積んだ徳
「ニア?そちらの方は大丈夫でしょうか?」
「うん平気…でもどうしてこんな事をしているの?」
『ご主人!私もそう思った。どうして此処にまた来たの?』
二人は明らかに不満そうに私に文句を言ってくる。分からないわけではありません。何故ならばここは私が以前、山賊たちによって捕らえられていた場所の洞窟なのですから。ですが少し思ったのです。この洞窟は神様の洞窟と村の少年は言っていました。それに小さいですがちゃんと石の像がありますし、本当に神様を祀っていた場所なのでしょう。ですが長い時が過ぎて誰も来なくなったと。私は神というモノは信じていなかったのですが実際に会ってしまったので信じるほか無いのですよ。まぁ要は祟りが怖いので散らかったゴミなどを片付けましょうと言う話です。あと単純に村人の人からお願いされたのもあります。様子が気になって訪れただけなのですが私も気にかけていたことですのでついでにやってしまおうと言う考えです。
ケリーさんが言っていたように山賊たちの死体などは綺麗さっぱりと無くなっているのですが血の痕跡やゴミなどは片付けられていませんでした。流石にこれは不味いと思ったので私はエルゼとニアを連れて掃除をしに来ているのです。
「エルゼでも血の跡は消せないですのでこうして掃除道具をお借りしているわけですが…なかなか腰に来ますね。やはり魔法と言うのを覚えた方が良いのでしょうか?」
ケリーさんの話では掃除などをする魔法もあるらしいですね。
ですが魔法はどうも使い手を選ぶようです。誰でも簡単に使えるようなモノではないらしいので私には無理そうですね。ケリーさんも魔力なる力はあるそうですがどうも魔法を覚えられないようでしたので剣を使っているらしいです。あの武器も使い手を選びそうですが…。
「ご主人様!この像、壊れてる」
「本当ですね…どうしましょうか。う~む…代わりになるモノを何か用意出来ればいいのですがなさそうですね。…ではこうしましょう」
私は石像ではなく床に転がっている石を手に取り、それをナイフで傷つけながら形をある程度整える。あのケリーさんに渡されたこのナイフですがどうも珍しい金属を使っているとのことで、とても丈夫らしいのです。あまり使っていない事を少し言われたので積極的に使っていきましょう。
「勾玉…みたいなモノですが無いよりはマシでしょう。まぁこの世界では意味のない物かもしれませんね。今のところはこれで満足してもらうしかないでしょう」
私は勾玉を幾つか作り、本来石像があった場所に置く。う~ん…少し物足りない気がしますが大丈夫でしょうか?他に何か作った方が良いのでしょうが‥私は、そこまで高い技術は持ってない。
『ご主人、これは何?』
「これは勾玉って言ってですね。神様に祈りを捧げる時に必要な物なのです。ですので石像の代わりになると思って作ってみたのですがどうも慣れていないので不格好ですね」
勾玉と言われれば知っている人ならわかるぐらいの出来ですね。
まぁただの石を使った勾玉ですので‥‥此処に翡翠などの宝石があればもう少しマシな物が出来るでしょうが…いえやはり私が作ればまた不格好な物が出来るだけですので止めておきましょう。
それから私たちは片づけを続けて、新方のごみと汚れを掃除することが出来た。朝から昼にかけて掃除を行った為、私たちは洞窟の外で昼食を取る。ニアには私と同じようにパンに肉や野菜を挟んだサンドイッチのような物を食べてもらっている。スライムは元々雑食のはず。エルゼが少し特殊なスライムであることは知っていますがニアまでそうなるとは思いもしませんでした。
「ご主人様はこの後何をするの?」
昼食のパンを食べながらニアを私にそう聞いてきた。
普通に食べているので問題はなさそうですね。今度はスープなどの液体の食べ物も食べさせてみましょうか。何か新しい発見があるかもしれません。
「そうですね。この街を出て別の街へと向かってみてもいいかもしれません」
「別の街?じゃあ此処にはもう来ないの?」
「いえいえそうではありません。少し勉強が必要だと感じたので少し栄えている街まで行ってみようかなと思っただけですよ。いずれ此処に戻ってまたスライム達の観察も再開します」
「そう。でも別の街…少し楽しみ」
『私も!ねぇねぇご主人!私は海が見たい』
「海ですか?…そうですね。海もいいかもしれませんね」
海と聞いて思い出すのは死ぬ前に見ようとしていた新種の魚だった。一体どんな生き物だったのか…それを知るのは私ではなく助手君です。あ~…見たくなってきてしまいました。少しケリーさんにでも相談してみましょう。栄えている海に近い街はあるのでしょうか?もしあるのなら次はその街が目的地点で良いかもしれません。まぁまだお金が足りていませんので先の話ですがね。今は薬草や依頼を受けて地道に稼いでいきましょう。その過程で魔物の観察を続けて行けばいいですね。
「さてと‥‥生ごみは埋めてそれ以外のゴミは村へと持って帰りましょうか」
「分かった」
『了解だよ!』
用意した袋の中に燃えないゴミを入れて包む。小さな袋はエルゼにも持ってもらい、洞窟から去ろうとした時に丁度目の端に白い姿をした狐のような動物を見かける。
「……?」
「ご主人様どうしたの?」
「いえなんでもありません。少し珍しい動物を見た気がしたのですが気のせいですかね」
「疲れてる?大丈夫?」
「平気ですよ。身体もニアの治療のお陰で治りましたしね。ありがとうございます」
「ご主人様を治す。当たり前」
「でも感謝は伝えるモノです。親しき中にも礼儀ありと言う言葉がありますのでね」
そう言ってニアの頭を優しく撫でる。
子供を撫でているような感覚でつい撫でてしまう。嫌がられていないのでいいのですが‥‥このままでは良くない気がしますので抑えましょう。
『……感謝する』
「何か言いましたか?」
「ううん。言っていない」
『私も何も言ってないよ~?』
エルゼの声とは違う声が聞こえたんですが…気の所為でしたかね?予想以上に疲れているんでしょうか?熱中症や脱水状態には気を付けたんですがね。
『お主の徳ある行動…そなたは利のある人間と見受けた。さすればこれを授ける。受け取れ』
「やっぱり聞こえますね。どうやら気の所為ではないようですね」
「誰の声?」
「…誰ですか?」
声の主に問いかけるが、その声はそれっきり聞こえなくなった。私は少し不思議な体験をしたような感じで村へと戻り、ゴミを村人達に渡した。
「お前さんにはホンに感謝しとるわ。嫁も戻ってきよったしの」
「そうですか。それは良かったです。…では私はこの辺で」
「ありがとさんね?作物が育ったらまた来てくだせぇ!そん時はうめぇもんご馳走するよぉ」
「ありがとうございます。その時はご馳走になりますね」
村の人達には出会う度に感謝の言葉をかけられる。あまり感謝されることに慣れていないので少し恥ずかしい。それに最後はケリーさんが倒してくれたので何とかなりましたし…私だけでは終わっていましたね。
「所で‥‥おめぇさんのその目の上にある印はどうしたんだ?」
「はい?目の上に印ですか?」
「んだよ。怪我したか?」
「いえ、そんな事は無いので大丈夫です。気にしないでください」
「そかそか。んじゃあ今から畑仕事あるでな」
「はい、ではさようなら」
私はそのまま歩いて村から街へと帰る途中でスライムの森へと寄る。
少し薬草などのお金になる植物を取りたかったので‥‥。
ニアの服や私の代えの服などで出費しているのでその分は稼がなければなりません。
「えっと‥‥本によれば葉を傷つけずに採取をする事によって長時間鮮度を保ったまま保管できるらしいですね」
目の前に生えているのはドクダミに似た植物で一番最初に採取した思い出深い植物でもあった。
村長のゾイさんから頂いたこの本を使って頑張って採取をしていきましょう。
私が地面に触れた時にいつもとは違う現象が起きる。
そのドクダミに似た植物が次々と生えてくる。やがてそこら辺に群生するように生えてきたドクダミを見て思わず息をのむ。
「ご主人様凄い!」
『ご主人何やったの!?』
「い、いえ私にもさっぱり訳が分からないですが‥‥一つ心当たりが」
その心当たりとは先程の誰かもわからない謎の声です。
「受け取れ…その声の主はそう言ってましたね。そこから察するに何かのスキルでも貰ったのでしょうか?」
あり得ない事だと言いきりたい所ですがこの世界はそれが出来ない世界です。つまり私は超常的な存在から新しいスキルを貰ってしまったと言うわけですね。女神に次いで次は分からない存在ですか…私が土に触れた時に発動したようですが…。
試しにもう一度土に触ってみますが同じような事は起きません。
何か別の事がトリガーとなっているようですね。
「また問題が増えてしまいましたか」
足元に広がって生い茂っている植物を見てため息をつく。
読んでくださりありがとうございます。
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明日も投稿致しますので是非また読んでください。
ではまた会いましょう(@^^)/




