依頼達成?
船が港から出て暫くすると止まった。どうやら目的のポイントまでついたようですね。
船が移動している間は風が強かったので中に避難していたのですが外に出て海を見てみるとその光景に絶句しました。
「何ですか…これ」
「これがエンジェラだ。ったく…駆除しても駆除しても減りやしねぇ」
船の下には大量の小さなクラゲが海を我が物であるかのように独占していた。一体が大きな種ではないようですがここまでの数となると面倒ですね。
「何度も駆除をしているのですか?」
「おうよ!お前ら以外の冒険者にも頼んでやってもらっているんだが全然数が減らねぇんだよ。次の日になればまた増えてやがる」
「なるほど…因みにこのエンジェラは何処から来るのでしょうか」
「知るかよ。んな事は俺らには分からねぇんだよ。だが決まった時期になればいつもこうなんだ」
決まった時期になれば此処に集まってくるのですか?
同じような習性を持つ生き物は沢山います。渡り鳥がその最たる例ではないですかね?
海水の温度が季節によって変わるため、他の場所からこちら側に移動してきたと考えるのが妥当ですが…減らないと言うのもおかしな話です。
「兎に角駆除を始めますね」
「よろしく頼む。俺達もやるが圧倒的に人手が足りてねぇんだ」
「みんな!網を持ってこの生き物を駆除しますよ」
「「「おぉ!」」」
『頑張れ~』
こうして私たちのエンジェラ駆除は始まったのですが数時間…掬っても掬っても透き通った海面が見えません。気持ちの悪い程エンジェラによってこの付近の海が埋め尽くされている。
「ねぇ…もう僕のスキルとか使っていい?いちいち掬っても意味ないんじゃないかな?」
「私も掬って駆除するよりも殺した方が早いと思うんですが‥‥そもそも掬う理由って何ですか?」
「それは…私も気になって‥‥いました。はぁ…疲れた」
大量のエンジェラが入った網を持つだけでも疲れるのです。そもそも私は肉体労働をあまり得意として来なかった。
「こいつらを殺しちまうと海が汚れちまうんだよ」
「汚れる?」
「こいつらは身の危険を感じると体中から毒液を出す。一体一体の毒は少量だがこんだけいるとその毒は他の魚達に影響が出ちまうんだ。しかもこいつらは魔法の耐性があるみてぇでな?余程の魔法じゃねぇと一発で仕留めきれねぇんだとよ。そうお偉いさんに言われたぜ?」
「なるほど…毒ですか」
チラッとニアを見る。
彼女の解毒効果は目を見張るものがあります。それにスライムは呼吸が要らない生き物。
ケリーとユリスが攻撃し、エンジェラから出てきた毒を解毒してもらうえば上手くいくのですが‥‥それは上手くいきすぎですね。流石にニア単体の力では一度に解毒できる毒の限度があります。
ではどう‥‥。
「なるほど!隔離すれば‥‥減らせばいいのですよ」
「ねぇ?スキルで殺してもいい?」
「ちょっと待ってくださいね。スキルを試しますので‥‥【捕獲】」
私は今海の一部を隔離しました。
私はそれを上に持っていくとキューブ型の水で出来た縦横10メール位の正方形が宙に浮く。
「な、なんでぇ!?お前、優秀な魔法使いだったんか?」
「‥‥まぁそんな所です。ユリス?試しにあのキューブに向けて軽く攻撃してみてください」
「分かった!生命魔法【リープ】」
ユリスが手をかざすと黒い球が手からキューブに放たれる。黒い球がキューブの中にすんなりと入り、暫くすると中で風船のように膨らみ弾けた。
どうやら外側からは問題なく攻撃できるようですね。
「終わったよ~」
「はい、ではニアにもお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「うん」
「あの中に入って水の中の毒を抜くことは出来ますか?」
「……やってみる」
「お願いします」
ニアはスライムの姿になると水のキューブの中へと入り魚のように泳ぎ始める。
暫く自由に泳ぎ回るとニアはキューブから勢いよく飛び出して私の元に帰って来た。
どうしたんでしょうか?何か問題が?
人間の姿に戻ったニアは服を着ながら私に報告をしてくる。
今の光景を見た船員たちが口をパクパクと開けて驚いていますが…後で説明しましょう。
「どうしました?」
「ご主人様、毒が無い」
「…本当ですか?」
「うん、隅々まで確認したけどなかった。あと少しかじってみたけど美味しくなかった」
「それは残念」
どうやらエンジェラは食用に適したクラゲではなかったみたいです。ニアも少し残念そうにしています。少し私も一つの経験として是非とも食べてみたいですね…ケリーの前では怒られそうなので止めておきますが後で一匹譲ってもらいましょう。
そんな話は一先ず置いておきましょう。
船員からの目も少し痛いので説明をするついでにユリスの魔法によって毒が出なかったことを伝えておきましょう。もしかすればこの状況を変える事が出来るかもしれません。
私は船長さんに私の持つ力…テイムについて話した。流石に【魔典】の事は話さずに水のキューブの事は魔法と言う事にしました。魔法って本当にいい言葉ですね。それだけで納得してもらえるなんて思いませんでしたけど‥‥この世界で便利な言葉なのは間違いないですね。次に何か言われたときは全部魔法って言うことにしましょう。
「そうかい‥‥あんた高貴な魔法使いってだけじゃなかったんだな‥‥」
そう言う船長の顔はどこか暗い。一体どうしたんでしょうか?
「どうしたんですか?」
「あ、いやなんでもねぇんだがよ…報酬の事だが」
なるほど…確か冒険者のランクによって報酬って変わるんでしたっけ?
それに出来高制でしたので高額な報酬を要求されると思ったのでしょう。
「別に高額な額を要求するつもりはないですよ。他の冒険者と同じ額で構いません」
「おぉ!そうかそうか!そいつは助かるってもんだ。今、俺達は漁に行くこともままならないから稼ぐ事が出来てねぇんだ」
「それで彼の魔法で毒が出なかった件なんですが…」
「海を汚さねぇなら何でも構わねぇ!だが全滅させるのはよしちゃくれねぇか?」
「分かりました。流石に全滅させる気はありませんよ」
「えッ?」
ユリスが声を出す。
…どうやら本人はこの全てのエンジェラを全て始末する予定だったみたいですね。確認しておいて良かったです。
種の絶滅は自然界のバランスを大きく崩すことを意味します。
どんなに小さな種でも、どんなに害悪な種でもそれが絶滅しただけで我々人間は普段の生活を送ることが出来なくなるかもしれない。そう言う事をよく知っているので私は最初から全てを駆除するつもりはありませんでした。
「ということですので手加減してくださいね?」
「結構難しいんだよ?この生命魔法って手加減のしようがないからさ~」
「では私が一部分を隔離します。それ以外のエンジェラを片付けてください」
「了解!それなら出来るね」
私は【捕獲】によって大体50メートル四方の正方形を空中に浮かばせる。
体の中から初めて喪失感が感じられた。これが魔力を使ったと言う事なんでしょうか?
規模が大きくなれば使う魔力も多くなると言うのは比例しているらしい。当たり前のことですが魔力と言う物質を知る上では大切な事なので再確認しなければならない。
「早くしてください。恐らくですが長くはこの状態を保つことは出来ないです」
どうやらスキルと言うのは発動すると魔力を消費し続けるらしい。一度発動してしまえば終わりではなく、その消費は僅かですが段々と多くなっている気もします。
「了解!じゃあサクッとやっちゃうよ!生命魔法【フブル】!」
ユリスが手をかざし何かを唱え始める。言語ともとらえる事が出来ない様な異様な音声が聞こえ始める。そしてその呪文のような言葉に呼応するように黒い霧が船の周りに集まり始める。
そして奇怪な音とは別に普段のユリスの声ではない別の誰かの声が聞こえ始める。
「現と冥界を隔てる門を今…開門する。我は案内人、そなたらの訪問を歓迎し、屍の国へと誘おう」
ユリスが手を前へと向けると黒い霧は波のように大量のエンジェラを巻き込んで進んで行く。
だが波が進んだ後には何もいない、あの大量に浮き沈みしていたエンジェラが一匹も姿が見えなくなった。
「我は案内人。次の訪問者の訪れを楽しみにしている。…ふぅ終わったよ~」
「随分と口調が変わっていましたね」
「恥ずかしいからやめてよね?あれは僕じゃないから」
「はぁ…」
「あ~!疑っているね?本当なんだよ?あの魔法を使うと僕じゃなくなるんだからね?」
「そうですか…まぁそれは後で聞くとしますね」
「ちょっと!?」
先ずは空中に浮かんでいるエンジェラを海に戻す。
スキルを解除したとたんに全身に倦怠感が襲ってくる。魔力を大量に消費した結果なのかそれとも急に魔力を消費したために起こった現象なのか。
「終わりました。少し早いですが港へと帰りましょうか」
「わ、わかったぜ。ちょっと待ちな。今すぐ帰るからよ」
私は少し魔力を使いすぎたようですね。
予定よりも早く終わったのであと一件ぐらいは依頼に行きたいですね。
少し船内で休ませてもらいましょう。
『ご主人?大丈夫?』
「えぇ…大丈夫ですよ。少し休めば問題‥‥ない」
私の体は言う事を聞かずにそのまま倒れてしまった。
「シズク!?」
「シズクさん?」
「ご主人様?」
消えゆく意識の中で皆が私を呼ぶ声が聞えましたがすみません…どうも声が出せそうもないですね。
少し…はしゃぎ過ぎましたね。
読んで下さりありがとうございます。
少しでも良ければブクマ、評価をしてくださると嬉しいです。
夏休暇が終わり、忙しかったですが少し落ち着いたので投稿が出来そうです。
また読みに来てくださると嬉しいです。
ではまた会いましょう(@^^)/




