黄昏
僕たちは観覧車の乗車口へと向かった。係員に誘導され遠藤と向かい合う形で座った。幼い頃は特に意識しなかったが、この年齢になって乗ってみるとその狭さに驚いた。密室だし遠藤との距離がすごく近い。なるほど、これならカップルがデートで使うのもうなずける。僕はなんだか気まずくなって窓の外を眺めた。観覧車はゆっくりと僕たちを天上へと運んでいく。
「遊園地どうだった?」
「すごく楽しかったです」
「なら良かった。俺も久しぶりだったけど楽しかった。遠藤と来たからかな?」
「へえ~、せんぱいってそういうこと言える人なんですね。意外です」
「な、なんだよ! ちょっと言ってみただけだろ!!」
「私はほめてるんですよ。だってせんぱい、私の私服姿見ても何も言ってくれないんですから。普通、かわいいねとか似合ってるねとかなんとか言うもんですよ。そういうのに疎い人なのかなーって思ってたんですけど」
「い、いや、かわいいなーって思ってはいたんだよ。でもほら、なんていうか言うタイミングを逃しちゃって……。ほんと、かわいいと思うよ」
「仕方ないですね、それで許してあげます」遠藤はクスクス笑った。
死神は人間にこんなふうにほめられてうれしいのだろうか。夕陽を浴びてその紅蓮の中に溶けていきそうな少女を見つめながら、僕は不思議な感覚に襲われた。こんな時間がずっと続けば良い、そう願う一方で、今自分の見ているものはすべて嘘偽りで、すぐにでも叩き潰してしまいたい、そんな欲求にも駆られた。
「その――俺、ときどきよく分からなくなるんだ――遠藤のことが」
「どういう意味ですか?」
「遠藤は自分のことを普通の女子高生だって言うし、たしかにそんな感じもする――でも――」
「やっぱり普通じゃない?」
「言葉ではうまく説明できないけど……」
「そうですか……」
僕はなんとなく気まずくなって再び窓の外を見た。なんでこんなことを言ってしまったのだろうか。余計なことをしなければもう少しだけ楽しい時間が続いたというのに。たとえそれがまやかしであったとしても。
「前々から聞きたかったことがあるの」不意に遠藤が口を開いた。
「何?」
「せんぱいは以前、私以外に死神を見たと言っていたけど、それって本当?」
「本当だよ」
「その話聞いてもいい?」
「……」
「言いにくい話なら構わないけど」
「いや、そうじゃないんだ――昔の話だし、ちょっと長くなるから」
「別に全然気にしない。せっかく二人きりなんだから、ゆっくり話しましょう」
僕は遠藤をじっと見つめた。その瞳は底の見えない海のようで真意を読み取ることはできなかった。ただかねてから彼女にこの話をしたいと考えていたのも確かであった。僕の知るかぎりあの日の出来事を話すにあたって彼女以上の適任者はいなかったからだ。
観覧車が周回を終え、僕たちは外へ出た。園内にいる家族連れの客はそろそろ帰ろうかといった感じであったが、閉園時間まではまだ少し余裕があった。
「じゃあ、あそこで話そうか」僕はそう言って近くにあったカフェテラスを指差した。




