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急がば急げ


私がこれまでやって来た考察は全てスライムをスライムだと認識して行ってきた。

それによって成立した観察であり、わかった事もあったが他の魔物であればどうだろうか?

例えば地球では目の前の生き物が鳥であればそれを鳥として観察し、他の鳥と比べて何処が違うか、他の動物と何が違うのかを観察し考察する。

だが…もし私が他の動物の存在や鳥を知らなければこの様な観察や考察は成立するのだろうか?


私は森の中でそんな事を考えながら薬草を採取していた。

受付に行ったときに回復薬を作るために必要な薬草の場所を地図に書いてくれと言われたので現在はその頼まれごとをしている最中なのだ。


「ふむ…やはり魔物の基礎知識が足りなくないですかね?」

プルプル…?

「なんでもないですよ」

プル?


本当?と言わんばかりに一本の触手を傾げるように動かす。

何故かニアが進化した後により強くニアの考えていることが分かるようになった。

これも魔物が進化することによって起こる現象なのかは分からない。


ニアが何故外に出ているのかは、もう隠さなくてもよくなった。それとニアも戦えることが判明したの倒される心配をしなくてもよくなったと言う二つの理由がある。

…嘘です。本当は鞄に入ってくれなくなったのですよ。

朝方に仲間を作りたいとニアに言うと言う事を聞いてくれなくなりました。そんなに別のスライムが嫌なのか、それともただの反抗期なのか…。


山賊の攻略に必要な魔物は前回出会ったあの【ポイズンスライム】が必要だと思えました。

状態異常を引き起こす魔物は私の目から見ても厄介な存在でしょう。

だからこそ仲間に引き入れようと思ったのですが…。


「【サーチ】ポイズンスライム」


マークが出ないんですよね。

サーチの範囲外にいるのかそれとも誰かに倒されてしまったのかは分かりません。

ですが私はこの森に入ってから別の冒険者の姿を見てないんですよね。なので倒されたというのは無いと考えているのですが…予測なので分かりません。


「困りましたね。これでは目的のスライムが見つかりません。急がないといけないのに…」

プルプル…

「え?どうしたんですか?そっちに何かあるのでしょうか」


ニアが触手である方向を指す。こっちに行こうって言っているようですが…またあの植物があるのでしょうか?

スライムは目も鼻も無いのによく方向などが分かりますよね。それも不思議だったのですが考えても分からなかったので諦めたんですよね。


私はニアを抱えながら触手が指している方向に進む。

抱えているニアは触手をダウジングのようにあっちこっちと向けて私を目的地の場所に案内している。車のカーナビのようだと少し思ってしまいましたが何処に向かっているのかが分からない。


やがてニアから伸びている触手が消える。

どうやら目的地に着いたようだ。目の前の茂みから顔を出すとニアがどうして此処に連れてきたのかが理解できた。


「あのスライム…」


目の前にいたのは赤黒い色をした不気味なスライムだった。その体からは瘴気のような煙が出ている。見ただけであれ程危険だとわかる生き物もそういない。


『【オリヘンスライム】【ヒールスライム】【ブラッドスライム】のページが更新されました』


ブラッド…血?

あの赤い色が血のようだから名前がそうなったのか…だがこれまでもそうだったのですが見た目で名前が付いていないんですよね。どのスライムも…その性質にあった名前が付けられている。


警戒はした方が良いのですが…取り敢えずはニア以外の別のスライムは実験も兼ねて欲しかったのでテイムしてみましょうか。


「【サーチ】ブラッドスライムの好物」


何処にも‥‥ん?どうして私の腕からマークが出ているんでしょう?

いやいやいやいや!噓ですよね!?確かに血ですけど‥‥どうしましょうか。

最悪食べられるのでは?


ブラッドスライムの好物はどうやら血のようだ。

だがどうやって私の血をあげればいいのか…注射器のようなモノも今は無い。

あると言えば今朝がた渡された数本の回復薬ぐらいです。


朝方にギルドに行くとケリーさんが私に二つの物を渡してくれました。一つは数本の回復薬。場所を教えてくれる前報酬のようだと言っていましたが在庫がないのにこんな私に渡しても平気だったのでしょうか?

それともう一つは短いナイフだった。冒険者ならナイフの一つぐらいは持たないと危ないらしい。

それで渡してくれたのだ。貸し出しではなく、ケリーさんからのプレゼントだと言うことで少し驚きました。お礼だと言っていましたけど心当たりの欠片もないんですよね。

受け取るまで差し出す手を引かなかったので渋々受け取りましたが…後でお返しを何か用意した方が良いですかね?


回復薬を一つ鞄から取り出す。回復薬は試験管のような瓶に入っており私は思いついてしまった。


「この瓶…もしかして使えるのでは?これに私の血を入れてあのスライムに渡してみましょう」


鞄からナイフを取り出し指先を軽く切る。

少し痛いが我慢して血を試験管に垂らすが圧倒的に足りない事に気づく。


「あぁ…うん。そうですよね」

こんな量では足りませんよね。切ってから気づくとは何て馬鹿なんでしょうか。

普通は切る前に気づくべきでした。


「どうしましょうか‥‥というかあそこからあのスライムは動きませんね」


ブラッドスライムはずっと一ヶ所にジッとしている。

まるで獲物がただ通りかかるのを待つかのように静かにピクリとも動かない。


「ニア‥‥私が攻撃を受けて死にそうな時は頑張ってください」

プルプル!?

「グッドラックですよ!」


私は茂みから勢いよくブラッドスライムの前に出る。

ブラッドスライムの体からは触手がうねうねと出てくるがその数はニアよりも少ない。

だがニアの触手とは違い、先端が丸みを帯びていない。槍のようにその先端は鋭くとがっていた。


「血が欲しいのですよね?そんなもんくれてやりますよ!」


もうやけくそです。死にたくありませんが本は欲しい。

それに折角出会った新種ですので逃したくないのですよ。一期一会の出会いである可能性は高いのですから。


フルッ!


「ッ!?」


間一髪の所で攻撃を躱す。ニアの触手の動きより幾らか遅いため反応出来ましたが次は避けれるか自身がありませんね。

というか‥‥。


「どうして心臓を狙うんです!ここですよ!脚とか腕とかあるでしょう!?どうしてよりもよって此処なんですか!」

私は左腕を前に差し出す。そして血をあげますよと言ってみる。


ブラッドスライムが私の声と行動に困惑するように攻撃の手を止める。

獲物が叫びながら自分から攻撃を食らうような格好をしているのだ。傍から見れば変態の何者でもない。ですがこれが私の意地です。


ブラッドスライムが先ほどのよりも遅い攻撃で私の腕を刺しにかかるが私はそれを敢えて避けません。刺された場所に激痛が走り、倒れそうになりますが猛毒を食らった時よりもマシなので何とか耐えられますね。それに階段から落ちて骨を折った時の方が痛かったですよ。

ですからこんな痛みには慣れているんです。


刺された場所から血が吸われているのが何となく感覚として分かる。

そしてある程度吸い終わるとブラッドスライムがもがき苦しむように体を震わす。


「ど、どうしたんですか!?そんなに私の血って不味かったんです?」

道理で夏に蚊が私の血を吸わないわけですよ。


私は慌ててブラッドスライムの近くによって確認しようとしますがその時。


『【ブラッドスライム】をテイムしますか?』

と声が聞えた。ニアをテイムした時と同じ声だ。急いで承諾し、ブラッドスライムをテイムする。

抱えながらニアの元に運んで治療をしてもらおうとするがニアはブラッドスライムを無視して私の傷を回復し始めた。


「に、ニア?私じゃなくてですね?そこにいるブラッドスライムを治して欲しいんですが‥‥」

フルフル‥‥。


ニアの触手によって私の傷は回復みるみる回復していく。

こうも早く傷口が早く治るのは凄いモノだな。地球の技術でもこんな事は出来ないだろう。

恐らく私の細胞を活性化させて再生能力を高めているのだと思うのだが…未知の力の可能性もあるため断言できない。


私はもう一度ニアに隣で体を震わしているスライムを治すように言おうとした時だった。


『おいしい~~~!!』


私の頭の中でそんな声が響くのだった。


読んでくださりありがとうございます。少しでも良かったと思って下さればブクマ、評価をしてくださると嬉しいです。

如何やら主人公の血は美味しかったらしいですね。因みに私は夏になると蚊からのアプローチが来すぎて困るくらいには蚊にモテます。

そして寝ている間も耳元で囁かれるのですからたまったもんじゃありませんよね。


もう一話、投稿するので良かったら読みに来てくださいね。

ではまた会いましょう(@^^)/


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