ブリストの欲しいもの
「さて、何をしようか……」
俺は調度品の少ない自室にある数少ない家具の椅子に座りながら窓から外を見る。
今日は親父らが貴族と繋がる犯罪組織を自分が直接動かせる兵士たちを使って一斉に潰す日だ。そのため、スラムで兵士たちに会う可能性も高まってしまう。それを回避するために今日は城内で静かにしているつもりだ。
だが、やることがない。
あまりにも無さすぎて新しく暇潰しの玩具でも作ろうかな。いや、それだと日数がかかってしまう。となれば、紙を使って何かしようかな……。
「失礼します。お茶と菓子を持ってきました」
「ああ、ありがとう」
室内に入ってきたブリストからカップを貰い菓子をテーブルに置かせる。
うん、良いにおいだ。それに、この菓子は……マカロンのような物か?香ばしくて美味しい。
「どうでしょうか」
「茶も菓子も美味しいよ」
「ありがとうございます」
俺がブリストを褒めると嬉しそうに笑うため此方も少し笑みを浮かべてしまう。
っと、そうだ。ちょっとブリストに話し相手になってもらおう。
「ブリストは仕事は慣れたか?」
「はい、お陰様で。……何かなさる事でもあるのでしょうか」
「いや、今日は特にする事が無くてな。ちょっとした話し相手をしてもらいたくてな」
「そうでしたか。それなら、失礼します」
「ああ」
笑みを浮かべながら俺の向かいに設置した椅子に座る。
さて、何から話そうか……。
「ブリストは元はどんな生活を送っていたんだ?」
「……両親は出来の良い兄ばかり構っていましたので、殆んど顔を思い出せません。何時も家政婦さんに面倒を見てもらいました。その後、両親が破産しても兄だけは手放さず、私は売りに出されたのです」
家政婦……やっぱりそう言った仕事はこの世界でも需要があるのか。
「ここでの生活は大変か?」
「大変ですが、奴隷として生活していた時よりも苦しくありません。何より、敬愛する主であるツクモ様に仕えれますので」
「そうか」
俺を敬愛の対象として見てくれているのか……。何と言うか、口に出されて言われると少し恥ずかしいな。あの笑みは心の底から笑っているようだし、更に恥ずかしい。
「?顔が赤いですが熱があるのですか?」
「い、いや……そうじゃない」
恥ずかしさのあまり顔が熱を帯びていることが分かり、それを隠すためにそっぽを向くとブリストが心配そうな顔をするため向き直す。
そんなに心配そうな顔をしないでくれ……。こっちが心配になってくる。
「他に、何かこれがあったら便利と思う物は何かあるか?」
「そうですね……あ、甘いものの調味法が欲しいです」
「甘いもの?この菓子も甘いが……何か問題があるのか?」
「はい。菓子類は基本的に果実の甘味を使っています。最近エントレイ族が『砂糖』と言うとても甘い調味料が作られたのですが……その使い方が分からないのです」
砂糖を使った甘味か……確かに、それは面白そうだ。作った事はないが幾つか菓子の製法を知っているし、紙に書いて渡そう。
「あの……私から質問しても良いですか?」
「構わない」
「ツクモ様が好きな事はなんですか?」
俺が好きな事……考えた事が無かったが、考えてみれば結構あるな。
「読書、商品になるものの開発、情報収集、武術……それと、人に物を教える事かな。これがどうかしたのか?」
「……いえ。私は失礼します」
「呼び止めて悪かったな」
俺が少し考えた後答えるとブリストは立ち上がって部屋から出ていった。
さて、ブリストも出た事だし俺もブリストが言っていた砂糖を使った菓子の調味法を書いていくか。




