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願いの承諾

「うっ……」

「目が覚めたようだな」

俺は薬師の一室で眠っていた男に話しかける。

簡易的な仮眠室を屋敷の一室に作らせ、来た親父に金を支払わせ、紙の材料になり得る物の準備を行い、暇になったので倒した兵士たちの事情を聞きに来たのだ。

兵士たちには、俺が個人的に聞き出しておきたい事が多いからな。

「これは……殿下。先程は申し訳ございません……」

「許さん」

「そんな……」

俺が男の謝罪を拒否すると、男は絶望したような顔をしてしまう。

この国はその特性上、王族が無理を遠そうと思えばと通せてしまうため、歯向かった人をすぐ処刑、何て事も可能なのだ。

無論、これはただの布石に過ぎないが。

「だが、許してもらうために条件がある」

「な、何ですかそれは……」

「お前らが何故俺を攻撃したか。俺は領主であるブルタ辺境伯には既に大まかな事を聞いているが、細かい事情を知りたいからな。……無論、起きている全員に聞く」

絶望の淵から引きずり上げるような救いに、兵士は簡単にすがり付く。

さて、俺にとって必要な情報をさっさと言って貰おうか。

「私は生まれは平民ですが、娘を拐われ、陵辱され……そして、スラムに捨てられました。そして、それを行ったのが貴族だと言う事をスラムで耳にしました」

「私の場合は息子が……彼と同じように……」

「俺は妹が……そんな風に弄ばれました」

「自分は恋人を強引に妾にされ、弄ばれて……ううっ」

大の男たちが憎悪の理由を話すのと同時に涙を流し始める。

ふむ、ここにいる半分近くが貴族の遊びで大切な人を喪って、相手が相手である以上、手が出せずに燻っていたのか。

確かに、それは憎悪するのも無理は無いだろう。そして、そう言った行為を行うのは貴族の中でも上位であるが故に、王族でも手出しが難しい。

「私は両親を貴族の遊びで……殺されました」

「俺も……恋人を」

「私は生き別れの姉を……」

そして、もう半分は貴族が支援する犯罪組織や貴族に遊び半分で殺されてしまった者たち。

本当に、度しがたいな、この国は……。これらの黒幕である貴族を引っ張り出すだけでも難しいが……引っ張りだすだけなら、どうにかなるか。

「これで君らは許される」

「ああ……よかった……」

「ですが、何故このような事を皇子が……」

こいつらには、違和感を拭うためにも話しておいた方が良いか。

「これは他言無用でお願いするが……俺は、個人で犯罪組織の壊滅させようと思っている」

「なっ……!?」

「そんな、無茶ですよ!?」

「無茶だろうと何だろうと、俺は壊滅させる。そして、貴方たちの話で幾つか即刻潰すべき組織を脳内でピックアップした」

親父の資料を勝手に盗み見ただけだが、スラムには俺が予想していた以上の量の組織がある。そして、その半分が暗殺者ギルドの傘下と言える。

だが、貴族と直接繋がっている組織は暗殺者ギルドの傘下ではない。何せ、自分達の寝首をかかれたら恐ろしいからだ。

その犯罪組織だけを壊滅させていけば、暗殺者ギルドが動く事は無い。これだけの条件が揃えば俺は数日あれば大半を壊滅させる事が可能だろう。

「俺は王族だ。民の生活を、民の平穏を守護するのが仕事だ。それを全うするために行動する。それだけに過ぎない」

これは王族に課せられた義務だ。義務は、やらなくてはならない事。それを成すのに、妨害は誰だろうと許さない。

「ありがとう……ございます……!」

「ん?」

「我々の代わりに、そのような苦労を……」

「ええ……あなた様が仇を取って貰えれば妹も報われるでしょう……」

感謝の言葉を言いながら嬉し涙を流す兵士たちの方を見て、俺は外に出る。

仇を討つ……俺はそこまで大層な人間ではない。だが、赦しがたい悪を滅ぼす。それには変わりない。故に―――――

(叶えてやるよ、その願いを)

この国の王族として、そしてこの世界に来てしまった勇者として、その願いを叶えてやる。



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