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裏側の伝令

「ふわぁ……」

「眠いね、ツックー」

「ああ……」

朝食を食べ終えた俺とミュウは欠伸をし、眠気眼を擦りながら廊下を歩いていく。

書類の仕事を幾つも終わらせていたら、かなり時間がかかってしまった……。結果、俺は睡眠不足になってしまった。ミュウは俺の部屋から出た後、睡眠時間を削って物語をたくさん読んでいたらしい。

程々にしとけよ、ミュウ……。まぁ、俺も言えた立場ではないのだがな。

「お、お前は昨日の……!」

「……ランスロットか」

妙に子供っぽい口調を聞いたなと思い顔をあげると、礼服姿のランスロットがいた。

どうやら、ランスロットもパーティーに参加する人たちの一人のようだ。まあ、騎士団長の息子だから仕方ないといえば仕方ないか。

「そちらのお嬢さんは?」

「あ、ミュウはミュウ・アストレア。おはようございます、ランスロット様」

「あ、ああ。おはよう」

睡魔を振り切って笑顔で挨拶をするミュウにランスロットは頬を赤らめて挨拶をする。

……?なぜ頬を赤らめているんだ?

「そう言えば、ツクモ様は何をするつもりですか?」

「パーティーの最後の確認だよ。一緒に行くか?」

「そうさせてもらいます」

俺の隣を歩くランスロットと話ながら俺は会場に向かう。

ランスロットは話してみると、意外と実直な性格をしている。騎士や兵士としては正しいのだろうが、もう少し柔軟な考えができると面白いか。

「さて、ついたぞ」

「うわぁ……!」

「すげぇ……!」

パーティー会場に着くと二人が感嘆の声を出しているのを見て安心する。

良かった、二人ともが綺麗だと感じてくれると言うことは、他の者たちも綺麗だと感じてくれるだろう。

「あ、ツクモ様」

「……アリエス、遅い」

「すまないなヨモル、リリン。俺は仕事に行くから後でな」

「ああ」

「うん!」

壁際で書類を書いていたヨモルとリリンに合流し、二人と別れる。

俺が今やるべき仕事は会場に朝早くから来る商人たちと面会すること。朝早くから来て俺と関わりを持ちたいとのことだ。俺がアリエス商会の代表であるアリエスだと知らないからできる所業だ。

「……アリエス、面倒くさそうな顔をしている」

「そんな顔で客人たちに会わないでくださいね」

文官の二人にも感情が分かってしまうほど顔に出ていたのか。

笑顔を張り付けてでも何とか捌くか……。


「くそったれどもが!!」

近くにあった紙束を勢いよく壁に投げつける。

権力を使って利益を上げようとすることは理解できる。上がることでしか生きていけないのが商人と言う生き物だ。俺も一応商人だから理解できる。

「それでも、国の権力でアリエス商会を潰そうとするのは頭がおかしいだろ!」

やれ『アリエス商会は私に賄賂を送っている』のだの『あの商会は奴隷商売を行っている』だの根も葉もないデマを吹き込みやがって!言ってないとはいえ、アリエス商会の代表である俺に何を言っているんだ!!

俺は、あいつらと契約する際に契約を拒否した人間を俺がこの手で、あいつらの目の前で処刑していった(・・・・・・・)。そのため、あいつらの中には契約違反した場合俺が直々に始末しにいくと言うことを強制的に理解させている。そんな奴らが、俺を裏切るような真似をするわけねぇだろ!

「あいつらの商会を全部潰してやろがっ!?」

「……アリエス、落ち着いて」

「す、すまないなリリン」

「……ん」

リリンが持っていた紙束に頭を叩きつけられて激情が押さえつけられる。

あいつらは国内でも選りすぐりの商会の代表やその代理だ。俺の権力でも潰すのは難しい。……いや、かなり非人道的な方法でなら問題なく潰せるが……。やれば、確実に俺の力が世間にバレてしまうからできるだけとっておきたい。

「でも、リストアップは完了したから問題ないですね」

「だが、まあ……そうだな」

俺はヨモルから紙を貰い、確認する。

この紙には賄賂を送ってきた商会の名前が丸つけされている。権力者への貢ぎ物としては良いことだろうが、あいつらは贈り物を送って自分の利益を獲得しようとしていた。そのため、ここで貢ぎ物を与えればそれは賄賂に値する。

賄賂を送ってきた人間は商会で抱えている元暗殺者たちを使って探りを入れてさせてもらおう。情報に強い暗殺者たちはそっちの方に回しているからな。

(簡単には、尻尾をださないか……)

だが、本来の目的である奴隷商売を裏でしている商会たちは俺に賄賂を送ってこなかった。上に伝わる事を警戒していたと言うことか。

「リリン、後でサードにこれとこれを届けてくれ」

「……ん、分かった」

「ヨモルは貰った会計書との照合を頼む」

「了解しました!」

羊皮紙に暗号文で書いた指令書とヨモルから貰った紙をリリンに渡し、ヨモルに命令して俺は部屋を出る。

あいつらには指令をだしたし、きちんとやってくれるだろう。

「あ、ツックー」

「……ミュウか。どうかしたのか?」

パーティー会場に向かっていると、曲がり角でミュウと出会う。

何か用事でもあるのだろうか。

「料理長がパーティーに出すお菓子の味見をツックーにしてもらいたいんだって」

「……分かった。ミュウも来るか?」

「うん!」

嬉しそうな笑みで首肯したミュウと一緒に食堂に向かう。

ついに、試行錯誤をして作ったあれが完成したのか。それなら、俺がちゃんと試食して置かないとな。

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