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騎士団長の息子

「来ましたか、皇子」

「……どういう了見で俺を呼び出した、ギャラハッド」

穏やかな雰囲気で佇むギャラハッドに僅かな怒りを覚えながら話しかける。

こちらとしては、兵士たちの鍛錬の邪魔をしてはならないと思うのだが……。

「おや、前とは雰囲気が違いますね」

「生憎と、こちらが素でね。何時もあんな堅苦しい言葉遣いをさせられたら気が滅入る」

「それでは、私も素に戻っても宜しいですか?」

「許そう」

「……やっぱり、貴族風の喋り方は堅苦しくていかんな」

ギャラハッドの雰囲気が先程とはうって変わり武人のそれに変質した。

ここまで雰囲気を変幻自在に変える事ができるのは兵士たちでもそう多くはいないだろう。騎士団長の名は伊達ではない、と言うことか。

「私が皇子をお呼びしたのは、不肖の息子と手合わせを願いたいからだ」

「息子とな」

「ええ。……おい、ランスロット、来い!」

「ああ、分かったよ親父」

ギャラハッドが背後で兵士たちに混じって訓練をしていたエントレイ族の少年がやって来る。

ヒューマンと近い姿をする種族であるエントレイ族の特徴的な剛毛に両腕を覆われ、ギャラハッドに似た強面な顔立ちの少年だが、どこか人の良さを感じさせる。

だが、その雰囲気はギャラハッドとは違う暴力的な雰囲気をだしている。

「それで、親父。こいつが親父が言ってたツクモか?」

「そうだ。そして、その言葉遣いは不敬に当たるぞ」

「俺はさっさと用事を済ませたいから別に構わない」

「……あ?」

俺が許したらランスロットが怒りを滲ませながら襟を掴んでくる。

怒らせるような言葉を言ったつもりはないが……。まあ、攻撃する意志があるのなら仕方ない。徹底的にねじ伏せるか。

「やる気あり、だな」

「ランスロット、止めろ!」

「ちっ……!」

俺がランスロットの腹に手刀を打ち込む直前、ギャラハッドがランスロットの手を離させる。

良かったな、ランスロット。お前の父親が止めてもらわなければお前の腹に俺の硬質な指が突き刺さっていたぞ。

「っと、まあ……己の実力を疑っていないので、灸を据えてもらいたいのです」

「自信家ってやつか」

過度な自信はただの傲慢に過ぎない。それを早い時期から知っていればそれだけでも今後の人生に影響してくる。騎士団長よりも同年代の俺を指名したのはそれが理由か。

「それじゃあ、着替えてくるから少し待っててくれ」

「っ、ああ……!俺はお前を絶対に倒してやる……!」

俺に獰猛な怒りを滲ませるランスロットを尻目に飛翔して自室に入り、動きやすい服に着替える。

やはり、こっちの服の方が良い。

「待たせたな」

「っ、はああああ……!」

練習場に戻り、剣を構えて待っていたランスロットが一気に近づいてくる。

そこそこ速いな。だが、俺には問題ない。

「がっ!?」

振り下ろしを肌に触れるギリギリで回避し拳を腹に打ち込む。

「ぐっ、あっ、まっ、て!」

「戦場に相手を待つ馬鹿は存在しない」

拳で怯んでいるところに更に拳で連打を打ち込んでいく。

やれやれ、この程度か。

「勝敗は決定した」

「強す、ぎ……」

拳の連打で身体中を腫れ上がられてランスロットは地面に倒れ気絶する。

実力を過大評価した上での自信は最終的に身を破滅させる。これで分かってもらえれば良いのだが……まあ、いっか。

「これで良いのか?」

「あ、ああ……ここまで実力差があったとは……」

「知った上でランスロットと闘わせたお前に言われる筋合いはない」

「おや、何の事でしょうか」

俺が殺気を向けながら飄々としているギャラハッドに若干怒りを滲ませるが諦めて俺は飛翔して自室に戻る。

さて、着替えて本でも読みにいくか。

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