角お前が行けば‥‥」

「行けばなんだと言うんですか?私は私の仲間を取り返しに行くだけです。私の過去の事などを引きずり、今いる仲間を救えないのは愚者と言います。私はそんな存在にはなりたくない!」


私は目の前の更に盛り付けられた物を口に運びながらそう言い切った。


読んで下さりありがとうございます。

少しでも良かったと思って下さればブクマ、評価を是非ともお願いしたいです。

次回もなるはやで投稿するのでお願いします。

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