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慕うモノ


突然の申し出でした。

まさか魔物側からテイムをして欲しいなどと言われるとは思いませんでしたね。


「テイムってそんなに簡単に出来る物なんですか?」

「僕がして欲しいから多分出来るんじゃないかな?テイムって召喚とは違って両方の承認が必要だから君が僕を受け入れてくれれば大丈夫だと思うよ?」

「そうですか…」


正直言ってテイムする気は無い。

ニアとエルゼだけで手一杯な感じもありますしね。ですが、この機会を逃す理由もないのですよね。

ユリスをテイムすればアンデットに関して分かる事もありますし、リリーと言うあの人形についても新しい発見があるかもしれない。ですが一つ問題があるとすれば…ケリーですかね?


「ダメかな?僕…自分で言うのもあれだけど結構強いよ?それに他の生き物なんかよりも長く生きているから色々と教えて上げれる事もあると思うけど」

「……分かりました。ですがテイムって解除とかできるんですか?」

「出来ないよ?と言うかする気なのかい?」


かなりショックを受けたような声を出し、ローブの中の黒い靄がゆらゆらと激しく動いている。


「違いますよ。ユリスは進化をするためにテイムを了承するんですよね?でしたら進化が完了すればテイムされていると言う状態は良くないのでは?と思っただけです」

「えっと…僕は別に進化の為だけでテイムを了承してるんじゃないよ」

「そうなのですか?…私が使徒であるからですか?」

「違うよ!ぼ、僕が君と友達になりたいと思ったからだよ!」


そう言ってユリスは後ろを向く。

友達…そうですかユリスは私と友達になりたかったのですね。


「そうですか…では今友達になりましょう」

「え?どうして」

「テイムで友達になるなんて契約してるみたいで嫌じゃないですか?ですから今から私達は友達で、私はその友達を助ける為にテイムする事にします」


屁理屈ではありますがそれが一番いい気がしました。

互いが納得する形であればどんな形でもそれが一番良いでしょう。


「と、友達?僕達はもう友達?」

「そうですよ?それにこの子達もそうですよ」

『ご主人の友達は私の友達だよ!』

「よろしく」


二人はユリスにそう声をかける。

友達と言うのは多い方が良いと言うわけではありませんが多いに越したことはないのですよね。

私は多くの友人に何度も助けられましたので実感しています。


『【キングワイト】をテイムしますか?』

「テイムします。これからよろしくお願いします」


ユリスの体に変化が現れる。黒い靄が人の形を形成していき、それはやがて本物の肉体へと変わる。

その姿は痩せている優男のような風貌で、肌は驚くほど白い。既に服を着ているようですが‥‥どういった仕組みなのでしょう?


「……なれた。僕が亜人になれた!?」

「おめでとうゴザイマスわ!お館様ノ悲願ガ達成サレて私も嬉しいですワ!」


リリーははしゃぐようにそう言う。

私も魔物の進化を間近で見ることが出来て少し感動しているが、その最中新しい疑問が生まれる。


「ニアの時はテイムしてからだいぶ経った後でしたが…どういう事でしょう?」

「それは条件の問題だと思うよ?僕は長く生きた経験と人間の姿になりたいと言う強い意志があった。そして僕は使徒である君の系譜を受け取ったから進化…と言うよりかは存在の昇華が起きたんだと思う。その魔物によっても何が必要かは異なるんじゃないかな?」


ユリスはそう推測しているが‥‥実際はどうなんでしょうか。それと系譜とは?


「系譜って‥‥どういう意味です?」

「神様の加護を持つ使徒は神様の部下みたいなものだからね。実際はもっと近しい存在のようだけど。で、そう言った存在は系譜と言ってその存在から一部の力を繋がりと言う意味で借りてくることが出来るんだよ?知らなかったのかい?」

「はい。初耳ですね」


系譜‥‥神様との繋がりですか。加護にはそんな力もあるのですね。知らないうちにとんでもないモノを貰っていたようです。私達は部屋をこの暗い地下室から出てケリーに説明するために一度戻った。リリーにも話を聞きたいがそれは後でも出来ますし、取り敢えずはケリーにこの状況を説明しなければなりません。


「この人形達は?」

「全部、この館を守ってくれている死霊族の子だよ。死霊族って言うのは僕達アンデットとは違ってどちらかというと精霊に近い存在なんだ」

「なるほど…ですがどうして人形の姿を?」

「それはきっとこの館の持ち主が人形が好きだったんじゃないかな?死霊族は大切にされていた物に宿る存在だからね」


まるで付喪神ですね。地球に来れば崇められますよ?

それにこの量は…凄いですね。ケリーが横になっているソファーの周りには沢山の人形がジッと佇んでいた。守ってくれていると分かっていてもこの光景は呪いの儀式のような雰囲気がある。


「リリーはその子たちをまとめているんだ。彼女が一番この中で強いからね」

「強さ?単純にそれは戦闘とかの能力ですか?」


人形の戦闘力など分かるはずもないですが…。


「違うよ。一番古くて、大切にされ続けてきた存在なんだよ。…彼女はね特別だったんだ」

「何か知っているのですか?」

「僕が此処に来た時に教えてくれたんだよ。最初はなかなかこの館の中に入れてくれなかったんだよ?出ていけ!って言われてさ」

「ヤ、やめてくだサイまシ。あの時ハ人間が荒らシニ来たのカと思ったダケでスの…まさか高位の霊魔が来ているとは知らナカッタでスノ」

「ははは…今では良い思い出だよ」


ケリーはどうやらまだ起きていないようです。

説明をする為にも起こす必要があるのですが…今起こしたら確実に同じことが起こりそうな気がします。


「リリーさん?少し人形たちを見えない場所に移動して貰えませんか?ケリーがまた倒れる可能性がありますので」

「そうですワネ?では私含め一度奥の部屋に移動シマスワ」

「ありがとうございます」

「僕は如何すればいい?」

「多分平気だからいてくれるとありがたいかな?」

「分かった」


私は寝ているケリーの体を揺すり起こそうとする。

すると目が覚めたのか勢い良く起き上がる。


「っは!し、シズクさん!ここは?」

「えっと屋敷の中です。途中で倒れられたので‥‥」

「そうですか。‥‥迷惑をかけてすいませんでした」


しゅんとしてしまっているケリー。幽霊が怖いのであれば言ってくださればよかったのですが、彼女にもプライドがあったのでしょう。しかし、急に倒れられると心配になります。


「いえいえ、大丈夫です。でも次からは遠慮せずにダメならダメと言ってください」

「分かりました。…所であの人形さんはいませんよね?」

「大丈夫ですよ。今は奥の部屋へ行って貰っています」

「そうですか。所で…そちらの男性は?」

「その事も含めてこの状況をお話しますね」


私はケリーにユリスが魔物である事。テイムをしたことなどを説明しました。

人形に囲まれていたことなどは話さない方が良さそうなので内緒にしておきましょう。


「彼が近くにいて不快感は覚えますか?」

「い、いえ。全くないです。本当にアンデットなんですよね?」

「そうだよ?僕はアンデットでもゾンビのような肉体を持つ魔物じゃなかったけどね。幽霊に近い魔物だったから腐敗臭は無いよ?だって僕臭くないでしょ?」


ほらほらと言って私に匂いをかがせようとするのはどうかと思いますが確かに匂いはありませんね。

ローブが少し匂うくらいでしょうか?ですがユリス本人は無臭ですね。因みにニアとエルゼも匂いはしません。ニアに関しては汗すらかきません。


「ユリスは陽の光は大丈夫なのでしょうか?」

「どうだろうね。試しに外に出てみようかな」


ユリスが外へと出るドアを開けると光が差し込む。部屋の中はケリーの魔法のお陰で明るかったのですがそれでも外の光の方が明るいので目が一瞬眩む。


「…少しキツイかも」

「そうですか」

「ちょっと待ってて」


ユリスは二階へと続く階段を上がり、何処かに行ってしまう。

何やら妙案があるようですが…。


少し待っているとバタバタと足音を立てながらユリスは戻ってきました。

その手には何やら黒いモノがあり、それを私たちの前で広げて見せる。


「どう?これなら日差しの中でも外に出れるよ?」

「それは傘ですね」

「そう!日傘で防げば僕でも外に出ることが出来る!これでシズクたちと旅に行けるよ」


そう子供のように傘をクルクル回しながら言う。


「お館様は行ってシマワレルのですネ」


いつの間にいたのかリリーが私達の背の後ろに立っていた。後ろに立つのが好きなのかな?


「そうだね。長い間お世話になったよ。この館には認識疎外の魔法をかけておくから人間が入る事は無いし、荒らされる心配もない。僕がいなくても大丈夫だよ」

「少し寂しクナリまスワね」

「大丈夫ですよ。この街にはまた来ますのでその時にでも寄ります」

「そうデスか。その時ハ後ろにオラレル方も慣れてイルとよろしいデスワね」


私の後ろに隠れているケリーを指さしながらそうリリーは言った。

人形であるリリーの顔は変わらないがその声にはニヤニヤしながらいたずらを考えている子供のような無邪気さが表れていました。


「シズクさん?もうポーレリア行きの馬車がでる頃です。急ぎましょう…」


慌てたようにケリーはそう私を急かす。

この様子でリリーさんにお話を聞くのは無理そうですね。…今回は諦めてまた今度にしましょう。


「残念ですが、私たちはもう行きますね?馬車の時間も過ぎてしまいますので」

「ハイ、ではお館様、皆様も行ってらっしゃイマセ」

「うん、行って来るよ!」


私たちは一人、新しい仲間を得てこの奇妙な館から馬車に乗るために歩き出した。

最後に後ろを向いて大量の人形が窓から見ていたのは流石の私でもビックリしましたね。


「あれはあの子たちならではのお見送りだよ」

「慕われていたんですね」

「そうかな?…そうだと良いね」


黒い傘をクルクルと回しながらそうユリスは答える。


読んでくださりありがとうございます。

良ければ是非ブクマ、評価をお願いします。


ではまた会いましょう(@^^)/

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