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フィーナside
リベルトと呼ばれる男が急に空を見上げ狂った笑い声をあげ始めた。
フナサカと呼ばれる…人は何かあったのか、
急に車に乗り…慌てた様子でその場を去った。
何か男に用があっただろうに。
って待って!!この人が…リベルトなら!!
「あっ!ああああの!あ、ああ貴方!さっきリベルトって言ってたわよねっ!?」
「さぁな、耳がイカレてんじゃないか?俺は用事があんだ。大事な用事がよォ。」
彼は獲物を定めた鋭い目で嬉しそうに笑っていた
あたしは、恐怖におののいた。だけど…引けない!
「もっもももし!もし貴方が歴史人物、イタリアの魔将デヴィラル、リベルト D ルシュターゼンの何かなら!私は力になれるっ!」
「うるさい、失せろ!この年増が…!俺は用事があるつってんだろ?!」
「うっ…ていうか…!まだ全然イケてる女だしっ!それに…!クラーガ・ヴァンペイアがあなたを待ってる!!」
「待て…あの「音撃の殺戮者サウンダック・マーダラー」が生きてんのか…!?」
「そうなの!!」
「チッ…そっちが優先か…」
そんなリベルトを連れて…ヒガシノ都市外れの低所得層の住む貧民街までやってきた。その街中にあるゴミ捨て場近くの分かりにくい古いシェルターの前に立った。
「おい。ここは壁だろうが。何壁に向かって訳わかんねぇことしてんだ。」
「何言ってるの?今から開けるわよ。」
プシュウと電動ドアーが開く。
「おい…嘘だろ…急に見えやがった…。」
「???さ、入って。」
そして、入った瞬間…言葉を失った。
「ここがあたしの家ウチさ!ちょっと散らかってるけ……はぁぁぁぁぁぁっ?!!」
「うっせぇ声出すな!!!」
そんな事言われても出すに決まってる。
薄暗くなくて、しかも何もかもが綺麗になって整理整頓されている。嘘でしょ?何があったの…。
そして何よりも驚いたのは、クラーガさんが
元気よくしていたことだ。
「あぁ、お帰り。」
「クラーガさん?点滴は?」
「あぁ、もう要らなくなった。」
「よぉ…殺戮者。」
「久しぶりだな。ここの方が話はしやすいが…魔将デヴィラル、悪いがこちらの部屋に来てくれ。フィーナはここで休んでいなさい。」
「わ、分かりました…」
あまりの動揺に思わず、敬語になってしまった。
クラーガさんとリベルトさんは、寝室になる場所へと入っていった。込み合った話があるのだろう。
それより全然落ち着かない…。
ついついソワソワとしてしまう。
あぁ…エジン早く帰ってきてくれないかな…!?
★★★★★
アレンside
エジンに教えて貰い、俺は金を売れる場所に来ていた。
俺の世界の通貨。縦長金貨を売りに。
「金を売りたい。 」
「かしこまりました。ではこちらに。」
「ん。」
本当はそのままスッと出したかったけど、後々面倒になることは目に見えているので、懐から取り出す仕草をした。
それでも違和感極まりなかったようだが。
縦長金貨、1875枚取り出した。
「!?」
従業員は、驚いた顔を見せた。
そんな驚くことでもないだろうに…。
まぁいいか。
「値段…見積もって貰える?」
「は…はいっ!!」
そう従業員が慌てて、
バタバタと動き出して約15分程。
先程の従業員ではなく、少しポチャッとした男の人だった。
「査定額150万円でどうでしょうか。」
「はぇ?!」
隣でエジンが素っ頓狂な声をあげる。
「ふぅん……それだけか…。」
相場の価格より何故か高い値段で、買い取られている事は分かっている。
だけど…ジーッ…とその男を見つめた。
「……………わ…分かりました…。200万円で…どうでしょうか。」
「のった!」
そんな訳で、俺の懐は潤った。
運がいい。ってのは…本当に運が良かっただけではあるんだけど…俺たちが行ったお店は、珍しい通貨を集めている店主がやってる宝石店で、俺の国の通貨はその人の価値に入ったらしい。
「エジン、次は布…見に行くよ!案内して! 」
エジンはただ静かに、首をブンブンと縦に振った。
「ここが、取り扱ってるお店。」
「いいね!あ、そうだ。エジン、この店の中にある生地から好きな柄選んで。」
「へ?わ、わわわかった…!」
「あ、そうだ。エジン。エジンが暮らしてるのはクラーガさんを入れて2人?」
「ううん、ねーちゃんがいる。」
「じゃあ3人暮らしか。」
「うん。」
「分かった。」
さてと女の子が喜びそうな柄は一体何かな…。
好みにもよるだろうし…。
「ねぇエジン。お姉ちゃんは、どんな柄好きそう?」
「うーんと…あ。これかな。」
「これだね。」
水玉模様の水色柄だった。
「うん!あと僕が好きなのは…あ、これ!」
エジンが目をつけたのは、機械の部品が描かれたなんともシックな柄だった。
「分かった。クラーガさんはどうだろ…無難に黒のストライプ?」
そんなこんなで、3人用の布を買った。2万円ほど。
他にもいい生地があったのでまとめて買いまくれば、
15万程したので、約17万円使ったことになる。
勿論、持ち物は中へしまってある。
エジンが荷物は?!と叫ぶので説明した。そしたら、口をあんぐりと開けて放心状態になった。
あぁ…またか…。
なので、背中を思いっきり叩いてやった。
「いっ…たぁーいいいいぃいいい!」
「そんなに強く叩いてないよ!ははっ…!」
エジンの反応が余りにもいいので思わず笑ってしまった。
「さ、次行くよ!!ここの食べ物買うんだから!! 」
俺ははしゃいでいた。何故なら、俺が食べたいモノが食べれるはずだから。
そして、先頭を歩いていたが今更気づく。
「あ、方向知らない。」
「はぁはぁ…!!歩くのはやすぎ!!しかもこっちだから!!」
「そっか。なら、戻ればいいね。」
転移!!
「へ?あれ?!さっきいた店に戻ってる?!なんで?!」
「転移、テレポートしたからね。」
「?!?!?!」
「もうその反応は見飽きたから、そういうものって納得して?」
もう俺はめんどくさくなって圧をかけた。
「わ…分かった……。」
エジンは頭の賢い子だ。物分りが良くて、すごく助かる。
「じゃあ改めて、道案内お願いします。」
「うん。任せて…!!こっち!!」
そう言ってエジンに連れてきもらったのはスーパー。
「な、懐かしぃいいいい!!」
スーパーの前で大声をあげてしまった。
「ちょっ!大きな声出さないでよ!」
「はっ!!ごめん!つい…ね?」
「はぁ…ボクの身が持たないよ…。変な目で見られる…」
「大丈夫。俺たち今、見えてないから。」
「あ…そう言えばそうだった…!」
「エジンもたまーにうっかりしてるよね。」
「たまにだけね!!」
「はは!とりあえず、見ようか。」
そうして中へと入れば俺は歓喜に満ち溢れた。
「待って待って?!キャベツにトマト…!きゅうりにじゃがいも!!人参!あ!大根もある?!あー!!ネギ!!ネギっ!!買わなくちゃ!えっとフルーツも売ってる!あーメロンじゃん!ぶどうまで?!」
もう大騒ぎだった。俺は初めて見て興奮したかのように振舞っていた。だって仕方ないだろ?俺は今までこれを望んでいたんだから。ポンポンと同じものを数個カゴの中に入れていく。
「さ!次!!」
「ど、どれだけ買うのぉおお?!」
そんな声を無視して来たのはお肉コーナー。
「はぁ……むね肉に、もも肉…!!唐揚げしなくちゃ!!これは食べなくちゃ!!これも入れる!」
さらに増えた。
「か、カートがあって良かった…。」
エジンがそんなことを言っていたのを俺は知らない。
次に来た場所は、調味料とか粉末飲料のコーナーだった。
「ブラックペッパーにニンニクチューブ、生姜、わさび、もみじおろし!他にもある!あ!塩とか砂糖も買わなくちゃ!!あー!!珈琲あるじゃん!!あ!紅茶も!!お茶も!!麦茶も?!いやもう買わなきゃ損だよね!買おう!!」
そうして、更にいろいろ増えた。
「ねぇ…これやばくない?」
また、そんな声は無視して。
俺が次に来たコーナは、お米コーナーだった。
「ご飯!ご飯!!あ!十六穀米?!これとか絶対いるじゃん!買う買う〜!!」
ドサドサドサッ!!!
更に増えた。
エジンは何も言わなかった。
「あー!!うどん?!ラーメン?!あ!!なら、カップラーメンとかあるんじゃない?!これは買わなくちゃ!」
またまた増えた。
エジンは遠い目をしていた。
「あ!卵もいるよね!あと飲料!!」
そうして、たんまりと増えた。
エジンはもう疲れきっていた。
最終的に俺の買い物はてんこ盛りの買い物カゴ8つ分買うことになった。
レジの店員のお姉さんはげんなりしていた…。そりゃそうだよね…申し訳ない…。
「お姉さん、すみません。会計、ほんとにありがとうございました。ニコッ…」
「ッ……///と、とんでもないです!」
申し訳なかったので、謝罪と感謝を伝えれば頬を少し赤らめて、大丈夫だと言ってくれた。
ほんとに親切な人だ。ありがたい。
会計をしてみると、かなりの高額になった。
そして、後々気づくことになるのは、店の商品がほとんどスッカラカンになってお店が困り果てることになるということをすっかり忘れていた。皆、買い物をする時は気をつけてね☆
食品達の金額は20万程使っていた。今まで、使った額は37万。
うーん…あれだな。
種とか苗とか買わなくちゃ!
そうして、更に買い物を続けた。
電気製品だとか、農業関連の製品。
買うものもあれば、買わなくて見た。ひたすら見た。
買い物を満喫していたら、あっという間に日が暮れていた。
「たくさん買えたね!収穫もりもり!」
「僕は疲れた…荷物はないけど…精神的に疲れた…はぁ…。」
「だらしないなぁ…それでも男?」
「男だけど?!12歳だけど?!」
「え?俺よりも歳上なの?」
「ぇぇえええええ!?」
新たな事実が発覚しつつ、転移でエンジの家まで帰った。