勉学集中
「君たちにはこれを渡すよ」
翌日、俺はソヨンたちにこの国の言語が書かれた和紙と盗んできた石板とチョーク(のような物。素材は不明)を渡していく。
親父らは明日から貴族と繋がる犯罪組織を潰しにかかるため俺ばかり構っていられない。そのため、何時も以上に簡単に抜け出す事ができたのだ。
「これは……紙?」
「それって、かなり高級な物では……」
「それらは俺が作った和紙と言う植物性の紙だ」
「「「作った!?」」」
驚きの声をあげるソヨンたちをスルーして俺は木箱に座って持ってきた資料を読んでいく。
俺は質問されたらきちんと返すが、此方からは何も干渉しない。徹底的に学ぶ人間の意思に任せる事にした。こっちの方が効率的だし、何より向こうは学ぶ意思がある訳だからこっちに質問してくるだろう。
「ねえ、この文字は何て読むの?」
「ああ、この文字は……」
「この文字は?」
「それはこう……」
最初は分からないことだらけのため質問が殺到する。
別段捌くのは問題じゃないんだよな。
「そう言えば、お前らの仲間は何人くらいいるんだ?」
「うーん……十人は基本的にこの近くの廃墟で生活していて、他の人たちは別の場所で生活してるよ」
「そうか、教えてくれてありがとう」
「うん!」
俺よりも歳上の少女に言葉を教えながら事情を聞き、少し資料を読んでいく。
やはり、スラムを潰して色々と作るとなるとスラムで生活をしていた人間が外に出てしまうな。どこかに移住させれば良いのだが……。新しく開拓できそうな土地はこの国には結構あるし、そこで生活させるのが良さそうだ。商会の件や犯罪組織よ件で話しは進んでいなさそうだったがここより南に向かったところにある森を開拓する事になっていたしな。
それもスラムの人間にやらせるのは面白そうだ。
「……アリエス。私の友達はどう思う?」
「明るい奴等だと思うぞ」
勉強も一段落ついて休憩を取っているとリリンが俺の隣に座ってきた。
金銭的に貧しく常に命の危険と隣り合わせの生活をしているが互いに協力しあって逞しく生きている。
「……彼らはみんな親に捨てられたり犯罪組織から逃げてきたり……貴方とは比べ物にならない苦労をしながら生きているの」
「……そうか」
あんなに明るく生活しているのに、全員複雑な事情が絡んで生きてきたのか。
「……なあ、俺が事業を始めると言った時、あいつらは協力すると思うか?」
「……する。今の生活が良くなるのならみんな飛び付いてくる」
「……そうか」
子供を働かせるのは俺の本意ではないが……大人の協力を仰げなかったらこいつらを雇って生活させるのも良さそうだ。
「……何か事業を始めるの?」
「まあな。あの紙だったり玩具の類だったり売り出すつもりだ」
親父やブルタ辺境伯には俺が前世の知識にあった土地の特性を生かした伝統工芸品や特産物の製作法を書いた紙を渡してある。あれができればそれなりの利益は求められるだろう。
「……その際、私を商人見習いとして雇わせて」
「俺は構わないが……」
俺としても将来性を考えて何人か見習いが必要だとは思っていたし、申し出てくれるのなら此方としても嬉しい限りだ。
「おーい!そろそろ始めようぜー!」
「「「「はーい!」」」」
「……じゃあ」
「ああ」
ソヨンが呼び掛け始めたのでリリンがソヨンの方に向かったので俺も資料を読み込んでいく。
(やはり、頼るべきか……)
とある難題の資料を読みながら俺は頭を抱えるのだった。
さて、どうしたものか……。向こうからの接触があれば楽なのだが……あいつが上手く取り計らってくれれよ。




