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JKときどき死神  作者:
第五章 おいでよドラゴンパーク
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そわそわ

 あっという間に約束の土曜日になった。前日の夜からずっとどんな服を着ていくかで頭を悩ませていたのだが、結局普段着ているような格好に落ち着いた。それほど持っている服にバリエーションもなかったし、あまりに気合いをいれた格好で遠藤から「せんぱい、何勘違いしてるんですか?」みたいなことを言われるのも嫌だった。

 承諾をもらえたときは有頂天で考えが及ばなかったが、彼女は遊園地に行ったことがないから僕の誘いに乗っただけで、別段僕に好意を抱いているわけではないのかもしれない。そんな不安が次第に頭をもたげていた。デートデートと浮かれているのは僕だけで、向こうにはまったくそのつもりがないかもしれない。とはいえ、僕のことがたいして好きでもなければそもそも誘いには乗らないだろうし……。

 起きてからずっと落ち着かない気分で何にも手がつかず、自室で轡から借りたマンガを読んだりやめたりベッドでゴロゴロしたりをローテーションしていた。

「ねえねえ大ちゃん、今日何かあるの?」トイレから出たところで母親から声をかけられた。にやにやした顔で。

「何もないよ。友達と遊びに行くだけだから」

「え~? ほんとに? なんだか大ちゃんいつもよりおしゃれしてるから、お母さんてっきりデートなのかと思っちゃった」

「違う違う。そんなんじゃないから」こういうときの母親の超人的な勘の良さは本当に目を見張るものがある。普段と格好は同じはずなのだが。

「ふ~ん。大ちゃんがそう言うならそういうことにしておいてあげよう。でもね、将来のためにアドバイスだけど、デートの時はちゃんと女の子の服とかをほめてあげないとだめだからね」

「だから違うって言ってんだろ」僕は逃げるように二階へ上がっていった。

 十時にドラゴンパークの最寄り駅で待ち合わせをしていたのだが、家にいても何もする気が起きなかったので予定よりもだいぶ早く出発し、結局約束の時間よりも三十分以上早く着いてしまった。仕方がないので駅前のコンビニで立ち読みでもしながら時間を潰すことにした。ここなら改札から出てくる人の様子も窓からよく見える。普段ならマンガ雑誌を読んでいるところであったが、この日は何となくファッション誌に手が伸びた。

 九時五〇分ごろになってから僕はしきりに腕時計やコンビニの壁時計を見たり携帯電話を確認したりと落ち着かなくなった。そろそろ遠藤が姿を見せてもおかしくない時間なのだがまだ来ない。向こうはデートのつもりなんてないのかもしれないが、それでも男女の待ち合わせなのだから時間に余裕をもっても良いはずだ。僕はそんなわけのわからない持論を心の中であれこれ展開していた。

 もうすぐ十時になる。約束の日時を間違えているのだろうか。それとも遊園地に行きたいなんて言って僕をからかっただけなのだろうか。

 心配と不安に押しつぶされそうになった僕は、いてもたってもいられなくなりコンビニを出て改札の方へと向かった。時刻表を確認すると、ちょうど十時にこの駅を出発する電車があるようだ。ひょっとすると遠藤はこれに乗ってくるかもしれない。やがて電車が到着すると、ホームから下りてきた乗客がまばらに改札から吐き出されていく。僕は必死に目を凝らして彼女を探した。やがて最後尾でその姿を認めた。

「あ、せんぱいごめんなさい。待ちました?」僕の焦燥感なんて知らない遠藤はのんきに手を振っていた。

「いや俺もさっき着いたばかりだから――それにしてもギリギリに来るね」僕はつい我慢できず苦言を呈した。

「え、待ち合わせ十時ですよね? ぴったりじゃないですか」

「まあそうなんだけどさ」この時間に対する感覚は彼女が死神だからなのだろうか。それとも性格に由来するものなのだろうか。

「とにかく行こうか――」

 僕はちらりと遠藤をみて口ごもってしまった。白と黒を基調としたワンピースを着たその姿は、派手さはなかったがとても彼女に似合っていてかわいらしかった。加えて普段は制服姿しか見ていなかったからその分とても新鮮に映った。

 イニシエーションのときも一応私服姿ではあったのだが、事前に動きやすい格好で来るよう轡からの指示があったためティーシャツとジーンズだったのだ。そのため女の子らしい私服を見るのはこの日が初めてだった。彼女なりにおしゃれをしてきてくれたということなのだろうか。そう考えるとなんだかとても嬉しくなった。母親の受け売りではないが、何か気のきいた台詞で賛辞を送ろうとしたものの、照れ臭くてうまく言葉が出てこなかった。

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