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新しい道


暗い部屋の中で私は椅子に座り、ただニアの治療を受けていた。段々と暗い中でも見えるようになってきた。するといつもよりも多くの触手がニアから出ていることに気づく。進化によって出せる触手の数も多くなったという事だろうか?

触手が腕、足、首、頭などを転々と触っていくため少しこそばゆいが我慢している。


「そう言えばニアはどんな種に進化したのですか?」

プルプル…?


うん‥‥触手とのコミュニケーションは分かりませんね。

ジェスチャーとかは伝わるのだけど複雑になって来るとやはり言葉が無いと難しいですか。


「【魔典】オープン」


【ヒールスライム】

回復、再生能力に特化したスライム。

傷口に触手を張り付かせることによって負傷した場所を治す。触手には体内に入った有害物質を取り除く機能が存在する。吸収した有害物質で一時的に体の色が変化するのが特徴である。

他の魔物に寄生することによって生きている事が多く、単体で姿を見ることはない。


「回復に再生能力‥‥もしかして私の為に?」

プルプル?


どうしたの?と言いたげに私の顔の前で触手を動かす。

私は以前のオリヘンスライムにあった説明を思い出していた。


「確か食べ物や環境によって素早く適応すると書いてありましたね。ですがその状況によってまで姿を変えるのは予想外です。これは新しい発見ですね。それに体がもう痛くない…どうやら毒は取り除かれたようですしニアには感謝しかありませんね?ありがとうございますニア」


テーブルの上に乗っているニアを私の膝の上に乗せ、愛でるように撫でる。

ニアは触手を体の中にしまい、いつものまん丸ボディに戻る。触っていると気づくのだが以前よりも弾力性が増したような気がする。それに核の大きさも変わった?

取り敢えず私は机上の鞄の中に入っている袋を出し、ニアの好きなあの植物の根を探すが何処にもなかった。午前中に森に入った時に忘れないようにと採取していたはず。


「おかしいですね?何処にもありません」

プルプル!

「……そうだったんですね」


触手が私をポンポンと叩いた後にニア自身を指す。どうやらニアは大量にあったあの根を食べて進化したようだった。私が毒に侵されていると言う特殊条件がトリガーがあり、あの根が好物であるという条件であれば【ヒールスライム】に進化するのだろう。


魔物の進化条件が分かったと言うことは同じようにすればヒールスライムが誕生するかもしれないと言う事。これは是非とも実験をして見たいが…。


「スライムについてまだまだ知りたいことがあるのですが…一つの場所に留まりすぎるのも良くありませんよね。あの金貨2枚を受け取れば馬車に乗って別の街まで運んでもらえるでしょうか?護衛に別の冒険者の方に依頼するとして…それくらいあれば足りると思うのですけどね」

「…この街を出て行くのですか?」


寝ていたはずのケリーさんが横になりながら私の事を見ている。

どうやら起こしてしまったようだ。


「すいません…起こしてしまいましたか」

「良いんですよ。大体私がここで寝ている事がおかしいのですから。それに…」

「それに?」

「い、いえなんでもありません。それよりも先ほどの話は本当ですか?」

「この街を出て行くと言う話ですか?それなら本当ですが…今すぐにではありませんよ。ですが何時かはここを去らないといけませんね」

「そう…ですか」


消えゆく声でそう返事をする。


「一つ聞いてもいいですか?答えられない事でしたら答えなくてもいいですので」

「はい、なんでしょう?」

「そのお腹の加護の紋章。貴方は女神の使徒なのですか?上の服を脱がせるときに見えてしまったので少し気になったのですが…」

「お腹の紋章?使徒?」


はて?なんのことでしょうか?そんなモノはないは…ず?

な、何ですかコレ!?


私の脇腹のところに赤い紋章が刻まれていた。

これがケリーさんの言う加護の紋章なのだろうか?私には呪われているようにしか見えませんが…。


「こ、これですか?」

「そうです。神から加護を受けた者は使徒だと言います。何かしらの役目を持ってこの世界に生まれ落ちると。シズクさんは一体何者なんですか?」


異世界から来た転生者なんて言っても馬鹿にしていると思われるのが落ちですね。

それに私が異世界人などと知られるのはあまり良くないですよね。

人間というものは自分達とは違うモノを排除したがる傾向にあります。今、此処で私がこのことを言ってしまえば私の予想を大きく超える惨事に繋がる事も考えられる。

つまり言えない…黙秘が一番の最善の選択なのでしょう。


「すみません。ただ此処よりも遥か遠くに位置する場所からやって来たとしか言えません」

「そうですか…いえ本来はその加護について話すことすら嫌う人もいるぐらいですのでどうか謝らないでください」

「そうなんですか」

「使徒の方々は神からの加護を受けたことに、そして自分がその与えられた役目を全うしている事に誇りを持っているのでしょう。私たちがその加護の事を話すのが見せ物にされているように思われるのかもしれません」


そんな誇りは捨ててしまえばどれだけ楽だろうか。

あの女神の様子ですとあまり深く考えても意味がないような気がします。

死にかけの私を面白がって呼ぶくらいですからね。ろくな人ではありませんよ。


「私は別にそんな考えはありません。ですがあまりこの加護の事は秘密でお願いします」

「はい、ですがもう既に手遅れかと思いますよ」

「手遅れ?」

「はい、上の服を着替えさせるときに複数の冒険者が貴方の紋章を見ているはずです。つまり貴方の加護の事は知れ渡っている頃かと」

「人の噂も七十五日と言います。それに良くない事では無いみたいですので恐らく大丈夫でしょう」

「ですが…問題はあの二人組の冒険者になります」

「そうなんですか?彼らがどうしたんです?」

「……その様子では加護の事も知らないのですか?」


加護の事?確か女神は加護は神がその世界に留まらせるだけの価値を持つ存在にだけ与えるみたいな事を言っていた気がしますね。


「知っていますよ。ですがそれと結びつかないんですよ」

「では説明しますね。恐らくですがあの二人組の冒険者は死罪か生涯奴隷の罪になります」

「!?」

「禁止されている毒を所有していただけでも罪になりますが彼らは知らず知らずに使徒を殺そうとしました。ですので余計に罪が重くなるのです」

「あの…あの二人組の冒険者は今どこに?」

「もう牢の中に入れられていますよ」


雲行きが怪しくなって来たのではないでしょうか?

もしかしなくてもそうですよね!?


「えっと私の金貨2枚は」

「お気の毒ですが…今回の模擬戦での取引は無効になります」

「そんなぁ…」


わ、私の金貨2枚が消えた。折角の計画が全て水泡に…。


「で、ですが!悪い事ばかりではありませんよ。模擬戦の取引は無効になりましたがシズクさんの冒険者としてのランクは銀級に上がります。そうすればより良い依頼を斡旋してもらう事も可能ですのでどうか気を落とさないでください」

「はい、そうします。少しこの街にいる期間が長くなるだけですのでそこまで痛手ではありませんでしたね。スライムについてももう少し調べたい事もありましたので結果オーライですね。それと少し疑問に思ったのですがこの街って本屋がありませんよね?」

「本屋ですか?それは王都などの大きな都にしかありませんよ。それか貴族の家…今回の山賊の財宝の中にも本があるかもしれません。本は高い値が付きます。ですのでもしかしたらあるかもしれませんね」


山賊の財宝の中に本が?

この世界では本が少し高いのですね。まぁ印刷機などが無いと思いますのでそれも分かりますね。

人の手で書くか、文字判を押して書くしかないでしょう。

異世界なのだから魔法でどうにか出来ないのでしょうか?と思いますが出て来てないあたりそこまで夢に出てくるように便利ではないのでしょう。


私はギルド長の話を聞いた時に思いましたが知らない事が多すぎますね。

モンスターの事についてギルド長は詳しかった。

スライムについても私に分かりやすいように話してくれていたのでその知識がどれ程深いのか知ることが出来ます。

文献を読むこともまた生物をより詳細に知るための手段です。ですので本を読みたいのですがそれを手に入れる手段が限られている当たり選んでいる場合ではありませんよね。


私の頭はもう山賊を倒すことしか選択になかった。

ニア一人では少し厳しいでしょうか?もう一体のスライムが必要ですが…ニアのように戦闘が出来るのかと疑念も残ります。

…やる事が沢山ありますね。急がなければ先を越されてしまうかもしれません。


「その目…もしかしてですけど変な事を考えていますか?」

「何も考えていませんよ。それより私もそろそろ寝たいのですが…」

「あ、そ、そうでした。失礼しました。私はもうギルドの寮に戻ります」

「いえいえ、色々とありがとうございました。明日からもよろしくお願いします」

「はい」


ケリーさんはいそいそと私の部屋を出て行くと膝にいるニアがピョンピョンと小さく跳ねる。


「どうしたんだい?」

フルフル?

「あぁ…早く寝ろってことかい?」

フル!


私はニアを抱えながら横になり、そのまま目を瞑る。

何処か花の様な良い香りがする。

ニアのひんやりとした身体に抱き着きながら私の意識は薄れていった。


読んでくださりありがとうございます。

少しでも面白ければブクマ、評価をしてくださると嬉しいです。

明日も投稿するので良ければまた読みに来てくださると…ね?


ではまた会いましょう(@^^)/

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