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精神疾患の少女たち

「グズどもがぁ!」

「ひ、ひぃぃぃぃ!」

地面に転がった盗賊の顔面を血濡れたブーツで踏みつける。

アジトに向かうと、そこは地獄絵図だった。

男どもは殆んど裸で手に木の枷をつけられた女性を真っ昼間から凌辱していた。呆れ果てて殺す気も失せ、取り敢えず奇襲を仕掛けて大体の奴らを無力化して縄を縛り付けた。

『……なんだ、これ』

盗賊を縛り付けた後、アジトの中を探っていた時にとある建物に入った瞬間、愕然した。

むせ変えるような性交の匂いに酷い死臭と陰鬱な雰囲気も相まって気持ち悪さを感じる。そして、それ以上にその中にいた奴らに驚いた。

中にいたのは、俺と同い年から少し年上程度の少女ばかり鎖に繋がれていた。しかも、その多くが目を虚ろにして生きる気力も失っていた。

この盗賊は俺と同年代程度の幼子にすら手を出していたのだ。それも、表の奴らよりも多く凌辱されていたのだ。

俺個人そう言った出来事が無性にムカつく。そう言った事を見過ごせる訳もなく、そしてそれを行った奴らを許せないと思う人間だ。

そう。こいつらは俺の逆鱗の一つに触れたと言うことだ。

(……生かす価値も無くね?)

という結論に至り、捕まえた盗賊を一人づつ引きずって木の裏まで連れていき、丁寧になぶり殺したいたのだ。

この男はその中で十人目だ。

「な、なんがふっ!でだ!?何ごふっ!でいきがっ!なり……!」

「お前らがいたいけなガキどもを凌辱していたからだ」

男の非難に耳を貸さず、俺はひたすら蹴り続ける。

俺の脳裏にはあいつらの生きる気力を失った目が、そして、誰か分からない(・・・・・・・)人物が助けを求める(・・・・・・・・・)あやふやな記憶(・・・・・・・)がこびりついている。

こいつらだけは全員殺す。

「ゆ、許ひて……」

「死ね」

顔が血にまみれ身体中の骨がへし折られた男の命乞いを無視し顔面を力強く踏みつけると破裂する。

やはり、人を殺すのは楽しくない。人を殺すやつらも、そいつらを殺す俺も、大嫌いだ。

「さて、次は……」

「アリエス君大丈夫!?」

木の影から男の死体を引きずってゴミのように他の死体に投げて乗せているとノリスが俺に飛び付いてきたため、手を持って受け流す。

「何しに来たんだ、ノリス」

「いいじゃんいいじゃん。それよりも、この死体の山は?」

「そ、そいつだ!そいつが一人ずつ殺していってんだ!」

起き上がり、積み上げられた死体の山を見るノリスに盗賊の一人が恐怖に染まった顔で叫ぶ。

……次はあいつにしよ。

「人を無駄に殺しちゃ駄目だよ!」

「……離せ、ノリス」

「離さない!離したら殺しに行くんでしょ!?」

叫んだ盗賊に俺が近づこうとすると、ノリスが背中から掴んでくる。

くっ、まあノリスがきた以上殺すことはできないだろう。

「……仕方ない。取り敢えず、彼女らに羽織れる物を与えてくれ」

「うん!みんなちょっと待っててね」

そう言ってノリスは馬車の方に向かっていったため俺はあの建物にはいる。

……何人か息をしていない。手足を切られて達磨にされた死体もあれば外傷らしい外傷がない死体もある。だが、共通して数時間前に性交された事がよく分かる。

クズどもが。ノリスが来なければ皆殺しにしていたのに。殺せない事は恨めしい。

「……大丈夫か?」

「ひいっ!来ないで!」

「おい大丈夫か!?」

「来ないで!」

生きていた少女の一人に話しかけると、突然恐怖に染まった顔で抵抗し始める。

あー、このタウロクロノ族の少女は完全に男にトラウマを持っているな。後でノリスに頼むか。

「そっちは大丈夫かい?」

「……………………」

「……大丈夫か?」

「……………………」

「おーい、大丈夫かー?」

「……………………」

あ、こいつは駄目だ。このベガトリ族の少女は精神崩壊を起こして自我が完全に失っている。……仕方ない、か。今度メディス研究所に連れてって疑似転生してもらおう。これは俺には手に終えない。

「……大丈夫か?」

「あ、私は大丈夫です」

妙に明るいな。……嫌な予感がする。

「何か問題あるか?」

「問題……ごめんなさい!」

「おい、どうした!?」

奇妙なまでに明るかったダゴル族の少女が一転し、恐怖に涙を流して身を縮こませて謝罪し始める。

これは、所謂あれか?

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

「二重人格……なのか?」

正式名は解離性同一性障害。単純に言えば精神が複数個に別れてしまう精神疾患。主な原因は過剰なストレスや経験……だったはず。

今回の場合は凌辱された経験からだろうな。……この状態になるまで凌辱され、心の均衡を保つために精神が分離してしまった……と考えて良いだろうか。

「大丈夫かい?」

「……うん」

部屋の隅に縮こまって怯えていたエントレイ族の少女に話しかけると僅かに首を動かして反応する。

この子の体……いたるところに打撲痕がある。暴行を振るわれたのか?いや、他にも首筋にかきむしったような痕があるし手首にはナイフのようなもので切っているような痕がある。

これは……自傷行為の痕だ。普通ならあり得ないが……こんな状況だ、仕方ないだろう。

(それにしても……)

男性恐怖症、精神崩壊、二重人格、自傷……完全に手詰まりですねはい。俺の知識ではゆっくりと時間をかけて療養するのが一番としか分からない。と言うか、精神の疾患なんて、素人が自己流で治そうとすることは最もいけないことだ。取り敢えず、傷付ける行為だけは絶対にしないようにしよう。

「……いた!」

「……アリエス、何してるの?」

俺が対策を考えていると、テインとリリンが顔を出す。

よかった、こいつらを取り敢えず運ぶか。

「リリンはタウロクロノ族の少女を頼む。絶対に男性を近づけさせるな。テインは怯えてる少女を頼む。ここでの事は思い出させないように頼む」

「「どうして?」」

「ここでの凌辱で精神がヤバい状況になってるんだ。取り敢えず頼んだ通りに運んで!」

「了解した」

「……分かった」

二人を気迫で黙らせて精神が特にヤバい状況の二人を運ばせ、俺は自傷少女と崩壊少女を抱えて外に出る。

こいつらはあの二人みたいに暴力的な暴走を引き起こす訳ではないからまだマシなんだよな……まあ、精神崩壊を起こしている方にはそんなこと言えないけど。


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