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月下霊廟の惨劇 下

この戦いは相手を自滅に追い込むためのものだった。

「……………」

な……ぜ……(・・・・・・)私が倒れて……(・・・・・・・)

俺は立ち上がり、煙を上げて焼け焦げ、倒れながら呆然としているゼパルを見下ろす。

片足から右腕までを消滅させ、腹から内臓をも漏れ出ている。これなら後数分も持たないだろう。

「それは、これだよ」

「これは……」

俺はゼパルの顔の隣にひしゃげたお椀のような形をした鉄を放り投げる。

これは、簡単に言えば指向性の爆弾(・・・・・・)だ。本来の使い方は自害用何だろうが……威力強すぎだろ。ヒューマンの体の耐久力は俺らよりも低い訳だからこれ程強いとなると肉片も残らないだろうに。どれだけ俺らの捕虜になりたくないのだか。

「はは……まさか『鉄の引き金』に殺られてしまうとは……」

「鉄の引き金……それがこの指向性爆弾の名前か」

空笑いをするゼパルを無表情で見下ろしながら思考に耽る。

俺は転がっていた時に懐から鉄の引き金を取り出し、止めの蹴りの威力を弱めるために取った手を突き出して紐を引いたのだが、凄まじい威力の大爆発を引き起こし、ゼパルを焼き付くしたのだ。

「まさか……皇子はこれの正体を知っておられたのですか……」

「まあな」

「はは……敵いませんな……」

僅かに呆れたような笑みを浮かべ、ゼパルは息を引き取った。

ゼパル、あんたは強いかったよ。俺が十全に備えて戦いを挑まなければならず、それでも運に恵まれなければ勝てなかった。お前は、最高峰の暗殺者だ。

「ツクモ様!」

「ブリスト!」

涙を流して純粋な笑みを浮かべたブリストが思いに耽っていた俺に抱きついてきた。

全く……俺よりも年は上なのに、何時までも泣き虫だな。

「生きてて良かった」

「はい……!ツクモ様もご無事で何よりです……!」

「ツクモ」

互いに笑みを浮かべ、笑いあっていると側近たちを引き連れた親父がきたため、静かに立ち上がる。

「……親父か」

「まさか、ゼパルが暗殺者ギルドの長だったとは……」

「いや、ゼパルは番人だ。本拠地を隠していた存在に過ぎない。本拠地の場所はこの城だ。城の中、隠し部屋の一つに隠されている」

「……翌日から探索を始める。みな、今日はもう休め」

「「「「「はっ!!」」」」」

親父がゼパルの死体に複雑な表情を向け、ギャラハッドが兵士たちに指示を送る。

やれやれ、長い夜だったな。

「すまないな、親父」

「……分かっている。サニアの墓所でこのような事を引き起こしてしまったことだろ」

「ああ」

「そして、我らを利用したことだろう」

「……ああ」

全てお見通し、か……。やれやれ、やっぱり親父には敵わないな。

「別に我らはそのような事で怒っていない。ツクモはよく頑張った。それだけあれば充分だ」

そう言って親父は涙を流しながら俺を抱きついた。

「やっと……抱くことができた」

「ああ……そうだな、親父」

俺の記憶には親父に抱きついた記憶も抱きつかれた記憶も存在しなかった。

俺は、俺の怪物性を知っている。親父らはそれを恐れていた事を知っている。それでも、親父らは俺を愛してくれた。それだけあれば充分だよ。

「ツクモ様……」

「ブリスト……」

抱きつくのを止め、涙を拭ったブリストの視線に合わせるように跪く。

「ツクモ様は私の尊厳を護るために無茶をしてしまいます」

「ああ。それは、俺がブリストに誓ったものだからな」

「私は……今、胸の中に一つの願いがあります」

ブリストが近づいて傷ついた俺の頬を擦る。

願い。俺は、ブリストがどんな願いでも受け入れる。


「私は、|あなた様を守りたいです《・・・・・・・・・・・》」


「……そうか。それなら、俺は止めない」

俺は願いを聞き立ち上がり、自然と笑顔になってブリストの頭を撫でる。

本来なら、庇護の対象からのこの願いは拒絶しなければならないものなのだろう。庇護する対象から守られる守護者とは、滑稽なのだろう。

だが……これはブリストの最初の願いだ。言い換えるなら、最初の我が儘だ。それを護らなくてどうする。

「………………あ、ヤバい」

「ツクモ様!?」

「ツクモ!?」

ブリストの頭を撫でていたら緊張が解れたのか、凄まじい睡魔が襲ってきて地面に倒れてしまい、ブリストと親父を驚かせてしまう。

「すまない……寝室に運んでくれ。疲れた……眠い……」

「は、はい!今すぐに!」

「いや、我が運ぼう。ブリストも今日は大変疲れているだろうからな」

「は、はい!」

俺は、抱き上げた親父の体の温かさを感じながら瞼を閉じて寝息を立てて寝始めるのだった。

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