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馬車の会話

(さて……どうしたものか)

俺は馬車に揺られながら考えを巡らせる。

他の捕らわれていた人たちは精神的な疾患は無かったため、適当に元の家に帰したも良いだろう。だが、あの四人は違う。リリンの話によると、あの四人の親はあの盗賊にやられてしまったらしい。そのため、頼るべき人がいない、とのことだ。

個人的には問題ないのだが……あいつらの精神疾患が問題だ。二重人格や精神崩壊(仮)はギリギリ問題ない。自傷の方は止めさせれば何とかなるだろう。

問題は……

「近寄らないで下さい!」

「……………」

俺がタウロクロノ族の少女に話しかけようとすると恐怖に体を震えさせて抵抗してくる。

あいつの事を観察したが、あいつのこれは男性恐怖症である事が確定している。他の奴らよりはまだましだが、一番社会不適合である事は間違いないだろう。

「……(ツンツン)」

「どうかしたか?」

「……(ツンツンツンツン)」

肩を突っつかれた方を見ると、崩壊少女が石板に文字をつついている。

こいつ、文字を書けるのか。それなりの名家で生まれたのだろうか。文字の内容は……『名前を教えて?』あ、確かに名前を教えてなかったな。

「俺はアリエスだ。お前は?」

『オルゴ・ラドゥ。ラドゥ男爵家の五女』

ラドゥ男爵家……サリウル国にあるブドウやリンゴ何かの果樹が主産業の小さな領地だ。

「だけど、何でサリウル国の方にいないんだ?」

『アレグレス国のベルメール公爵家のオルリス様と結婚するためです』

オルリス……ベルメールの現当主。確か年齢は……二百を軽く越えてた気がする。魔族は種族に差があれど基本的に寿命が長いが、二百歳以上となるとどんな種族でもよぼよぼの爺さんに相当する。そんな人物との結婚……政略結婚か?まあ、禁止されている訳ではないから良いのだけど、あんまり好ましくない。

『盗賊に捕まったため、もう婚約は打ち切られているでしょうけど』

「ま、当然と言えば当然か、あの好色爺の事だしな」

オルリス・ベルメール……と言うよりもベルメール家自体昔から好色家の家系だ。側室ではなく愛人として非正式な妻をかなり娶っているらしい。

「ねぇねぇ!何話してるの?」

「どうしたんだ?えーと……」

「アリス!私は『アリス』」

「そう、アリスか。いや、ちょっと名前を聞かれたから答えてたんだ」

「そうなんだ!」

俺がオルゴと話していると『アリス』が隣に座ってくる。

アリス……もう一つの人格の話も聞きたいところだが、いま聞くことではないだろう。

「……そう言えば、アリエス」

「どうかしたのか、テイン」

「アリエスのその翼……ヤマトの皇子と同じみたいだけど……まさか、本人何て事はないでしょうね?」

「そんな事はないさ。皇子のような身分がこんなおんぼろ馬車に乗るわけないだろ?」

「……そう」

嘘だけど。まあ、手綱を握っているテインが驚いて馬の操作を間違ったら怖いし、このままで良いだろう。

「うー……外して」

「ベラ、一応着けてて」

向かい側の方に視線を向けると自傷少女ベラが手に着いている枷を外そうともぞもぞしてそれをリリンに止められていた。

ベラはリリンに懐いている。レズとは違うようだが、端から見たら百合百合しい。リリンはどちらかと言うと中性的だし、ベラは年齢よりも幼く見えるからだろうか。

今は幼いから仲の良い友達に見えるが、これが高校生くらいの年齢になっても続いてたら本当に百合百合しい状況になっているだろう。

「それじゃあ、俺は寝るから起こさないでくれ」

「はーい!」

『分かりました』

二人に言いつけたあと、瞼を閉じて眠りに入る。

頭も少し痛いし、考えるのを放置するためにま一先ず寝よう。

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