迷子?
街を歩いているとケリーの言う通り、商いが盛んに行われていました。左右のどちらにもお店がズラッと並んでおり、様々な品物が売られている。
以前、私がウォーテルで出会った商人のような姿をした人たちが沢山いますね。どうやら、ケリーによると、私たちが今歩いている通りはどうも商人たちの売買が一番盛んな通りのようです。
「この街には沢山の商人が来ます。ですので珍しい物も売っているのですよ」
「美味しいモノ…売ってる?」
「そうですね…食べ物は売っていないかもしれませんね。材料は売ってるかもしれませんが…」
「残念…」
ニアはシュンとしたように大人しくなる。
どうやら人間の姿になって食べ物の味に興味が出たらしく、美味しいモノを食べたいらしいです。
何だか子供の食べ盛りの気分ですが…前に子供みたいだと少し行ってしまったら機嫌が悪くなったので心の中で止めておきましょう。
「此処はどうやら食べ物は売っていないようです。別の通りを歩いて探しましょう。奥に行けばあるかもしれませんし」
「そうですね。では行きましょうか」
私が歩きながら目を泳がしていると一瞬ですが白い何かが人の間を通った気がした。
小さいネズミ?それとも気のせいでしょうか?何かがいた気がするのですが見間違いですかね。
私は特に気にすることなく、その通りを抜けて別の場所へと行く。
そして私たちは無事に一軒の食べ物屋さんに入る事が出来た。お昼前でどのお店も四人が入れる席が空いていなくて探すのに苦労しましたが何とか見つけられましたね。そのお店に入ると何故か懐かしい匂いがする。地球で嗅いでいたあの匂い。
「カレーの匂いがしますね」
「カレーですか?」
「はい、香料を使った少し辛い料理ですね。もしかしてここはそう言った料理を出すお店なのでしょうか?」
取り敢えずお店の人を呼んで注文をしなければならない。
メニューを読んでみますが何処にもカレーと言う文字は何処にもありません。
ですがこの匂いは紛れもなくカレーの匂い。世界が違えば名前も違うなど予想は出来ますが‥‥これでは何を頼めばいいのか分からないですね。
「すみません!」
「は~い?なんでしょうかお客様」
テーブルを片付けていた店員が私の声に反応してくれた。
「この店のお勧めは何ですか?」
「そうですね‥‥やはりこのスペイミーは食べといた方が良いですよ?少し辛いですがこの大陸ではこのお店以外で食べられる場所は殆ど無いので」
「スペイミーですか?ではそれをお願いします。他は如何します?」
「私もそれで大丈夫です」
「ご主人様、私も!」
「ではスペイミーを三つお願いできますか?」
「はい!かしこまりました。出来上がるまで暫くお待ちください」
店員さんは奥にある扉に入り、どうやら注文を知らせに行ったようです。出来上がるまでどれくらいかかるのかは分かりませんが兎に角気になるのは味です。
「シズクさんは食べた事があるのですか?」
「いえ、そう言ったわけではありません。ただ似たような料理が私の故郷にもあったので気になっただけですよ。匂いも似ていたので‥‥」
「そうなんですか」
店内を見回していると料理が運ばれてきた。
その料理は名前以外は本当にカレーでした。少し気になるのはライスではなく一緒になって来たのがパンだと言う事ですかね。パンに付けて食べるらしく、パンはお変わり自由とのことです。良心的なお店で良かったです。
「食べましょうか?」
「そうですね」
「では頂きます」
「「頂きます」」
一口、恐る恐る食べてみると少し辛いですがやはりその味は地球で食べていたカレーの味とそっくりでした。こんな事はあり得るのでしょうか?違う世界で名前は違えど同じような料理が誕生する。そんな奇跡的な事が私の目の前に今起きている。
「ご主人様、これ辛い‥‥」
「ニア?パンと一緒に食べましょうね?それ単体で食べるのではありませんよ?‥‥あぁ口が汚れていますよ。っと」
「っん‥‥ありがとう。これに付ける?」
「そうです。こうやってスペイミーをパンにかけて食べると美味しいですよ」
「わかった」
パンはどうやらスペイミーの辛さに合わせて少し甘く作られているようですね。日本で食べていたカレーよりも少し辛いような気がしますね。ですが、それが逆にパンの甘みに合いますね。スペイミーの辛さとパンの甘さが相まってそれはとても美味しいモノになっていた。しかし、こうなってきますとお米をかけて食べたいですね。日本人の主食は米です。私はパンよりも米派でしたので朝食にはおにぎりやお茶漬けを食べていましたね。カレーも簡単に作れて美味しい料理でしたので好きでした。よく妻は焦がしていましたが‥‥それも今は懐かしい思い出ですね。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
「少し辛かったですが美味しかったですね。ごちそうさまでした」
異世界に来て地球での思い出に浸れるとは思いもしませんでしたが…この店に来て良かったです。
また次にここを訪れた際には寄りましょうかね?それくらい私はこの店を気に入りました。
私たちはお金を払い、店を出る。料金は四人で銅貨20枚でした。一人銅貨五枚ですのでかなり安かったですね。
「次はポーレリアです。えっと…馬車はあっちですね」
「では行きましょうか。…あれ?」
「どうしたんですか?」
「い、いません。この鞄の中に入っていたエルゼが何処にもいないんです!」
「えッ!?」
周りを見てもエルゼの姿も見えませんし、エルゼの声も聞こえません。
どうやらエルゼは迷子になってしまったようです。
「ニア?エルゼの場所は分かりますか?」
「ううん、わからない。エルゼはこの辺りにはいないかも」
「……不味いですね。この街はウォーテルよりも大きいですので探すとなるとかなり大変ですよ?」
「【サーチ】エルゼ」
スキルを発動させますがマークは出てきません。本当にこの辺りにはいないのでしょう。
少し大変ですが逐一スキルを発動させて探すしかありませんね。この街に置いて行くことなど出来るわけがない。
「ですが…何時の間に消えてしまったのでしょうか?」
「何処かで落ちたのでしょうか?」
「分かりません。気がついたらいなかったので‥‥取り敢えず来た道を帰りながら探しましょう」
「はい」
私たちは来た道を帰りながらスキルを使い、エルゼを探し始めた。
先ほど料理を頂いた店の方に聞いても知らないと言われてしまい、来た道を帰りながらスキルを使っても反応がありません。ニアもどうやらエルゼの事を探してくれているようですが見つかりません。
街の人に聞いてもそんなのは知らないと言われてしまいます。
「何処に行ったのですか?エルゼ‥‥」
そう膝に手を当てて愚痴る。自分のいい加減さが腹立たしい故にだろう。
『西へ‥‥さすれば‥‥届く』
頭に声が響く‥‥前にも聞いたことのある声。以前の山賊がいた洞窟を掃除した後に聞こえた声。
『……迷い子、西へ誘われ』
そこで声は消える。西‥‥この街の西に行けば見つかるのですかね?
頼れるものには全部頼るのが私の流儀です。今私がいるのは丁度中央の大通りです。此処から西と言いますと‥‥左ですか。
「こっちに行きましょう」
「何か分かったのですか?」
「いえ、ですが‥‥何かがあると思います」
不思議な声に導かれて私は街の西へと向かう。
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「へへッ!こいつは珍しいスライムじゃねぇですかい?」
「詳しい事は俺には分からねぇ。だがあいつに渡せば金にはなるだろうな。少なくともレアだ」
『ここどこ?‥‥ご主人?‥‥ニア?‥‥ケリー?』
エルゼが目を覚ますとそこは小さな檻の中だった。ガタガタと揺れていることからここが馬車の荷台の中だと理解できる。
『どうして?ご主人!ご主人!』
何度も叫ぶがいつもその声に反応してくれる優しいご主人の声は帰ってこない。帰って来るのは無情な静寂のみだった。
『兎に角ここから出ないと‥‥この檻壊せるかな?』
檻に向かって体当たりをして見るが檻はビクともしない。その後も何度も何度も檻へとぶつかるが檻が壊れる様子はない。
「っチ!起きやがった。おい!静かにさせろ」
「はいはい‥‥オラよッ!」
檻の中に向けて男は刃物を突き刺す。
エルゼの体は切られるがスライムなのでコアに攻撃が届かない限り問題ない‥‥はずだった。
『あ、あれ?動けない?どうして?』
「おぉ!?すげぇなこの毒。このスライム直ぐに大人しくなったぜ?」
「だろ?特注した麻痺毒だ。調合してもらうのに金がかかったがそれでどんな魔物も大人しくなるから払った甲斐がるってもんだぜ。他の魔物も全部あいつに売れば俺達は大金持ちだぜ?」
「「ヒャハハハ!!」」
暗い荷台の中にいる二人組の男たちの笑い声が響く。
『ダメ‥‥もう動かせないよ。‥‥ご主人、たすけ‥‥て』
エルゼの体に麻痺毒が周り、ピクリとも動けなくなってしまった。ただ目の前には何故がその場には似合わない白い動物がいた。男たちは気づいていないのかその動物が見えていないような感じで喋っている。白い動物はエルゼの事をチラッと見るとその姿はまるで霧のように消えてしまった。
読んでくださりありがとうございます。
少しでもよければブクマ、評価をお願いします。
今日はもう一話投稿するかもしれません。ですのでそちらも読んで下さればありがたいです。
ブクマ、評価をしてくださった方には感謝を申し上げます。
ではまた会いましょう(@^^)/




