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使節団の巫女

「あら……貴方は……」

書庫に向かって歩いていると、使節団の女性に話しかけてくる。

女性は金色の髪に金色の瞳をしており、服装も白と金で構成されている、着物と巫女服を合体させたような服を着ており、その背中からは黒い翼をだしている。

どうやら、親父との謁見は終わって城内を自由に散策している、と言ったところだろうが。

「ツクモ様、でしたか。この皇国の皇子である……。(わたくし)はウルメラ・アストレア、使節の一人でございます」

ウルメアが丁寧な仕草で礼をしてきたため、返すように礼をする。

美しい仕草だ。それに礼儀、作法も完璧だ。……雰囲気もミュウ近いし、ミュウに見習わせたいところだ。

「それで、私に何の用でしょうか」

「用がなければ話しかけては駄目なのですか?」

「そうではないですが……」

クスクスと笑いながら話す女性に若干戸惑いながら言葉を紡ぐ。

何だろう、この女性……。どういう了見で話しかけてきたのか、皆目検討もつかない。いい人であることは間違いないけど。

「ツクモ様は何故謁見の間に居なかったのですか?ツクモ様の身分なら謁見の間に居ても可笑しく無いですが」

「それを言うなら、ミュウにも言えるでしょう」

どちらかと言うと、あいつの方が謁見の間に居なくちゃならない筈だが。

「……ミュウを知っているのですか?」

「私……俺の友人だよ。三年前に少し出会ってね。さっき再会した」

「ふふ……そう、ミュウが言っていたのが貴方でしたか」

「っ!?」

口元に指を触れさせながら微笑むウルメアが言葉を言い切った瞬間、凄まじい威圧感を感じてウルメアの側から飛び退く。

何だこの威圧感……!普通の殺気や殺意ではないのい濃密で気味が悪い。まるで、目の前にいるのが人の形をした化け物のようだ。

「……なるほど。タンカスが話してくれた通りの実力の持ち主ですね」

「タンカス……。確か、貴方たちの神官だったな」

あの剛剣を使う剣術の使い手の神官としての位は僧正。前世の知識が確かなら神官としては最上位の人物だった筈だ。

そんな人物と会話ができるとなると、それなりの高い位の女性と見て間違い無いだろう。見た目からして十代後半くらいとかなり若いから、かなりの実力者、若しくは高位の貴族のような立ち位置なのだろうか。

「試すような行いをして、ごめんなさいね」

「別に構わない。少し驚いたが敵意がないのならそれに越した事はない」

最も、俺が拳を振るうよりも速く、正確に俺は死んでいただろう。あれだけの気配をする人間だ、俺を瞬殺する程度、造作でもないだろうからな。

「それでは、(わたくし)はこれで」

「……そうですか」

ウルメアが深い礼をしたあと、歩き始めたためこちらも目的地に向けて歩き出す。

不思議な人物だったが……まぁ、悪い人ではないようだ。それにしても、どこかで見た気が……。

(……ああ、あのときの女性か)

馬車から顔を出して手を振っていた女性が、ウルメアだったな。俺の事を知っていたようだし、やはりミュウの姉のような立ち位置なのだろう。

だが、ミュウの羽根は白だった筈だ。だが、その姉であるウルメアの羽根が黒なのは何故だろうか。

(またミュウに出会ったら聞いてみるか)

考えを心に留めながら俺は書庫に向かって歩いていく。


(ふふ……凄まじい御仁ですね)

(わたくし)は廊下を歩きながら先程出会った少年について考える。

愛しの妹であるミュウちゃんが楽しそうに話すためそれなりに面白い御仁かと思っていましたが、予想よりも遥かに面白い御仁でした。年不相応な対応には内心驚きましたが、まあ表情には出ていないでしょう。ポーカーフェイス、得意ですし。

(そして、恐ろしい人でもあります)

ミュウちゃんが持ち帰った紙は薄く、丈夫で長持ちすると言う高品質なものでした。そして、それを作ったのは彼だとも聞きました。四歳と言う幼子がそれだけの知識を保有している事も驚きでしたが、その知識とは他に極めて高い身体能力と戦いの素質を持っていました。

今の彼ともし戦うのなら……それ相応の犠牲を強いる事になるでしょう。それだけの実力と才能を保有しています。

(なるべく、穏便に済ませたいところですね)

謁見の際には国王たるアマノ皇はこちらに好印象を持ってくれていましたし、彼もミュウを通じて好印象を持っています。これでも充分なのですが……。

(ミュウちゃんがとっても良いことをしてくれたお蔭で良い方向に持っていけそうです)

あの様子から察するに、彼は私たちの風習には詳しく無いようです。後で必ず会いますし、その際に教えましょう。

(……けど、ミュウちゃんも大胆だね。(わたくし)にはそんな人いなかったのに)

少し残念に思いながら、私は城内を散策していくのだった。

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