7
ラッセルside
「まだ起きんの〜?」
オレはじーっと起きないカレンをみつめた。
「そんなに覗いてたら彼女、起きた時びっくりするんとちゃうか?」
「おっちゃん…でもな?心配やねん。全然起きへんから。」
「まぁ、気持ちは分からんでもないけどな。」
そんな会話をして、さらにじーっとカレンに顔を近づけて
見とったら、
「う……ん?」
パチッとカレンが目を開く。
しばし、お互いに見つめ合うこと数秒。
カレンが顔を真っ赤にして、叫んだ。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
パシン…!!!
部屋の中に、豪快な音が響いた。
「痛ァァァ?!」
「ハッ……!ご、ごめんなさいって…か、顔近いから仕方ないでしょ!!」
痛いなぁ…頬を擦りながらカレンを見た。
オレの顔には赤い手形が、
くっきりとある。
おっちゃんはそれを見て大爆笑しとった。
「アハハハハ!!くっきり手形ついとるがな!!めちゃくちゃおもろいやん!!あはは───いででっ!!」
「貴方、笑いすぎよ。 」
「あ、ねぇさん。」
おっちゃんの奥さんがおっちゃんの耳を引っ張って笑ってない笑顔で言いはった。
「えっと…カレンちゃんだったかしら。もう夜だから夕食食べましょう??」
「へ?夜…?」
「あーカレン…簡単に説明するとやな?」
かくかくしかじかでと説明をした。
「という訳なんや。」
「ぇぇえええええ!?あの遺跡から違う世界に来た?!」
「そうやねん。やから、今アレン達がどこにおるか分からん。この世界に来てるかもしれんし、来てないかもしれん。」
「そう…」
「とりあえず親切なおっちゃんが井戸から助けてくれたから、何とかなっとるけど。」
「そ、そうだった。この度は、親切にして頂いてありがとうございます。」
「ふふ…良いのよ。さぁ、カレンちゃんいらっしゃい。子供達も待ってるから貴方もラッセルくんもいらっしゃい。」
「分かった!ほな行くで!」
おっちゃんが、ねぇさんに返事をした。
ちなみに、ねぇさんと呼んでるのは…おっちゃん言うて、
奥さんのこともおばちゃんなんて呼んだら失礼かなーおもてねぇさんと呼んどる。ねぇさん本人は気に入ってくれたらしい。
いい子ね。と、褒めてくれはった。
あの人みたいにデリカシーがない子じゃなくて良かったわと呟いていたことをオレは知るよしもなかった。
それから、夕食を大勢で頂いた。
「すっごい美味しいわ!」
「だろだろー?!おっちゃんの奥さんの料理は世界一やねん!」
「こういう時だけ、調子のいいこと言わないで頂戴。その顔叩き切るわよ?」
おっちゃんはねぇさんの言葉に、
青い顔した。
その顔を見て、子供達はケラケラと笑い出す。
「おとうさん顔があおい!おもしろい!!」
「ね!!」
「顔が青いことを真っ青って言うんだよ…!!」
「知らなかった!!」
「まっさお〜!」
「まっさお!まっさお!!」
真っ青と連呼する子供たち。
「まぁまぁ、それよりはよ食べよ?冷めてまうで。」
そんなオレの声掛けに子供達は、
「「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」」」
良い返事を貰えたんや。
なんか、遊んどったら気に入られてな!
面倒見てるで。ねぇさんも助かるわ。と言ってくれはったし。
少しは恩返し出来とるかな?と思ってみたり。
そんなこんなで、楽しい夕食は終わり…お風呂を借りたりして就寝の準備をした。
その後…明日についてカレンと話すことにする。
「カレン、とりあえず明日ここの街を探索しようと思ってんねんけど…どう思う?」
「えぇ、その案に賛成。」
「ほな!明日は探索やな!」
「その話乗ったで!!」
おっちゃんが現れた!
アレンなら、ゲームに出てくる敵とでも言いそうだ。
「お、おっちゃん?!一体どこから出てきたんや!?」
「扉からや!」
「聞いてたんかいな!」
「勿論や!! 」
ハッキリ堂々と盗み聞きしてましたよと鼻息を荒くして言うので、思わず。
「アホか!」
「アホちゃうねん!パーでんねん!」
と返してきよった。
なかなかの強者…。
「それに、おっちゃんおらんかったら迷子になるのは目に見えとるやろ?おっちゃんが案内したるから!お金もだしたれるし!」
「あ…こっちの、通貨のことスッカリ忘れとったわ…」
「でも…お金は出してもらうとかダメです。」
「大丈夫ですよ。」
「ね、ねぇさん?!」
新たにねぇさんが現れた!
「ごめんなさいね。今日1日子供たちを見てくれてほんとに助かったの。家事も捗ったし、ゆっくりすることも久々に出来てね。この人だけだったら何もかも私がやらないといけなくなるから本当に助かったの。だから、お駄賃って形でお金を渡しておくわね。」
ねぇさんが言いたかったのは、おっちゃんが家におっても子守りすら出来ひんから余計に仕事増えて大変なところ、ちゃんと子守りもしてくれて役に立ったと言うことを言いたかったわけや。
「ねぇさん…ええんか?」
「えぇ。勿論よ。」
「おおきに!今回はお言葉に甘えさせてもらうわ!」
「ふふ…そうして。」
「私もこんなに出来た人と結婚すれば良かったわね。」
「ダメ!」「なんやって?!」
否定的な言葉と驚きの声が瞬時に響き渡った。
「冗談よ。カレンちゃん取ったりなんてしないから安心して。」
「あっ…」
カレンはねぇさんにそう言われたあと顔を真っ赤にした。
「カレン…なんで赤いんや?」
「なんでもないから!!」
「ふぅん…」
ラッセルくんは鈍感なのねと、ねぇさんが呟いてる声はオレの耳には届かんかった。
★★★
リベルトside
俺がマーダラと話した直後。俺はアイツを追いかける為
すぐさまシェルターを後にした。
そうして、1日中くまなく探し回った。
「チッ…!この俺が見つけれねぇはずはねぇ!!!」
隣の壁に拳を叩きつければ粉々に砕け散った。
つまんねぇ…つまんねぇよなぁ?!
くっそ!イライラしやがる!!
だが…相手が見つからねぇほど面白いものは無い…!
いたぶりがいがあるってもんよ!!!
「フハハハハ!!!ファハハハ!!!!」
「ワハハハハハ!!!」
俺は笑った。拳を握りしめ、高らかに。
アイツ赤目の男をなぶり殺すことが出来るなら俺は満足だ!!
俺の声に混じって笑ってる奴がいる…?
「ん?」
なんだと思って左右を見たがいねぇ、後ろに振り返ってみた。
後ろには身長119cmの子供で髪は蒼髪のロング。白く変わった模様の浴衣を着て、赤い眼をしていた奴がいた。
ソイツの特徴は、奇妙な仮面を被っていることだ。
「なんだガキか…」
俺は自然と呟いていた。
そして俺は目を疑った。
「!?」
俺は声が出なかった。
コイツは間違いない。俺は見たことがある、そして殺したこともある奴が目の前にいた。
「てめ…!?なんでここにいるっ!?はぁっ!?」
「にひひ♪」
ソイツは満面の笑みを俺に向けやがった。
「なんてこった…」
そして夜が明け、太陽が登りきった頃。
俺は終始イライラしていた。こいつのせいでだ。
生きていた事を知ったん瞬間、殺った。
何度も、殴り倒したが…守鬼…テメェか!!コイツを守ってんのは!!
「着いてくるんじゃねぇ!!」
「ねぇねぇ!なんでダメなの!いいでしょ!ぷくー」
「邪魔なんだよ!足でまといなんだよ!!」
俺は気がたっていた。殺したはずの相手がのうのうと生きてやがるんだ。
見るだけで不愉快だった。
「ねぇねぇリベルト! 誰を探してるの?」
「は?」
「だから!探してるんでしょ?人を。」
「お前に言う義理はねぇ!とっとと、失せやがれ!」
「リベルト が探してる人って赤い瞳に黒い髪の男の子じゃないの?」
「おい、なんで知ってる?」
「さっき会ったの!」
「なんだって?!」
「お腹空かせてたら食べ物くれたの!すっごく美味しいもの!それでね、少し話を聞いてたら、リベルトの特徴にそっくりだったの!」
「おい、そこはどこだ!!」
「こっち!!」
そう言われ着いて行けば。
いた…!!!!
ニタァ……!!!!
アイツで間違いねぇええええ…!!
俺から仕掛けてやろうじゃねぇかァァァ…!!
なんせやっと見つけた獲物なんだからよォオオオ!!
そう背後に気づかれないようまずは急所を外し1突きと
思った時には体が止まっていた。
う、動かねぇ!?
そして、奴は後ろを振り返った。
「なんでバレてんのかなぁ…?」
「うわっ!なんちゅー男前や!」
「おっちゃん…わかったから…ちょっと黙っててくれへん?」
「なんで、そんな冷たいこと言うんや〜ラッセル〜!」
「あー!暑苦しいで?!」
俺を見ながら呑気に喋ってやがる。
さらにイライラは募る。
だが、そんな怒りとあの赤い目の男を抹殺してやろうという
感情が一瞬にして緩和された。
たまらなく不思議だ。
あの赤い目をまた見れば…!!と思って奴を見たが…
何も思わない…何かおかしい。
俺じゃないみたいだ。
「おい…テメェ!俺に何かしやがったな?!」
「あー効果出てるんだ。良かった〜」
ホッとしたような声を上げる赤い目の男。
本来の俺ならば、痛めつけ地獄を叩き込み絶望を刻みつけ抹殺してやる!この気持ちが微塵も思い浮かばなかった。
思い出そうとしても思い出せない。
何かが邪魔をしているとしか思えねぇ…クソっ…!
「まぁ…とりあえずは仲良くしようよ?リベルトさん。」
あぁ…今の俺はおかしい…。
殺意が湧かねぇ…。
俺は、ソイツに返事をした…。
「あぁ……」