旅は道連れ世は情け?
「そうですね…旅をするにあたり大きなカバンは必要ですよね。この小さなモノではどう見ても入らないですし…街の中で買えますかね?」
こんなに街の中にいるのに依然として街で何が売られているのかを把握していないのは不味いですね。同じような事を繰り返す日々でしたから街を散策するということもあまりしてこなかったですね。
「ケリーさんにでも聞いてみましょうか。あの方なら知っているはずでしょう」
と言うことで私は朝食を済ませ、宿からギルドへと向かう。
今日は少し夜更かしをしてしまいましたので起きるのが遅くなったのでもう宿の食堂には冒険者の方はいませんでした。
私はギルドでケリーさんに街で大きな鞄を売っている場所を聞くと少し焦ったように聞き返してきました。
「こ、この街を出て行かれるのですか!?」
「え?あ、はいそうですけど」
「いつですか?何処にいくんです!?」
ギルド内に響くような大きな声でそう叫ぶ。
「えっと明日には馬車に乗って南の国に行こうかと‥‥どうされたのですか?」
「きいてない‥‥」
「はい?」
「何でもありません!鞄なら雑貨屋にでも売っているでしょう。それよりも私は忙しいのでこれで」
そう言ってケリーさんは飛び出すかのように二階へと上がって行ってしまった。
どうやら忙しかったようですね。仕事の邪魔をするのは良くないですので取り敢えずはその雑貨屋に行ってみますか。
私はギルドを出て雑貨屋に行こうとした時にある冒険者に止められる。
その冒険者は以前の山賊の件以降で仲良くなったよくお酒を飲んでいるウェンさんでした。
「あんさん…この街を去るんかい?」
「そうですね。元々私は旅人ですので‥‥この街は凄く居心地が良かったので少し長居をしてしまいました」
「そうかい。少し寂しくなんなぁ」
「また帰ってきますよ。森のスライム達の観察もまだ全部は出来ていませんしね。ですがそれよりも先にやりたいことが出来たのです」
「やりたい事かい?」
「はい、私はまだまだ物を知らなすぎるのですよ。冒険者の事然り、国や大陸の事然り‥‥この世界の事について知らなすぎるのです」
「ははは!そいつはぁデケェ話になるな!そうかそうか…じゃあ俺が生きてる間にでもまた顔を見せてくれ。そんで土産話を沢山聞かせてくれや」
くしゃくしゃな顔をした笑顔でそう私に言ってくれる。こう言った所もウェンさんがこの街で慕われている要因なのでしょう。一見はお酒を飲んでいる飲んだくれただらしない人ですが…何処か憎めないところがると。そうケリーさんも言ってましたね。
「そうですね。その時は一杯でも奢りますよ」
「それはいいな。最近、飲みすぎで嫁に小遣い減らされちまってな。おめぇのおかげで稼げているけどそろそろ体も限界だし引退を考えてんだ。それに子供の面倒も見ねぇといけねぇしな」
「頑張ってください。ですがお酒は程々にしてくださいね」
「分かってるよ。さんざん嫁に言われたさ」
「では私はこれで」
そう言って私はギルドを出て雑貨屋へと向かう。
この街はそこまで大きいわけではない。だが何もない程小さい街でもないのですよね。
武器屋や防具を売っている店はありますし、食材を売っている場所も食べ物を提供してくれる場所も幾つかあります。服を扱っている店もあるので生活するには事欠かないぐらい不便はないのですよね。ただ娯楽が無いと言うのが栄えている街と違う点でしょうか?
雑貨屋は何処にあるのでしょうか?いい機会ですし街を探索しながら探してみましょうか。
人に聞いて回るのもいいのですがあまり急いでも意味はないですね。
「ニア、エルゼ?何か欲しいモノはありますか?」
「少しお腹空いた」
『ご主人、血を吸っていい?』
どうやら二人共お腹が空いているようですね。朝食は食べたのですが足りなかったのかな。
そう言えばですがニアは完全に人間と同じものを食べれる事が分かりました。以前食べていた植物の根っこも食べれるのですがあまり食べる気はないようです。
人間の姿に変化して好みが変わったようですね。人間も成長するにあたって食べれるモノが食べれなくなったり、その逆もありますので普通の事なのでしょう。
それと少し誤解していましたがニアは人間になったのではないと言う事ですね。
あくまでも魔物であるため、身体を人間の姿から元もスライムボディにすることも出来るそうですが…本人は嫌がるのでやっていません。それと触手ですが人間の姿ですと指や腕がその役割をしているようです。触手のように腕が伸びたり、縮んだりすることが出来るようですので人間の姿ですがスライムの特性は消えていないようですね。
エルゼは相変わらず私の血を吸っていますね。少し変わった事と言えばその体を固く出来るようになったという点ですかね。【魔典】でエルゼのページが更新されたと思えばスキルが増えていました。
【硬質化】というスキルらしいですね。血が固まると言う点で言えば納得は出来ますが…何故このタイミングなのかは謎です。
私は広場で屋台のように出ているお店で美味しそうな食べ物を人数分買う。
肉串のようなもので焼かれた肉からは肉汁が滴っている。
ただ焼いているだけですがとても美味しそうですね。
「はい、どうぞ」
「ご主人様のは?」
「私は大丈夫ですよ」
「はい、あ~ん?」
「…何処でそんなのを覚えたのですか?」
「人間がやってたからそれを覚えた。やられてた方が嬉しそうだったからご主人様も喜ぶかなって」
『くぅ…人間の姿じゃない自分が妬ましい!ズルい!ニアだけズルいぃ!』
「ポンコツも人間の姿になればいい。…ご主人様、嫌?」
嫌ではないですが…周りの視線が少し気になる。ぱっと見では、親子に見えるのでしょうか?微笑ましい光景として映っているようです。少し恥ずかしいですが、頂きましょうか。
「では一つだけ頂きますね。…美味しいですね?肉汁が口の中で嚙むたびに出てきますがそれが全くくどくないです。食べやすいですね。ありがとう、ニア」
一つだけ食べ、感想を言うと満足したのかニアは残った肉を食べ始める。
エルゼは鞄の中から私の肩に乗り血を吸う。いつもより多く吸っているのは気のせいだと思います。
少し可哀そうだと思いますがエルゼは固形の物を食べれないんですよね…。
ベンチに座り、食べ終わった後にまた歩き出して雑貨屋を探す。
すると随分と人が集まっている場所が目に留まる。
「あれは何でしょう」
「ご主人様、行ってみる?」
「そうですね。少し気になるので行ってみましょうか」
人だかりができている場所に向かうとそこには一人の商人がいました。
どうやら商人が物を売っているようですね。こういった方法で売る方法もあるのですね。
商人ならば大きな鞄を売っているかもしれません。少し聞いてみましょうか。
私は人をかき分けて商人の前に行き、鞄を売っていないかと尋ねる。
「すみません…旅で使えるような大きな鞄は無いでしょうか?」
「旅?お客さん、旅人かい?」
「そうです。自分で持っていた鞄が途中で壊れてしまって…それに代わるような大きな鞄が必要なんですよ」
「ふむ…大きな鞄は無いけど…魔法のバックならある」
「魔法のバックですか?」
「そうとも!なんでも入る魔法のバックがあるんだが…どうだい?」
何でも入る鞄ですか…異世界にならばあるのかもしれません。
地球でならば噓はったりだと子供でも分かるのですが…どうなんでしょうか。
「その顔は疑っているね?これは王都の方にあるダンジョンで見つかった鞄だよ。…少し手を中に入れてみな」
渡されたのは古い革のリュックサックだった。見た感じは普通の物なのだが…中に手を入れてみると私の手はどんどんと中に入って行く。腕までが全部入ってしまったが底に手が届く気はしない。ですのでこのバックが魔法のバックであるのは本当のようでした。
「このバックね…商人である私にとっては宝のようなんだけど‥‥少し問題があるんだ」
「問題ですか?」
「そうさ。容量が物を運ぶには少なすぎるんだよね。あとこのバック‥‥同じような物が幾つもダンジョンで見つかっているんだけどそのどれもに時間の停止機能が備わっているのにそのバッグには無いんだ。だから欠陥品なのさ」
「なるほど…ですから売れる物なら売りたいと言う事ですね?」
「そう言う事だね。金貨2枚でいいから買ってくれないかい?」
「金貨二枚ですか…分かりました。いいですよ」
「本当か!?それは良かった!欠陥品のくせに妙に高い価値があるから邪魔だったんだ」
私は金貨二枚を商人に渡して物を受け取る。
これで旅に必要なバックは手に入りましたが…具体的な容量を聞いていませんでしたね。
「大体どれくらい入るんでしょうか?」
「う~む…具体的な容量はいまいちわからないが複数人で旅をするには十分だと思うよ」
ニアのことをチラッと見て商人はそういう。
「服に武器や鎧なども入るし、キャンプセットの道具なんかも入るだろうね。でも食べ物を入れてはダメだからそこは注意してくれ」
「分かりました。でも欠陥品と言いましたがこれを欲しがる人は幾らでもいるとは思うのですけど‥‥こんな安くて良かったんですか?」
「良いんだよ。私はもう商人を止める身だ。少しだけ稼ぎたかっただけなんだよ。それにこの街にいる君に売れたのは何だかこの街に恩返しができた気がしてね。だから欠陥品だけど持っていきな」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」
そう言って私は宿へと戻る。
このリュックにはエルゼを入れるわけには行きませんね。どんな感じになっているのか分かりませんし、少し宿に戻って試さなければなりません。
宿に着くとそこにはケリーさんがいた。ケリーさんは私を見て近くに走って寄って来た。
こちらが何かを言う前にまずケリーさんが口を開く。
「シズクさん!‥‥私を旅に同行させてもらってもいいですか?」
「……はい?」
それは思っても見なかった提案だった。
読んでくださりありがとうございます。
今回で取り敢えず最初の街でのお話は終わりになります。
まぁ…プロローグみたいな感じが終わったと思って貰えればいいかなって私は思っています。
もう一話も投稿致しますのでそちらも読んでもらえると嬉しいです。
ではまた会いましょう(@^^)/




