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—―瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふーー
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「ねぇ、令。あたしの話、聞いてる?」
スマホを片手に歩く隣の男性に、蝶代が声をかける。
「くろすけに引っ掻かれたって話だろ」
令と呼ばれた男性が答えた。
「前に引っ掻かれたところ、痕が残っちゃったんだから」
「猫の傷はしぶといからな。治るやつも数週間かかるし。オレもやられたことあるよ」
「くろすけに?」
「野良猫に」
「それはお気の毒に」
自分が引っ掻かれた文句は言うのに、人のこととなると素っ気ないものだ。そんなことを思いながら、令はスマホに目を落とす。
「それ、さっきから何やってるの?」
「ちょっと探し物を、ね」
「そんなに重要?」
「まぁ、そこそこに」
「ふーん。彼女との数ヶ月ぶりのデートを差し置いて?」
令が軽く溜め息を吐きながら振り向く。何か言いたげな目だ。しかしその目はジッと蝶代を見つめると、また画面へと戻された。
ふてくされた蝶代はそんな彼を放って置くことにし、前へと向き直る。少し歩くペースをあげて、十字路に差し掛かった時だった。
「・・・! 蝶代、危ない!」




