食堂の提案
「うーん……」
俺は背もたれにもたれかかり、背中の筋を伸ばす。
うーん、夜中に起きてしまったせいで暇だったから本を読みふけってしまった。
「う……ん……」
「お、起きたかブリスト」
「……ツクモ様!?」
ブリストが布団から起きて俺の顔を見た瞬間、顔を真っ赤にして布団から急いで出てくる。
そこまで急ぐ事はないだろうに……。
「お、お体の方は大丈夫なのですか?」
「ああ、お前の看病のお陰だ、ありがとう」
「い、いえ!私は失礼します!」
俺がブリストに礼を言うとブリストは赤くなった顔をにやけさせたが、すぐに元の顔をに戻して部屋を出ていく。
……顔赤かったけど、熱でも拾ったのか?でも、あの様子だとそんな雰囲気ではなかった筈だが……。
「女の子の心は読めない……か。全く、その通りでびっくりだよ」
俺は僅かに口角をあげて机に置いておいた本を擦りながら本の文の一部を引用する。
たまには恋愛ものを読んでみるのも一興だな。最も、俺は恋愛感情がかなり鈍いけど。
っと、腹も減ったしさっさと親父のところに行かないとな。
「む、大丈夫なのか?」
「ああ、心配かけたな」
食堂につくと親父の席の前に座り、少しだけ会話をする。
親父にも心配をかけただろうし、今度からはもう少し人に押し付けるべきか。だが、俺が執り行っている仕事の多くが俺にしかできない仕事なんだよな……。けど、身の回りの世話をしてくれるブリスト以外にも事務ができる者が必要になるか。
「親父、少し良いか?」
「どうかしたのか?」
朝食のチキンをかぶり付きながら俺は親父に話しかける。
にしても……朝から七面鳥の丸焼きとか、何時見てもすごい凄いな。前世では考えられないよ。最も、俺は普通にフレンチトーストだけどな。幾らなんでも、朝から丸焼きを食べる気力はない。
「側近の中に文官のような人間は必要だと思うか?」
「ふむ……。まあ、必要だろうな。ツクモはただでさえ商会の商品の開発に携わっているし、これから更に公務が増えてくるだろう。文官の一人や二人、必要になってくるだろうな」
「すぐに、とは言わないが一人、二人ほど見繕って貰いたい。昨日の反省を生かすためにもな」
「……分かった。なるべく早めに手配しよう」
親父に事情を説明すると親父は少し考えた後、快く承諾する。
よし、これで俺の仕事の負担を軽くするための人員を補給できる。これなら、昨日のように熱をだして倒れる心配もないだろう。
「それと、ツクモ、お前はもう少し体を労ってやれ。無理のしすぎだ」
「まあ、分かってるよ」
その無理を行わないようにするために文官を手に入れたいのだがな。
そうだ、労うと言えば……
「そういえば、ここら辺には温泉のようなものはないか?」
ふと、頭に浮かんだ質問を親父に問いかける。
この辺りは基本的に水を汲んでの水浴びが主流だ。と言うのも、ドラグニカ族は基本的に温度に鈍いところがある。そのため、水浴びでも凍える事がないのだ。
前世の知識にある暖かいお湯がでる温泉に興味を持つのも無理がない……はず。
「温泉?それなら、サリウル国やウィルツァン国の一部の島から出ているな」
「サリウル国とウィルツァン国か……」
「最低でも、今は行くなよ?」
「分かってるよ」
顔がにやけていると、親父に釘を刺されてしまう。
今は行かないが……パーティーを終わらせれば行くか。最近、肩こりも酷いし温泉の効能の中に肩こりを治してくれるものもあるからな。
「そう言えば、ウィルベガトリ族が城に来るのは何時だ?」
「うーん、もう少し後になるかな?」
「なら、助かる」
それだけの時間があれば、料理長と調整を進めている食べ物の準備もしっかりとできるし、食材や酒も選りすぐれた物を取り寄せれる。
「マサウソチゴ」
俺は食べ物に礼をした後、席を立って部屋に戻る。
今日くらいはゆっくりしても良いよな。




