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海原へ

「この船だな」

「……デカい」

「………(コクコク)」

俺らは船着き場を歩き、そこで一つの船の前まで行く。

船の帆にはサンファン号と大きく書かれており、ガレオン船……みたいな感じの船かな。

「おう坊主ども、どうしたんだい?」

「アクアポリス行きの船はこれで良いか?」

「おう、合ってるぜ。一人頭三千リクスな」

「ああ、分かった」

船員たちに命令を下していた男に硬貨が入った小袋を三つ渡して船に乗る。

万が一に備えてそこそこの量の硬貨を持ってきておいたお陰でオルゴを乗せる事ができたな。それにしても、一回も船に乗った事がない筈なのに乗った気がするんだよな……気のせいか?

「あ、それと坊主は三階の雑魚寝部屋で二人は二階の雑魚寝部屋な」

「分かった」

下の方にいた船長の大声に答えて言われた通りに別れて雑魚寝部屋に入っていく。

(……まあ、一日二日寝るだけだし、問題ないか)

雑魚寝部屋は以外と広かったが、中に既に乗っていた人たちの荷物で溢れかえっていた。しかも、その人たちが筋肉ムキムキの体格の良い人ばかり。やれやれ、嫌な予感がするな。

「おいガキ。てめぇのようなガキが来るような場所じゃねぇ。さっさと帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな」

「「「「ギャハハハハハハハハハハハハ!!」」」」

「……一々そんな事に突っかかると思ってんのか、この筋肉だるま」

「………あ?」

下品な笑い声が響く室内で挑発を挑発で返すと静まりかえり、怒りの気配が漂ってくる。

さて……脳筋どもを黙らせるためにはやっぱり力の差を見せつけないとな。

「こんの……クソガキィ!」

「テレフォンパンチありがとう」

「ごふっ!?」

怒った男の拳を右手で受け止めて左足をつっかえ棒にして男の体勢を崩して床とキスさせる。

「生意気なガキが!全員でやるぞ!」

「「「「おお!」」」」

床に倒された男の命令で見守っていたやつらが立ち上がり、敵意を見せてくる。

「死ねぇ!」

「殺そうとした事もないのにか?」

拳を掴み倒された男と同じ要領で床とキスさせる。

「がっ!?」

「てめぇあ―――――――!?」

男の一人の頭を掴み床に叩きつけ頭の上に乗ってバク転しながら近くの男の金的を蹴り飛ばす。

うわ、ふにゅってしたふにゅって。気持ちわりぃ感覚だな。金玉を攻撃する時はきちんと膝でやっておこう。

「もう……面倒くさい」

殴り、払い、受け、流し、押さえ、投げる。ナイフ等の武器を持っていようと拳だろうと関係なく、俺の前では倒れるだけ。

「……終了」

気づけば、室内にいた男たちは全員床でのたうち回っており、俺は息一つ荒げずにその中心に立っていた。

船が動いてる。と言うことは、既に出港したと考えて良いだろう。

「てめぇ……何者だ……」

「アリエス。それ以上でもそれ以下でもない」

「くっ……敗けだ。俺らの完敗だ」

「潔いな」

男の頭を踏みつけるのを止めてリュックを背負い部屋の外に出る。

あんな部屋に居てたまるか。

「……遅い、アリエス」

『アリエスさん遅いです』

甲板に上がると、リリンとオルゴが仲良く海を眺めていた。

俺を待っていた、と考えて良いだろうか。

「……荒々しい気配。アリエス、喧嘩した?」

「まあな」

『ケンカはダメですよ!』

「売られた喧嘩は倍にして買うのが俺の流儀でね」

『もう……それだと傷が絶えませんよ』

「とは言ってもな……」

「……そうだ、そろそろ包帯を替えないと」

「頼めるか?」

「……分かった。オルゴ、行くよ」

『うん、分かった』

リリンがオルゴを引いて船内に入っていったのを見送り、俺は海を眺める。

それにしても……リリンやオルゴとの話をしていたときから奇妙な既視感に襲われるな……。まるで、覚えていない記憶が呼び起こされるような、そんな気分だ。

あの駄神が何かしらの手違いで記憶の完全な消去に失敗してた……訳ではない。事実、俺は前世の思い出を何一つ思い出す事ができない。となれば、ただの既視感だと結論付けれる。

「おー坊主!」

「……何かようか?」

海を眺めていると隣に金を渡した船長のようなダゴル族の男が入り話しかけてくる。

「いや、あの嬢ちゃんたちはどうしたんだ?」

「包帯の取り替えに行ったよ」

「おい坊主。あの嬢ちゃんは十年もすればとんでもねぇべっぴんさんになるからよ、維持でも囲っとけよ?」

「俺は囲うことはしない。自分の意思で付いてくるならそれで良いからな」

「かー!その年でその考え、将来大物になれるよ」

「ふん……そう言えば名前を言ってなかったな。俺はアリエス。あんたは?」

「俺はラルク。この船の船長さ」

船長が持ち場を離れて良いのだろうか。

「そう言えば、さっき部屋を見たとき全員のたうち回っていたけどよ何したんだ?」

「喧嘩を売ってきたから死なない程度に倒した」

「マジかよ……。そう言えば、坊主はアリエス商会を知っているか?坊主と同じ名前の商会だよ」

「ああ。王都では有名だからな」

「あの商会の着物って言う服を女房が欲しがっててよ、こっちの方に卸せないのかねぇ」

ラルクの話によれば、王都で流行している着物をワタツミの女性も欲しがっているらしい。まだ余裕がないからこっちに販路を伸ばすつもりはないが……まあ、伸ばすのは数年はかかるかな。

「ま、向こうにも何かしらの要因があるんじゃなぇか?ほら、あの商会は数年で急速に大きくなったから他の商会のやっかみも多いらしいし」

「ま、俺には関係ないんだがな!ガッハッハッ!」

「はあ……」

豪快に笑うラルクに少し呆れてしまう。

まあ、ラルクは面白いやつだし、気が良いのだろうな。

「なあ、この海域には海賊は出るか?」

「あん?まあ、たまに出るかな。その際は徹底抗戦するさ」

「それなら良い」

やはり、良くでるのか……。

「おろろろろろろろろろろろろろろろろろ……」

「……船長、乗り物酔いの薬をくれ」

「おう」

奇妙な音がする方向を向くとノリスが海に吐いており、テインが船長に乗り物酔いの薬と思われる丸薬をもらっていた。

ノリスは船酔いしやすい体質なのかねぇ……。

「あ、ツクモさ」

「…………(ニッコリ)」

「……アリエスもこの船に乗ってたんだ」

「まあな」

分かればよろしい。

「……そう言えば、リリンとオルゴが船内で包帯を巻き替えていたけど、アリエスがやらなくていいの?」

「異性よりも同性がやった方が気分的に良いだろ?」

「……まあ、確かに」

「早く持ってきて……うぷ」

「分かった」

テインと少し話をしたあと、テインはノリスの元に走っていった。

「あの二人とも知り合いか?」

「同じ乗り合い馬車に乗っていただけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「ま、そりゃそうか」

「そう言えばラルクは仕事に戻らなくて良いのか?」

「どういうこ」

「船長!やっと見つけました……!」

「げ、グルニカ!?」

「仕事に戻りますよ!」

「痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたっ!?」

グルニカと言う女性が船内から出て来てラルクの耳を引っ張って舵のある先頭まで行ってしまった。

あいつらが帰ってくるまで海でも眺めていようかな……。


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