行動開始
適当な食堂に入り、食事を取りながら情報を交換していく。
イレブンの情報はとても役に立つ。主に、侵入経路とかに使えそうだ。そして、普通に魚が美味しい。
「良い情報をありがとう」
「こっちも、衛兵たちの見回りのルートが分かって助かりました。これで、子供達がたすけれる……!」
「こっちも、入るルートの取り決めができそうだ。……ついでに、お前に俺の作戦を教えておこう。耳を貸せ」
「え、あ、はい!」
イレブンの耳に口を近づけた瞬間イレブンの鼻息が荒くなる。
もう、無視しよう。一々突っ込んでいたらこっちの精神力が削り取られちまう。
「――――分かったか?」
「……成る程。あの方法で……ですが、それを行うには少々足りないのでは……?」
「本来はとてつもない力を発揮できる。今までのは序の口だ」
前にこの方法を民家のない森で試したら鳥が羽ばたき、獣が逃げ、天の雲が凪払われると言った凄まじい効果があった。これを人間に向けるのだから確実に効き目がある。
「そう言えばツク……アリエス様と一緒の宿に泊まるロ……女の子二人はどうしたのですか?一応『隠』を護衛として着けさせて貰いましたが……」
「……無表情の茶色の毛をしたベガトリ族はリリン。俺の側付きの文官だ。灰色の毛をしたベガトリ族はオルゴ。こっちに来るときに知り合った」
それにしても『隠』か……。多分、イレブンの直属の部下と言ってイレブンの仕事の手伝いをしている数なしの奴らか。
「そうでしたか。それでは彼女たちは安全ですね。あ、それと言い忘れていましたが……」
「どうかしたのか?」
「一週間後のオークションにはウィルダゴル族が出品されると言う噂を耳にしました」
「……それは、少しヤバいな……」
イレブンの静かで神妙な声音と言葉にこちらも頭を抱える。
ウィルダゴル族には俺らには殆んど縁がない。ウィルベガトリ族のように使者を派遣するのではなく、ウィルエントレイ族のように表に出ている訳ではない。正真正銘のブラックボックスである。
そんな相手を捕まえた事もヤバいが、それを売るとなればどうなるか予想することは不可能だ。
「あくまで噂なので気にしないでください。では、私はこれで」
「ああ」
食事を取り終えたイレブンは立ち上がり、食堂を出ていった。
それにしても、さっき頬が緩みきっていたな。幼い子供を観察しに行くのだろうか。……て、金はこっちもちかよ。大人げねぇな……まあ、問題ないからやっているのだろうけど。
「やれやれ……」
金を払ったあと、近くの脇道に入っていく。
あいつら以外の気配がしないな。……ここら辺なら誰にも聴かれる事はないだろう。
「……いるんだろ、『影』」
「「「「…………………」」」」
行き止まりで振り返ると、黒いマントを羽織り黒いガスマスクのような物を着けた男女が立っていた。
俺をずっと付けていたようだが……そんな目立つ格好でよく気づかれなかったな。法術でも籠められているのか?
「動け」
「「「「………魔の王に忠誠を」」」」
古い言葉を話したと思ったら影たちはジャンプして屋根を伝ってどこかに行ってしまう。
やれやれ、こうでもしなきゃ俺から離れずに動かないとか、面倒な集団だな。
「さて、俺も動くか」
行き止まりの壁の一部を押すと回転扉のように回り、地下に続く階段が現れる。
流石エイン、マッピングは優秀だ。地下水路の出入口に非常用の通路や脱出路まで完璧だ。ここまでこれば、こちらも色々と行える。
「さて……」
軽くなったリュックからフクロウのようなお面と羊皮紙のスクロールを取り出す。
この二人は紙束をもらったあと、エインが送ってきた代物だ。これらがあれば、オークション会場に侵入できるらしい。
(ここまで、お膳立てされたんだ。必ず成功させないとな)
そして、成功したらエインにボーナスを与えよう。




