歴史の謎
「はあ……」
「お疲れですね、ツクモ様」
「まあな……いきなり決まるものかよ……」
ベッドでバタバタとしながらブリストと会話をする。
まさか、あっさりと婚約が決まるとか、考えてもいなかったよ……。
「ですけど、パォンデロー公爵に『婚約者はパーティーで決める』と言ってまたしたがどうするのですか?」
「出来レースにすればいい」
最初から他の人間に伝えずにパーティーを開催し、その後にミュウを婚約者として公表すれば問題ない。
だが、大きな問題がある。
「あのミュウが、パーティー中に言わないとは限らないと言うことだ」
「確かに……ミュウ様は嘘が苦手そうですね」
個人的には教えたく無いのだが……ちゃんと口止めしとかないとな。けどなぁ……あいつが俺の言うことを聞くとは思えないんだよな……。
「ツックーやっほーへぶっ!?」
「ミュウ!?」
「ミュウ様!?」
突然、ドアが開かれたと思ったらミュウがカーペットに足を滑らせて転びながら部屋に入ってくる。
いきなり入ってくるのはびっくりしたが、探す手間が省けた。
「ミュウ様、どうしたのですか?」
「ウルメアお姉様が部屋で号泣していていたたまれなくて避難してきたの!」
ウルメア……妹思いではあるようだが、俺とミュウが婚約したことがそんなに悲しいことだったのか?やろうと思えば婚約程度簡単にできるのでは?
「ちょうどよかった、ミュウ。少し話がある」
「うん―――?」
「――――と言うことだ。だから、何があってもこちらから公表するまでは婚約者だと公表しないでくれ」
「すぅ……すぅ……」
ミュウを備え付けのソファに座らせて説明したが、ミュウは鼻提灯をだして眠っていた。
……怒っても良いよな?
「おい」
「ふにゃ!?」
「話、聞いて、いたか?」
「う、うん!公表しなければいいんでしょ?」
「聞いているのならそれで良い」
全く……ミュウのやつ、完全に寝てたのによく聞けてたな。
「ツックー、ここには物語のような本は無いの?」
「幾つかあるが……読むか?」
「うん!」
仕方ない、書庫まで取りに行くか。
「……私が取りに行きます」
「あ、ああ。頼んだ」
「分かりました」
ブリストが本を取りに行くのを見届けると、俺は幾つかの紙を取り出す。
商会の仕事が溜まっているんだよな……。客人がいるところ悪いが、やらせてもらわないとな。
「ツックーこれは?」
「俺が立ち上げた商会の会計だ。色々と仕事が溜まっているから、それをどうにかしないといけないんだ」
「うっへー、ミュウ、勉強きらーい」
「好き好んで勉強するやつがいるか。いたら絶対に殺してやる」
愚痴を吐きながら俺は仕事を終わらせていく。
三年間の間にこう言った仕事が得意になってしまったよ。
「そう言えば、ツックーはこの国の成り立ちを知ってるの?」
「いや、知らないな」
この国の歴史書はかなり特殊だ。本来、国として成立する前の時期の記録が一切ない。そのため、国が成立する前に何が起きたかは今でも考古学者の研究テーマになっている。
「そっかー。ミュウも家にあった本を読んでも分からなかったよ……」
「まぁ、そうだろうな。この城の資料にも書かれてない。使える資料は御神伝承くらいだ。」
「……?ねぇ、御神伝承って、何?」
「……え?」
ミュウの疑問にペンの動きを止めてしまう。
御神伝承を……知らない?御神を知っていながら御神の伝承を知らないだと……?
「御神伝承と言うのは、御神たちが国を作る際に起こした出来事を書き留められたものだ」
「うーん、でも、向こうだとそんなの聞いたことがないよ?」
「……どういう事だ?」
もし、御神の伝承が創られた偽物の逸話なら……この国の信仰の多くが大きく反転する。それだけ、御神の伝承はこの国に深く根付いている。それほどまでに重要なものなのだ。
「「……どー言うこと?」」
俺とミュウは首を傾げて頭を悩ませる。
これ以上の考察は無理だ。それに、ミュウが言っていた事が真実だと言う根拠はない。
「本を持ってきました!」
「ありがとー!」
ブリストが幾つかの本を抱えて持ってきてミュウが喜んで本の一冊を手にとって読み始める。
さて、俺もさっさと仕事を終わらせるか。明日はパーティーだし、仕事を残してはパーティーを楽しむ事はできないからな。……楽しいわけではないけど。




