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星の子ポンタ  作者: 鴨川京介
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07.おふくろたちが来た

 翌日、おふくろと妹が最寄り駅についたと連絡があり、俺は迎えに行った。


「友朗、あんたこんないいところに住んでるのね。自然が残ってていいところね。」

 と、おふくろが言った。

「お兄ちゃん、その赤ちゃんってどんな感じ?」

「いや、もうすぐ会えるんだから。自分で確かめろよ。ばあちゃんも久しぶり。」

 俺と妹は相変わらずだ。そしておばあちゃんも来ていた。

「本当にともちゃんはすっかり大人になったね。見違えたよ。」

 と嬉しそうに俺を見ていた。

 早速駅前に止めていたワゴン車に乗り込んで帰宅した。


 こうして、朝峰家とご対面となったわけだ。

 もちろんポンタも一緒に。

 ポンタが金髪なのを見て、俺と血がつながってないとようやく理解したらしい。

 それまではなっちゃんとの間の子だとばかり思っていたとのこと。


「あら、この子。光ってないかい?」

「うん。それ俺にしか見えないらしいんだけど、ばあちゃんにも見えるの?」

「ああ、見えるよ。この子すごく気の巡りがいいみたいね。これは一度じいちゃんに見てもらった方がいいね。」

 と、ばあちゃんはそう言った。


 なるほど。俺が見えていたのは『気』なのか。

 確かに俺は幼いころから鍛錬してたから、それで見えてたのか。

 妹にも見えるらしい。しかし、おふくろには見えないらしい。

 やはりこれはばあちゃんの言う通り『気』なのかもしれないな。

 妹も俺の後をついて、3歳からじいちゃんの道場に通ってたからな。

 話を聞くと今でもダイエット目的で鍛錬を続けているらしい。


 早速、ばあちゃんはじいちゃんに電話を掛け、「いいから来な。」というばあちゃんの一言で、急遽じいちゃんもうちに来ることになった。


 親父は相変わらずアメリカに単身赴任なんで、報告がてら夜にでも全員揃ったところで、ネットのテレビ電話でもしてみるか。


「息子がいつもお世話になっております。」

 と、こちらでは朝峰家へおふくろとばあちゃんがあいさつしていた。


「いいえ、こちらこそお世話になってるんですよ。」

 と貴美子さん。

 そして話は今の状況の説明に。


「…あんたも相当複雑な状況になってるね。」

 ばあちゃんにあきれられた。


 二匹のタヌキも紹介した。というか、さっきからずっと俺に付きまとっている。

 妹の由美の命名で、ポン吉とポン子となった。

 雄と雌だそうだ。


 そのあと、俺の畑を案内したり、工房を案内したり一通り見せて回った。

「なるほど。これがあんたの3年間の成果なんだね。」

 とおふくろはうれしそうに見ていた。


 ばあちゃんも工房が何か琴線に触れたらしく、ここでどんなものが作れるのかと熱心に聞いてきていた。説明は源蔵さんに任せちゃったけど。


 夜になって、じいちゃんがやってきた。


 じいちゃんも一通りの事情を聴いてポンタを見ていた。

「確かにずいぶんと気の巡りがいい子じゃな。これはうちの道場を継げるかもしれんな。」

 とすでにじじバカぶりを発揮。


 みんながポンタのかわいらしさに夢中だ。


 夕食も終わったタイミングで、親父にテレビ電話した。

 親父はこちらで家族全員が集まっていることと、ポンタを見て

「俺もさっそく日本に帰る。」

 と宣言していた。


 どうやら本気らしく、1週間後には帰国してきた。


 じいちゃんは道場を弟子に任せてあるらしく、ことのほか畑や山を気に入り、当分世話になると宣言。

 ばあちゃんもポンタから離れられそうにない。

 おふくろと由美も同様で、全員でここで暮らすことになりそうだ。

 幸い部屋はちょうど足りている。

「由美はまだ大学行ってるんじゃなかったか?」

 と俺は由美に聞くと

「お兄ちゃん。私もうとっくに卒業してるよ。もう私24だよ。」

「就職は?」

「しばらく海外でも見て回ろうと考えてて、就職はしてないよ。お父さんもいいって言ってたしね。」

 確かにうちは親父の稼ぎが結構よかったから、由美が就職しなくてもやっていけてるのだろう。まったく、親父は由美には甘いな。もっとも無理して働いても俺のような目に合わないとも限らないしな。


 俺はいつもの朝のルーティーンをこなしていた。

 じいちゃんが俺の鍛錬を見て、久しぶりに組み手と指導をしてくれた。

 俺たちのそんな姿を見て、源蔵さんやなっちゃんやおふくろたちも型を習い始めた。

 いつの間にやらここに住む全員で毎朝拳法の稽古をしだした。

 おふくろと貴美子さんはダイエットになりそうだと喜んでおり、源蔵さんもいい運動になると張り切っている。


 俺はじいちゃんにここ数年でおかしくなっていたところを直してもらった。

 どうしても一人で鍛錬してると我流になっちゃうよね。

 そういう意味では由美はいまだに道場に通ってるということもあって、型もしっかりしていた。


 親父は東京本社に転勤になったのはいいが、ここから出勤するには遠いので、今までの自宅から通っている。

 せっかく東京に戻ってきたのに、今度はお袋がこっちに来ちゃってるから、相変わらずの一人暮らしだ。

 毎週末には金曜の夜からこっちに来て、日曜日の夜に東京に帰っていく。

 その間、じいちゃんに指導を受けたり、源蔵さんと一緒に陶芸したりして、親父もそれなりに楽しんでいるようだ。


「お前、結婚はしないのか?子供が先にできちゃってるけど。」

 とある晩、親父がそう聞いてきた。

「うん。実はお隣の菜月さんと一緒になろうかと思っている。まあ、まだ先になるとは思うけど。」

 と俺がそう答えると

「それならもう結婚しちゃえばいい。お前ももう30なんだから。」

 と両家を上げて盛り上がり、翌日には役場に婚姻届けを出すことになった。

 その日の夜中になっちゃんを呼び出して、二人で話をした。


「うちの両親が申し訳ない。改めて、プロポーズさせてもらいたい。俺の嫁さんになってください。」

 と用意しておいた結婚指輪をプレゼントしてプロポーズした。

「はい。」

 となっちゃんは嬉しそうに泣いていた。


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