凍結滅殺
「……成功したか?」
「無論、王妃の暗殺は成功した。私が育てた駒だからな」
(………)
薄汚いがとても大きな酒場、昼間から酒を飲む暗殺者たちを見下ろしながら俺は柱に手をかけて立ち上がる。
ここは暗殺者ギルドの最大の拠点。拷問した見張り曰く、暗殺者ギルドの支部との事だ。
……俺が人を拷問することなんて考えもしないかった。だが、俺の心は何一つ揺らいでない。何一つ動じていない。
心の中は酷く寒く、冷たいものだ。
「にしても、城に入るのは楽だったな」
「全くだ。あそこまで入りやすいとこっちも罠を疑ってしまうよ」
「それでいて罠が何一つ仕掛けられてないんだぜ?笑ってしまうよ」
「そうだな」
「「ハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」
(ちっ……)
眼下で笑いあう男たちを見ながら俺は柱に力を加え始めると右手に埋め込まれていた結晶が仄かに薄い青色に光始める。
すると
「あれ、何か寒くないか?」
「おっかしいなー……おい、何だよこれ……」
男たちやその他の暗殺者も違和感に気付きだし、席を立ち上がったりドアや窓から外に出ようとする。
だが、もう遅い。全て遅いんだよ。
「おい、開かねぇぞ!?」
「だめだ!窓も開かねぇ!」
「どうなっていやがる!?」
何故か開かないドアと窓に焦る暗殺者たちを眼下に俺は空中を飛び始める。
これ以上物に身体に触れさせていれば俺の被害が酷くなってしまう。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「おい、どうした!?」
突然、テーブルに腰かけていた俺が手を抱えて転げ回り、それを見た他の暗殺者がその男の回りに近づこうとする。
さあ、始まりだ。
「いってぇ……え?」
「なあ!?」
「なんじゃこりゃ!?」
始まりはドアや窓に手をつけていた奴らから。
暗殺者たちの手の皮膚はドアや扉にくっついてしまい引き裂かれてしまっていた。
ミュウは俺に法術を自分の意思で使うことができないと言っていた。だが、何事にも裏技があるように法術にも抜け穴がある。
意思で使えないのなら……意思で使わなければいい。自分でも止める事が困難な程に強引に放出し続ければ良いだけの話だ。
つまりは、暴走。
自分の意思で使えないのなら体から強引に漏れ出せるようにしてしまえばよい。
今、俺の身体には幾つもの刺し傷ができている。これはさっき襲ってきた暗殺者たちにやられた手傷をそのままの状態にしてあるのだ。この状態は長くは続かないだろうが……そんなの関係ない。
ここで、暗殺者どもの拠点を叩く。
「あ……が……」
「何だ……」
「うっ……」
俺の感情と共に体から溢れでる冷気がこの建物の空間を封じ込め温度を一気に下げていく。
最初にドラグニカ族が死に絶え、ベガトリ族が死に絶え、タウロクロノ族が死に絶え、エントレイ族が死に絶え。
物の数分でこの建物の中に俺が以外の生命は息を引き取った。
「ぐあ……」
窓を力業で粉砕して外に出ると道に倒れこむ。
この体が生きていた事は奇跡に近い。もし、あのままあの中に入れば確実に死んでいた……。
「くっ……おっ……」
力が上手く入らない身体を壁を支えにして立ち上がる。
法術は身体の中にあるエネルギーを使う。使いすぎれば身体に疲労がかかり、最終的には……死ぬだろう。今は傷口が服と一緒に凍結してしまっため暴走が止まったが、暴走が自分の意思で止めれない以上、そうなりやすい。
もう、無理矢理法術もどきを使うのは止めよう。
「はあ……はあ……」
「……アリエス?」
何度も転びそうになりながら壁を伝って歩いていると、パンを抱えたリリンとちょうど出会った。
「リリン、か……」
「大丈夫……!?」
パンを地面に置いて俺の肩を支えようとして腕を持った瞬間、あまりの冷たさに目を見開いて驚く。
まずい……もう、意識が……。
「リリン、とある場所に俺を連れていってくれ……」
「……分かった。アリエスの言葉に嘘はない」
「ありがとう……。赤い屋根の床下から水路に入って直進すると……階段がある。そこから外に出たら俺を置いてくれ」
「……分かった。……アリエス……?アリエス!?」
最後の力を振り絞ってリリンに場所を教えた瞬間、俺は意識を失った。




