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JKときどき死神  作者:
第三章 イニシエーション
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父と娘

 あくる土曜日、天気は申し分なく夜空に浮かぶ満月には雲ひとつかかっていない。イニシエーションは予定どおり催される運びとなった。

 僕たちは午後九時に竜髯駅前に集合していた。五月とはいえ日が暮れると少し肌寒い。

「なんかこうやって夜中に集まると悪いことしてるみたいでドキドキしちゃうね」宇賀神はぬかりなく健の横に立っている。

「そうだね、普段部活でもこんな時間までは残らないから。それに俺肝試しってしたことないから結構楽しみなんだ」

「あれ、健君もなんだ? わたしも初めてなんだけど、実はすっごい不安で。健君と一緒に回りたいなー」

「そうだね、一緒に回れるといいね」健は男の僕でも惚れ惚れするような笑顔で応じた。ここら辺はさすが彼女持ちの力量がうかがえる。

 なんだか良い雰囲気の二人を堂島と僕は腹立たしい気分で遠巻きに眺めていた。正直目に毒だ。

「おい、あんなの見せつけるために俺をここに呼んだのか」

「落ち着けよ堂島、あいつにはいずれ天罰が下る。すでに乳繰り合ってる写真は撮ってあるから、今度メグちゃんに見せよう」

「二人とも大人げないですよ」遠藤は憐れむような目で僕たちを見ていた。

「未成年なんだから大人げなくて当たり前なんだよ!」堂島が今度は遠藤にかみついた。こいつは僕から見ても本当に大人げない。

「……なんていうか堂島せんぱいがモテない理由が分かるような気がします」

「うるせー、俺の何を知ってるっていうんだ!」

「まあまあ落ち着けって」僕は荒ぶる堂島をなだめつかせた。

「それにしても、轡せんぱいがまだ来てませんね」

「お父さんの車で来るらしいんだけど――あ、多分あれだと思う」

 白のミニバンが駅前のロータリーをぐるりと回ってこちらに向かってくる。手を振って合図すると車は僕たちの前で止まった。助手席の窓が下がり轡が顔を出した。

「……お待たせ……乗って」

「ええっと――どういう感じに座ったらいい?」

「中列が三人、後列が二人座れるよ。後列の方が少し狭いね」運転席から轡父が教えてくれた。

「じゃあ女の子は中列に座る?」僕がそう提案すると宇賀神がにらんできた。

「……宇賀神さんと在原君が後列……他は中列」

「なんだその配席」堂島が僕の心の声を代弁してくれたが、宇賀神は問答無用で健の手を引いてさっさと後列に乗り込んだ。

 結局残された三人は中列に座ることになった。別にそれはそれで構わないのだが、なんだか釈然としなかった。

「じゃあ出発するよ」轡父の声と同時に車はゆっくりと走り出した。

「いやー、はじめは三人だって聞かされていたから、急に六人に増えたって言われて驚いたよ。やっぱり子供ができたら大きい車を持っとくもんだね」

「すみません、車まで出してもらったうえにこんな大人数で」

「いやいや、気にすることはないよ。こういうのは賑やかな方がいい。それにしても、いつの間にかオカ研の部員数が随分と増えたんだね」

「……オカ研じゃない人もいる」轡が隣から注釈を入れた。

「え、そうなのか?」

「わたしたちはなんだか面白そうってことで無理言って参加させてもらったんです」後ろから宇賀神が言った。

「なんだそういうことか。おかしいと思ったんだよ、急に部員が増えるはずないもんな。それでもこういった体験をとおして少しでもオカルトの素晴らしさを分かってもらえるのなら、車を出した甲斐があるってもんだ」

「ハハハ……」僕は苦笑するしかなかった。

 このやり取りからなんとなく察しが付くかもしれないが、この轡父、大のオカルト好きである。娘はこの父親から影響を受けたがためにあんな風になってしまった。ただ当の娘はそんな父親が大好きなようで、思春期の女の子にありがちな父親を毛嫌いするといったことはまったくなかった。言い添えておくと、僕の目から見ても優しくてダンディーな轡父は、オカルト要素さえなければ理想の父親像にかなり近いのではないかと思われた。父親の方も娘を溺愛しており、というよりほぼ親バカで、だからこそこの日も運転を買って出てくれた。

 実を言うとオカ研の活動のために車を出してもらったのは今回が初めてではない。まだオカ研がちゃんと部として機能していたころ、辺鄙な場所にあるオカルトスポットに行くために運転をお願いしたことが何度かあった。平日はサラリーマンとして働いているのだから休日くらいゆっくりしたいと考えるのが普通なのだろうが、嫌な顔ひとつせず協力してくれる轡父につい甘えあせてもらっていたのだ。ちなみに轡によれば母親はまったくオカルトに興味がないらしい。お母さん大変だろうな。

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