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強き憧れ


屋敷の中は妙にひんやりとしており薄暗い。開けたドアから差し込む光で周りが少し見えるので何とかなっていますが…何かライトとなるモノが必要かもしれません。


「ケリー?魔法で光って出せたりしますか?」

「だ、出せます。そうですよ…明るくすれば怖くないですよね!【ライト】」


光を発する小さな球が現れる。それは光が一切なかった屋敷の中を照らす。

一気に明るくなった屋敷の中は人が出入りしていないのか思っていたよりも綺麗な状態でした。

外見の様子を見ればもう少し荒れていても可笑しくはないと思ったのですが…こんな場所にあったからでしょうか?あまり荒らされた跡が無いですね。


「これで怖くありませんね!」

「ホントかしラ?」

「えぇ本当で…す」


誰もいるはずの無い後ろから声が聞こえる。その声はあまりに無機質な声で抑揚などは一切感じない。私は思わず後ろを振り返りますがそこには誰もいませんでした。

ですがその代わりに見慣れない人形がそこにいた。


「人形ですか?西洋人形のような感じですね」

「ネェ?レディに勝手に触るのは失礼でなくて?」

「ッ!?」

「何ヨ?人形が喋るのがそんなにオカシイ事かしラ?」


びっくりして人形を宙に放り投げ、後ずさりをしてしまう。

地球で起こればそれは怪奇現象ですね。喋る人形など有り触れたお話ではありますが怖いモノは怖い。人形で一番有名なのはやはりメリーさんでしょうか?私でも知っている程の有名人形ですね。


「もう!失礼しちゃうワ!久しぶりに普通のお客様が来たカラ来て見れば‥‥」

「すみません」

「アンタじゃないわよ!あっちよ!あっち!」


人形は指を頭を抱えて震えているケリーに向ける。

彼女は呪文のようにブツブツと何かをずっと呟いている。ニアが肩を叩いても反応せず、壊れたラジオのようにずっとそれを言い続けている。


「ケリー?」

「あれは違う。きっと幽霊なんかじゃない。見間違い‥‥そう見間違いです。私は何も見てませんし、何も知りません。えぇそうですともここには何もいないんです」

「ケリー!」

「っは!?‥‥シズクさん、お人形さんが喋った気がしたんですが…気のせいですよね?」


縋るような眼を私に向ける。どうしても信じたくないらしい。ですが私の目の前にいた人形はいつの間にかケリーの前まで行き、とどめとなる様な事をする。


「気のせいジャないわヨ?ほら!」

「……はぅ!」


ケリーは電池が切れたように倒れてしまった。

どうやら気絶してしまったようです。彼女が出した魔法も消えてしまうと思ったのですが‥‥消えることなくその場で光り続けています。


「本当ニ面白‥‥いえ失礼ナ客ですわネ?私の顔を見て失神ナンテ」

「彼女は霊的な物が苦手なんですよ。許してください」

「そうなノ?それは良い事を知ったワ。でも少しやりすぎたわネ?あの子を適当な場所に横にしてあげてくださル?」

「そうですね。では目の前のソファーにでも横にさせときます」


埃を手で払い、リュックからタオルを何枚か出してソファーに敷く。

そのまま横にするのには少し汚いですからね。そしてその上にケリーを運び、横にさせる。

思ったよりもずっと軽かったのは驚きました。


「それよりモ貴方…何のヨウでここに来たノかしラ?」

「実は‥‥」


私は目の前の人形にエルゼと言うスライムを探しに来たと言った。

目の綺麗な翡翠色をしたガラス玉がクリクリと動きながら私の話を聞いてくれる。

時々相槌を打つなど何とも人間らしい事もする。


「なるほど…もしかしたら地下にイルかも」

「地下ですか?」

「そうヨ?お館様が研究してル。でその研究材料にもしかしたラそのスライムの子がいるかモしれないわネ?」

「案内して貰っても?」

「いいけド‥‥お館様の邪魔をしたら呪い殺すワヨ?」


首が傾きながらそう私に言ってくる。はは…笑えない冗談ですね。


「邪魔はしませんよ。ただ少しだけお話をするだけです」

「……珍しいワネ。さっきは失礼なんて言ったケド普通ハ私を見ればああなるのヨ?」

「自分よりも怖がっている人がいたら怖くなくなるんですよね」

「そう‥‥少しだけ残念だワ」


人形の声には抑揚が無く、表情も何一つ変わらない。


「驚かせることが好きなのですか?」

「そうね。私達ノようナ物に憑いた死霊族ハそれが生き甲斐でもあるワ。まぁ生者を憎んで呪い殺す様な奴もいますケド‥‥あんなの悪趣味ですワ。淑女が行う事ではありませんノ」


死霊族…新しいタイプの魔物…ではありませんね?【魔典】が反応していません。

ではエルフなどと同じような亜人族の仲間でしょうか。気になりますね…。


「そうですか…では少しお願いがあるのですけどそのお館様と話をして時間があれば幾つか質問などしていいでしょうか?その時は周りにいる方たちもご一緒に」

「アラ、気づいていたノかしら?」

「いえ、適当に言ってみただけですよ」

「面白いワネ。良いわヨ?それくらいの願いを叶えてコソ淑女ですワ!」


ケリーをニアに任せて、私は人形と一緒にお館様と言われる存在がいる部屋へと向かう。

人形の名前はリリーと言うらしいです。何でも気がついたらこの人形の姿だったのだとか。

恨みや妬みなどの思いは無く、別に呪いなども力も無いらしいですね。

先ほどのはただの脅し文句らしいです。


「確かに動く人形が言えば説得力はあるでしょうね」

「ふふ…着いたわ。この扉の先がお館様のお部屋ですワ。私は入れませんノ‥‥」

「ありがとうございます」

「人形に頭を下げるなんて…まぁ生きてたラまた会いましょウ?」


そう言ってリリーは霞のように闇の中に消えてしまった。

ドアを開けようとすると勝手に扉が開く。


「入っていいのでしょうか?」


私が恐る恐る中に入るとそこには沢山の本や殴り書きされた文章が書かれている紙が散らかっていた。部屋の中は薬品の匂いでしょうか?独特の嗅いだ事の無い匂いが充満している。


私が奥に進むとソレはいた。

目にした途端にその存在を脳が否定するかのように頭痛とめまいがする。

後ろ姿は人のようですが明らかにその雰囲気は別。それに近づくたびに凍えるような寒さに見舞われる。これ以上近づいたら死んでしまいそうです。


「……来ないで」

「すみません。リリーと言う人形に案内されて来ました」

「…」


その名前を出すと少し冷気が和らいだ気がした。


「リリーが?」

「えぇ…」

「君…何の用で此処に来たの?」

「スライムを…赤いスライムを探しに来ました。エルゼと言う子で私の大切な仲間なんですよ」


やっとの思いで言葉を一つ一つ口に出す。得体の知れない緊張が体を蝕み、思った通りに言葉が出ない。私が言い終わると少し考えた様な空白の間を置いてその存在は短く返事を返す。


「知らない。僕の所には来てない」

「そんな…でも確かに反応は此処にあったのですが…」

「……あ、もしかしたら今日来るのがそうなのかも」

「来る?」

「そう、僕は外に出れないから人間に研究の材料を取ってきてもらう。お金はあるから‥‥」


悲しそうな声でそう喋る。


「君は怖くないの?僕の姿を見たら普通は気絶するよ」

「確かに辛いですね。今も耳鳴りや頭痛がしますが‥‥エルゼを助けるまでは倒れられないのです。それよりもこんな場所で何の研究をしているのですか?」

「……知りたい?」

「いえ、話したくないのでしたら良いですよ。単なる興味ですし」


こんな場所での研究‥‥それに確実に人ではない何者かの研究なんて興味しかないですね。

好奇心は猫をも殺すと言いますが知りたいことは知りたいじゃないですか。


「僕はね…人間じゃないんだ。でも人間に凄く憧れている」

「憧れですか?」

「そう。輝かしい光が降り注ぐ外の世界を歩き、暖かな陽を肌で感じ、親しき友人や恋人と過ごす時間はどれほどの幸福を感じるだろう。僕がこの世界に生まれて数百年‥‥ある人間と出会った。その子は僕にとても優しくしてくれて友人とまで言ってくれた」


言葉から感じられるその感情は悲しさのみだった。

この存在は飢えているのだ。人間の持つ暖かさに‥‥。


「でも人間の持つ時は余りにも短すぎる。僕が彼女を守れるくらいに強くなった時、彼女はもう死んでいた‥その時に思ったんだよ。どうして僕は人間に生まれなかったのかって」


ずっと後ろ姿だったソレがゆっくりとこちらを向く。ローブをはおり、どんな姿をしているんだと生唾を飲み、ジッと見ていたが‥‥そのローブを羽織る存在は何処にもいなかった。

‥‥あるのは黒い靄の塊であり、そこには爛れた肉を持つゾンビや骸骨の姿も無かった。

どうやって声を出している?ローブを着れると言うことは実態があるのでしょうか?

場違いな考えが浮かびますがそんな事よりも‥‥。


『【キングワイト】のページが更新されました』

【魔典】が反応した‥‥つまり目の前にいるのは魔物ですね。


「貴方は…魔物ですね?」

「そうだよ?僕の名前はユリス。死んだ友人に付けてもらった素晴らしい名前なんだ。所で君は知っているかい?魔物は亜人へと進化する事があるんだ」

「亜人に進化ですか?」


いきなり振られた話にふとニアの顔が頭に浮かぶ。

彼女は元はスライムでしたが何かをきっかけにして人間の姿を得た。


「そう。亜人とは魔物の力を一部取り入れた種族ともいえるんだ。獣人族なら獣魔の力を。エルフやリリーのような死霊族は霊魔の力を。魔族はその魔物の血が色濃く出ている種族なんだよね」

「なるほど…では人間は?」

「そう。そこが問題なんだよ‥‥人間は神を模して創られた存在なんだ。だからどんな高位な魔物でも完全に人間になる事は出来ない。例えどんなことをしても無理なんだ。だから僕はせめて亜人になりたいと思っていた。その為に魔物進化について調べる必要があったんだ。魔物には色んな条件が揃って初めて進化する」


魔物の進化条件‥‥気になる話ですね。

ニアがそうでしたが何故そうなったのか本人すらも分かっていない。つまり本能に近い何かによって進化が行われていると考えられます。その条件を調べるのには多くのサンプルが必要。

ですのでユリウスはサンプルを外から取ってきてもらったのですか。


「その進化条件を調べるために多くの魔物のサンプルが必要だったんだ」

「なるほど…」

「君の話を聞かせて欲しいな?君はどうやら普通の人間とは違うみたいだし‥‥」

「ユリスと呼んでも?」

「いいよ」

「ではユリスは外に出れないのですか?」

「僕が外で行動できるとすればそれは夜だね。どうもこの姿で陽を浴びると良くないんだ。それに君は知っているだろうけど僕を見ただけで普通は嫌悪感によって普通は倒れるんだ。僕はアンデットと呼ばれる種族の魔物だからね」

「なるほど…」

「それと君が言っていたスライムは返すよ。ごめんね?もう少しで来るから」

「本当ですか?ありがとうございます」


私は頭を下げる。すんなりと返してくれるとは思っていなかったので嬉しい誤算だった。


「‥‥ユリスは使徒と言う存在を知っていますか?」

「使徒‥‥あぁ神々の加護を持った存在の事?進化の壁を越えた存在の中にもいたから知っている」

「進化の壁?」

「これ以上は進化出来ないって意味さ。僕は強くなるために進化をし続けてこの姿になった。前はもう少し人の形があったんだけど‥‥もう跡形もないね。因みに僕はまだ壁を越えていない」

「その壁を超えることは?」

「出来るみたいだけどその条件が分からないんだ。歴史上で進化の壁を越えた存在は何人かいる。人間にもいるようだけど‥‥その条件は分からない。共通点が見つからないんだ」


なるほど…ではユリスはその壁を超えないと亜人にはなれないと言うわけですか。


「で?その使徒がどうかしたのかい?」

「いえ、ただこの世の中で嫌われていると聞いたので」

「う~ん…どうなんだろうね?外の事はよくわからないけど昔は崇められていた存在だったし、人々を引っ張て行く存在だったんだ。今はどうかわからないけどね」

「そうですか…ありがとうございます」


現代の情報は分かりませんが少なくとも昔は恨まれるような存在ではなかったようですね。

それがわかっただけでも良かったです。


椅子に座って話していると途中でドアが叩かれる音がする。


「リリーです。…少し問題が起きましたワ」

「どうしたんだい?」

「えっと…あぁ!勝手ニ開けないでくださいマし!」

「ご主人様、エルゼ助けた!」

『ご主人!ご主人~!』


ドアを開けたニアが抱えていたのは赤いスライムだった。

ニアの腕の中から私の胸に向かって跳ねて来る。

優しく抱きかかえ、間近でエルゼの姿を見るとその色はだいぶ黒く濁っている事が理解できた。

取り敢えずは血を吸ってもらわないと‥‥。


「エルゼ?取り敢えず血を吸ってください」

『分かった!頂いたきまーす』


エルゼはいつもの定位置に移動し、私の血を吸う。

そう言えばケリーの姿が見えないのですけど‥‥どうしたんでしょうか?


「ケリーは?」

「任せてきた!」

「えっと‥誰にですか?」

「えっとお人形さん達?」

「‥‥」


首を傾げながらニアはそう言った。

ケリーがもう一度失神する光景が目に浮かびますね‥‥後で謝りましょう。


「そ、その子は?」


驚いた声でそうユリスは言う。


「えっとツイニアです。いつもはニアと呼んでいます。こう見えて彼女は、一応スライムです」

「スライム!?確かに人間の魔力ではないけど‥‥じゃあ本当に魔物が亜人に?」

「そうなりますね。ですが私に条件は分かりませんよ?」

「そうか…君、どうして人間の姿になったのかい?」


ユリスはニアにそう聞いた。突然、話しかけられたニアは私を見る。私が答えてあげてと言うとニアは少し考えた様に唸る。すると思いついたように喋りだした。


「ご主人様」

「私?」

「そう、ご主人様の事を考えていたらこうなってた」

「君とこの子はどういう関係何だい?」

「えっと私がテイムしたスライムになります」

「そう、ご主人様の初めてのスライム」


胸を張ってそう答える。ニアにとっては一番最初と言うのが大切なのでしょう。

エルゼに対してもそれでマウントを取っていますし…。


「テイム…なるほど。魔物と人間の間に絆があればそれが条件となる可能性は低くないでもそれでは弱すぎる…そこまで存在が昇華する事なんてある?」

「もしかしたらですが…私が原因かもしれません」

「君が?」

「…私が使徒であることも原因かと」

「それだ!それだよ!神の加護にはその力を増幅させる。恐らく加護によってニアは系譜を貰っているはずだし…そうか、それなら納得がいくよ」


私はエルゼを撫でながら喜んでいるユリスを眺める。

何故かはわかりませんが先程まであった耳鳴りや頭痛は綺麗さっぱり消えていた。


「君!えっと…」

「シズクと言います。遅れて申し訳ありません」

「シズク!僕をテイムしてみる気はない!?」

「は?」


読んでくださりありがとうございます。

昨日は投稿出来なくてすいませんでした。ですので今日は少しというかかなり長めの回にしてみました。

どれくらいの分量が良いのかよくわかりませんが長い方が良かったりするのでしょうか?

一応は3千字程度に収めようとは思っているのですが…今回のように書こうと思った事を書くとこうなります。良ければ感想をくださると今後の参考にもなりますのでよろしくお願いします。

物語に関する感想でもいいですが…叩きすぎると粉々になりますのでご容赦ください。


プルプル…

おや?知らない番号から電話が来たようです。


『私…さん、今貴方の…いるの』

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