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暗殺者の視点

(掴みは上々……と言ったところでしょうか)

私はそんな事を考えながら応接室の椅子に座る。

暗殺者ギルドの人間は表で職を持っている事が多い。そうすることで独自の情報網を形成させる事で仕事の独占ができるからだ。

私の場合は行商を主軸に行っている個人経営の商人である。そんな私に国王からの依頼でこの商会の代理人になるように命じられた。

(この場で殺しても構わないが……)

国王の暗殺依頼は常に暗殺者ギルドで置かれている。そのため、今、この場で暗殺してもギルドの規約違反にはならない。

だが……。

「さて、さっさと始めましょうか、サードさん」

「ええ、私も交渉は早めに済ませたいほうですしね」

目の前にいる年端もいかない、故郷に残した弟くらいの少年が年齢と見合わない瞳を向けてくる。

この少年は私が背後に立ちながら声をかけたとき、その場から離れながら硬質な鱗に覆われた尾で攻撃してきた。しかも、もし防がなければ首に直撃して絶命していたほどの威力があった。

それにこの雰囲気……。間違いない。ファイブを殺した奴と同じ雰囲気だ。この少年がファイブを殺した奴とみて間違いないだろう。

そんな相手と交渉……精神が幾つあっても足りなくなりそうだ。

「まずは、ありがとう(・・・・・)。こんな仕事を承諾してもらって私としては嬉しい限りだ」

「いえいえ。私としても金儲けが出来るのならそれだけで構いませんよ」

(ちょっ!?あっさりと頭を下げるの!?)

深い礼をする少年に表は柔らかくしながら内心とてもつなく動揺してしまう。

この少年の親は国王。身分からしたら最上位に近い存在だ。そんな相手があっさりと頭を下げるなんて、聞いたことがない。

「それで、商品の値段はどれくらいにしようか」

「そうですね……紙は価値を考えるとこれくらいはどうですか?」

私は懐から取り出した算盤の珠を弾いて出した値段を少年に見せると顔をしかめて難色を示してくる。

「ここまで法外な値段だと平民たちの手に渡らない。これくらいでどうだ」

「これは……幾らなんでも安いですね」

少年が弾いた算盤を確認するとかなりの値段を削減されていた。これでは商売にならない。

「それでは……これくらいでどうです?」

「ふむ……まだまだ高い。これくらいでどうだ?」

「それは安すぎですね。大量に受注できない今の状況だとこれくらいですかね。これくらいが限度です」

「……そうか」

算盤が行ったり来たりして最終的にそこそこの値段で合意する。

これくらいなら平民にも行き渡るくらいの値段になるな。

「それと、サードに一つ言っておきたい」

「?なんでしょうか」

副業がある(・・・・・)のなら今すぐ(・・・・・・)廃業しろ(・・・・)

「はて……何の事でしょうか」

(え、嘘!?バレた!?)

少年の鋭い視線を表では惚けながら内心心臓をバクバクさせ、凄まじい勢いで頭を回転させる。

この少年、あの時の動きで私が暗殺者だと気づいてたの!?不味い。この場には国王がいる。そんな状況で敵意を見せれば即刻『影』に捕まって死ねない拷問が待っている。それだけは勘弁して!

「……まあ、構わない。法で問題ないからな。だが、その副業のせいで俺らに危害を加えられては困る」

「……そうでしたか」

ヤバい……暗殺者だと言うことがバレてなくても王族の暗殺依頼を受注できなくなった。

……まあ、これを期に暗殺者稼業を止めようかな。元々、暗殺者稼業をしていたのも『誰かに雇われるため』だったし、少し不服だけど問題ないか。

「それでは、私は帰らせてもらう。……ああ、会計と人事は任せるが不正だけはしないように。不正すれば……俺が直々に処刑する」

「は、はい……。それと、名前は何と呼べば良いでしょうか」

「アリエスだ。表ではそう名乗っている」

出ていく間際に少年の名前を聞き出す。

アリエス……。成る程、偽名か。表と言っているし間違いないだろう。やれやれ……私もまだ信用されていないのか。

でも、仕事はきちんとしないとね。うーん……商人見習いと紙職人の見習いが欲しいところだね。スラムで探してこようかな。


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