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JKときどき死神  作者:
第七章 神の法
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裁き

「それがつまり、死神の力を得てこの学校の生徒の寿命を採取し、自分の子供に分配するということですか」相変らず無表情の遠藤が初めて口を開いた。

「そう。ほんとに身勝手よね。自分の息子ひとりを助けるために千人近い生徒の寿命を縮めるんだから」

「でも、当然遊馬は何か対価を要求したんじゃないですか? そうでなければ死神の力を与えるなんて法外なこと考えられませんから」

「対価なんてたいそうなものじゃないわ。彼は私に肉体関係を求めてきただけよ。さっき宇賀神さんも言っていたけど、結局は身体目当なんだから」先生は自嘲気味に笑った。

 僕は先生の口から「肉体関係」という言葉が出てきたことにショックと不快感を覚えた。

「でも先生、別にその遊馬ってやつを好きだったわけじゃないんでしょ?」愚問だと分かってはいても僕はそう尋ねずにいられなかった。

「そうね。悪い人じゃないんだけど。でも、あの男に抱かれるだけで息子が助かるんだったら安いものだと思う。息子のためだったら私はなんだってする」先生のまなざしは真剣だった。凄みさえあった。

「でも――これは先生だけの問題じゃない。いくら息子さんを助けるためとはいえ、それで生徒の寿命を奪うのは間違ってますよ……」

「そんなことは分かってる――分かってるのよ。でもね蒲生君、間違っていると分かっていても人はそれを選択することだってあるの。いくらきれいごとを並べたって息子の命は助からない。どれだけ他人から責められても、憎まれても、息子の命が救えるのなら私に選択の余地はないの。蒲生君が私を教師としてどう思ってくれていたのかは分からないけど、私は教師である以前にひとりの人間で、母親なの」

「そうかもしれませんけど……」

「えーっと、お話はもうその辺でいいかな?」僕たちのやり取りを黙って聞いていた宇賀神が割って入ってきた。

「せんせーのそういう考え方は個人的に嫌いじゃないけど、残念ながら人間の分限をカンペキに超えちゃってるんだよね。それは神々がもっとも忌み嫌う行為なの。当然その償いはしてもらわないと」

「私はどうなっても構いません――ただ、息子だけは――息子だけはお赦しください」先生は宇賀神に懇願した。

「安心しなよ。子供に罪はないから何もしない」宇賀神は優しく微笑んだ。

「じゃあ――」

「子供の寿命はもとに戻す。それだけ」

 宇賀神の言葉を聞いて先生の顔色はみるみる青ざめていった。

「どうかそれだけはお赦しください!! 四ヶ月かけてようやく息子の寿命をいくらか延ばすことができたんです――どうかそれだけは――」

「そんなの無理に決まってんでしょ。その寿命はもともとあなたの子供のものじゃないんだから」半狂乱で泣きすがる先生を宇賀神は鬱陶しそうに遠ざけた。

「たしかにおっしゃるとおりです。でも、生徒ひとりが失った寿命は数日でしかないはずです。うちの子は、他の子が当たり前のように享受する青春も、何もかもすべてを経験せずに死のうとしているんです――お願いです。息子を助けてください」

「はあ? 数日だろうが何だろうが人間ごときに命の裁量権なんてないんだよ! それとも、人間は長生きするのが当たり前だと思ってるとか? お前、ちょっと図に乗りすぎじゃない? ほんっと不愉快! おこがましいにもほどがある」

 宇賀神はいらだちを隠そうとせず、どすのきいた声が部屋全体を凍りつかせた。普段の飄々とした彼女からは想像もつかない豹変ぶりに僕は呼吸するのさえ窮屈だった。あらゆる望みを絶たれたと悟った先生は、もはや一言も発することなく床にへたり込んだ。

「……まあいっか。さっさとやることやっちゃうよ。えーっと、とりあえず、あなたが遊馬から授かった死神の力は没収。そして採取した寿命はすべてもとの人間に返還――」怒りを鎮めた宇賀神は淡々と言い放つと黒蜥蜴を先生の眉間に突き付けた。

「――そして最後に、処罰もすでに決まってるから教えてあげる。自身の犯した罪の重さをかみしめなさい。大川雅美を不可触刑に処す――あなたはもう子供に触れることができない。自身の子供も他人の子供もね」

「それは、つまり……」

「あなたはもう二度とわが子をその胸に抱くことはできないの。かわいそうにね」宇賀神は残酷な笑みを浮かべた。

「どうしてっ!? どうしてそんなひどいことを!! どうしてっ!!?」先生は両手で顔を覆った。

「その理由はもう話したでしょ」

 乾いた銃声が室内にこだますると先生はゆっくりと床に倒れた。

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