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深夜の会議

夜が深くなり、客人や急遽宛がわれた部屋で眠りにつきはじめた頃、俺、親父、ウルメアは昨日食事を取った場所に静かに集まる。

翼の音もしなかったし、ミュウが来ている心配はない。来る前にブリストやリリン、ヨモルが寝ている事を確認した。あいつらに話す内容ではないしな。

「……どうぞ」

「ありがとうございます」

「ありがと」

親父が珍しく紅茶を振る舞うのに少し驚きながら啜る。

……意外と美味しい。ブリストには劣るが、急な事だったし仕方ないことだろう。

「……何故、ツクモ様がこの会議に参加しているのですか?」

「そんなの、簡単だよ。……ミュウを結果的に傷つけようとしたんだ、元凶を潰すためにも会議に参加したんだ」

会議に参加する前、冷静になって考えを巡らせて今日の事件と数日前の事件を考察した。

二つの事件とも、この大陸には特定の場所にしか生かされていない向こうの大陸の人間だった。そんな人間が二回も俺の前に現れるのはおかしい。それに、一回目は俺だとしても二回目がミュウなのは一貫性がない。どっちも御神の血が濃いこと以外に共通する項目がないのだ。そして、暗殺者は基本的に目的や目的に付随する者しか殺さない。今回も親父やウルメア、ランスロットがいたのに俺らにだけ攻撃したのが良い例だ。

となれば、黒幕の目的として考えられるのは三つ。

一つ目はヒューマンたちと魔族との戦いで利益を得ること。

これは可能性としては低い。それなら俺らよりも親父を殺した方が起きやすい。まぁ、目的の中にはありそうだけど、根幹の目的ではないだろうな。

二つ目は御神の血が濃い者を殺すこと。

確かにあり得るが、それも根幹の目的にするには薄い。何せ、ミュウや俺を殺せばどうなるか分かったもんじゃないからな。戦争の道に進む可能性もあれば国王直轄で犯人を探すこともあり得る。慎重な犯人のことだ、それは無いだろう。

三つ目は……俺個人を狙っていること。

これはあり得る。俺はかなり厄介な立ち位置にいるし、どちらも俺が巻き込まれているわけだから俺を公衆の面前で『ミュウを庇って死んだ』と思わせることも可能だからな。それに、使われていた毒物もそこまで強力な物ではなかったし、確実に殺すつもりはなかったと見てとれる。

俺個人を巻き込むなら問題ないが、ブリストやミュウ、リリン、ヨモルが巻き込むのは気にくわない。……確実に、俺が潰さなければならない。

「……不本意ですが、分かりました」

「……会議を進めようか」

ウルメアは不服そうな顔をするのを流し見して親父の方を向く。

うわ、顔が憤怒で真っ赤だ。まさに鬼の形相、てやつか。

「取り敢えず今考えている謎は主に二つ。一つは犯人。もう一つは暗殺者の入手経路」

「あの暗殺者が自白してくれれば話は早いのですが……」

「多分、無理だろうな」

尋問にかけたヒューマンの暗殺者も最後まで口を割らなかった。あの女との繋がりさえ分かれば楽だが……今、あの女がどうなっているかさえ分からない。隙を見てあいつらの場所に向かうか。

「尋問は確実にするが、他に何かあるか?」

「その尋問に(わたくし)も参加させてもらいます。……妹を、傷つけようとした奴を許すわけにはいかないので」

「うむ。して、ツクモはどうする」

「俺は関わらねぇ。こっちはこっちの情報網を使わせてもらう」

「……分かった。それでは、解散」

親父が立ち上がり、会場から外に出ていき、ウルメアが外に出てから外に出る。

取り敢えず、情報屋から情報を入手するか。そしてナインテンたちの場所に行くか。

「……ツクモ様。お邪魔しています」

「どうかしたのか、ブリスト」

自室の扉を開けると、生地が薄いネグリジェに上着を着たブリストがいた。

さっき見たときには寝ていると思っていたが……寝たふりだったのか。てか、何時もそんな服で寝てたのか。

「ツクモ様にお話したいことがありまして」

「どうした、言ってみろ」

「……これを、見てくれませんか」

ブリストは恥ずかしそうに顔を赤めながら俺に背を向け、パンツを下ろして裾を捲る。

い、いきなり何してんだ!?一体、何の目的が――――

「これが何か、分かりますか?」

「……魚を囲む円。そして五桁の数字(・・・・・)、か?」

ブリストの臀部につけられた焼き印を凝視する。

五桁の数字は10963。あの女とは違うが、同じような焼き印だ。それとその隣についている焼き印は一体……。

「あの、そこまで凝視しては……」

「あ、あぁ。ごめん」

恥ずかしがって赤い顔をこちらに向けられて凝視するのを止める。

そりゃいくら知り合いでも異性に自分の臀部を見られては恥ずかしいだろう。俺も自分の裸体をブリストやミュウたちに見られたら恥ずかしいしな。

「数字の方はあの女とは違ったが、同じようなものだった。もう一つの魚の焼き印は何だ?」

「ごめんなさい、それは分かりません……。ですが、私と同じ牢に入れられていた人達はみんな同じ焼き印をされてました」

「……ありがとう」

「は、はい……」

俺がブリストの頭を撫でるとブリストは恥ずかしそうに上目遣いをしてくる。

あの女とブリストに似た五桁の数字があった。つまり、同じ場所から輸出されたという事だ。暗殺者を差し向けたのは誰かは知らないが、暗殺者の入手経路はあいつだろう。

(となれば、さっそく動くか)

「それでは、失礼します」

「ああ」

撫でられるを止めると、頬を緩ませながらブリストは部屋から出る。

さて、これで一人になったな。

「……来ているんだろ、サード(・・・)

「ええ、来させてもらいました」

再び扉が開けられると似合わないドレス姿のウィルエントレイ族のサードが入ってきた。

子供が背伸びしてドレスを着ているようにしか見えねぇ……。けど、来たと言うことは俺の行動を予想したのか。やはり、侮れない。

「エインを呼べ。……パォンデロー公爵の情報を徹底的に調べされろ」

「分かりました。……奴隷販売何て、糞くらえ、だ……!」

サードが怒りに満ちた顔をしながら部屋の外に出ていく。

冷静なサードがあそこまで怒りを表情にだすのか。奴隷販売に嫌な思い出でもあるのだろうか。まぁ、それは後でいいや。さっさと寝よ。



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