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爆破の夢

「ふわぁ……」

僕はボロいアパートの一室でワイドショーを見ながらポテチを食べる。

あれから三年が経った。あの二人を殺して一人を拷問した後、俺は保護観察処分となった。世間は僅か四歳の少年が二人もの人間を殺し、一人を生きた死体に変えた事に大層賑わっていた。

今見ているワイドショーも俺の関連だ。

『えー、それでは『少年A』を専門家はどう見ますか?』

『彼は所謂ギフテッド……天才と呼べる子供でしょう。彼はIQ200と極めて高い知能指数を保有しており、洞察力も極めて高く、更に特異体質で常人を越える身体能力も保有しています』

『そんな子供が、何故あれほどの殺人をしたと思いますか?』

『彼は取り調べで『嘘はつかない。だが真実も話さない』と公言しており、当日、あの山で何が起きていたのかは警察関係者も一部しか事件の真実が分かっておりません』

『それでも、彼が有罪判決に至らなかったのには、被害者たちの残虐な行いがあるでしょう』

『はい。それは間違いないと思われます。被害者たちは百人近くの女性を陵辱し、生きたまま土に埋めており、その残虐性と罪の重さは許せる事ではないです。事実、その真実が公表されたとき、世間は彼を擁護する風潮になりました』

『殺人を犯す前に被害者らは六歳の少女を誘拐しようとしたらしいですが、それについてはどうお考えで?』

『それについても少年Aは『彼女についてこれ以上教えることはない。彼女の事で真実を伝えれば彼女の心に深い傷がつく』と発言しており、彼女自身『言いたくない』と言っている以上誘拐しようとしたと言う事しか分かりません』

『最後に、少年Aに伝えたい事はありますでしょうか』

『―――少年Aが真っ当な人生を歩んでくれる事を祈ります』

コメンテーターと専門家の老人が話している内容を聞いた後、俺はテレビの電源をオフにしてポテチの袋を捨てる。

真っ当な人生ねぇ……そんなの、送れないのに。

「くそっ!またダメだ!」

「……父さん」

汚い姿をした父親が部屋に入ってくると僕の体を蹴り飛ばす。

事件の後、父親は会社の倒産で仕事を失くし、母親に捨てられてこのボロいアパートで過ごすようになった。そして幾つもの会社を点々としていくと、次第に優しい父親の姿は無くなり暴力的な性格に凶変していった。

タバコを吸うようになり、酒も前よりも飲むことが多くなった。麻薬にも手を出していたらしく、部屋のゴミ箱には注射針が捨てられている。

そして、僕に対する虐待も始まった。

暴力は当たり前、食事を与えられない事もザラだ。この体の負担的な面で俺は大量の食事を取らないといけなかったから常に空腹に悩まされる生活を送る羽目になった。

(……下らない。実に下らない)

会社の倒産の理由は父親が会社でのミスが原因だし、それが他の会社にも伝わったからどんな会社でも長くは持たず、妻に捨てられるのに……それを理解していない。

実に、実に下らない。

「酒だ!酒を持ってこい」

「……分かった」

怒鳴る親父に従い、俺は冷蔵庫に保冷されているビール缶を幾つか親父に手渡す。

……仕方ない、殺すか。このままだと俺の命の方が危ない。事故に見せかけて殺すとしよう。

「うわっ!?」

ビールを取るためにずらしていた小麦粉の袋を元の場所に戻そうとしたところで台から落ちて小麦粉の粉をぶちまける。

「てめぇ……!」

「雑巾を買いに行ってくるからちょっと待ってて!」

怒る親父を宥めてから粉をシャワーで落として家の外に出る。

事実、家の中には雑巾がない。掃除機もないから、買いに出掛けるのも当たり前の道理だ。

『■■君、どうかしての?』

「いや、雑巾を買いに行くつもりだけど、どうかしたの?」

『ううん、何でもない』

部屋の外に出ると、家の前で蹲っている少し年上の少女に話しかけられる。

この少女は父親の虐待のせいで失語症を発症し言葉を喋れなくなってしまったため、手帳でコミュニケーションを取っている。似たような境遇のため、比較的仲の良い隣人だ。

『ねぇ、買いに行くのついていって良い?』

「良いけど、何でだ?』

『家に居たくないの』

「……分かった。一緒に行こう」

俺は少女と手を繋いでアパートの階段を降りていく。

これで少女を殺す事はない。こいつの親も今は仕事だし問題ない。ついでに言えば大家も今日は町の集まりだし、二世帯しか住んでいないから巻きこまなくてすむ。

さて、親父の性格からして、ビールを飲むことはなく、麻薬も尽きているからイライラが止まらない。とすれば、どうするか。

答えは単純。親父はタバコに火をつける。そして、親父は高卒で働き始めたためとある現象を知らない。


ドゴォォォォォン!!


「っ!?」

「危ない!」

突如、親父が借りたアパートの部屋が凄まじい音と共に爆発し、少女を衝撃で落ちてきた物から庇うために少女の上に覆い被さる。

親父は粉塵爆発と言う現象を知らない。そして僕は七歳。いくらギフテッドとしてもそれを故意に起こさせる事はできない。それなら、事故死に見せかけて殺す事も可能だ。

『た、建物が……!』

「……マジかよ」

次の瞬間、ボロいアパートはそのまま崩れ落ちる。

この年期の入ったボロいアパートには粉塵爆発に耐える事は出来なかったようだな。


―――――再び、■■■■は殺人を犯した。


=========

「……………(ツンツン)」

「ん……?どうしたんだオルゴ」

俺が甲板の端で昼寝をしていると、包帯を取り替えたオルゴが立っていた。

結構時間がたった気がするな……それにしても、また懐かしい夢を見ていた気がするが……気のせいか?

『そんなところで寝てると風邪引くよ?』

「大丈夫だって。ここは日が良く当たってるし問題ないよ」

『その自信はどこから……?』

「そう言えば、リリンは?」

『ノリスとテインの看護しています』

「そうか」

そう言えば、船内をまだそこまで見ていなかったな。暇だし見てくるか。

「今から船内を見て回るけど一緒に行くか?」

『分かりました!』

俺は別れないようにオルゴと手を繋ぎ、船内に入っていく。

何か、前にも手を繋いだ気がするが……気のせいか?


「お熱いねぇ……そして若いねぇ」

「せ~ん~ちょ~お~!」

「げっ!」

「げっ!じゃありません。仕事に戻りますよ!」「誰か止めてくれーー!」

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